サラリーマンのおっさんが英雄に憧れたっていいじゃないか~異世界ではずれジョブを引いたおっさんの英雄譚~

梧桐将臣

文字の大きさ
16 / 62
第2章~学園動乱編~

入学式と光の勇者との邂逅

しおりを挟む
窓から差し込む朝陽の光、小鳥のさえずりや噴水の水の音で目を覚ます。

今日はついに冒険者養成学園の入学の日だ。

この異世界へ来て約1ヵ月。

身ひとつでお金もない状態で放り出され、しまいには冒険者適正の無いはずれジョブをひいてしまう。

入学試験では盛大に恥をかき自称光の勇者クロード=アルヴェイユらにばかにされる。

それでも天職【おつかい士】はクエストをこなすだけでなく、依頼人の満足度を高める事もできればクエストクリア時の報酬にボーナスがつく。

インベントリにもボーナスがつくので俺はその能力を活かし、【山賊の隠れ家亭】でお抱えのおつかい士として働かせてもらい弁当を配達しまくった。

その結果レベルも11まであがった。

*****************************
名前:ナツヒ=ミナミ
天職:おつかい士
レベル:11
HP:90
MP:70
物理攻撃力:59(+5)
物理防御力:55(+3)
魔法攻撃力:37(+2)
魔法防御力:36(+3)
素早さ:72
運:40

【天授能力(ギフテッドアビリティ)】
雑用英雄(クエストマスタリー):クエストクリア時の報酬にボーナスがつく。依頼主の満足度や、星への貢献度により増加。
収納上手(インベントリマスタリー):インベントリにボーナスがつく。

【スキル適正】
なし

【スキル】
刀:11
体術:12

【装備】
打ち刀
冒険者の服(上)
冒険者の服(下)

*********************************

レベル10から11に上がった時にステータスの伸びが良かったが、アリナによるとレベルが高くなればなるほどレベルが1上がった時のステータス上昇量も上がるとのことだった。
10台より20台、20台より30台と10刻みでその上昇量は顕著になるとの事で、高レベルの冒険者はレベル差よりも数値的に強いということだ。

従業員のイセラによる戦闘指南をうけたこともあり、それなりに戦う事もできるようになった。

今なら、冒険者養成学園の生徒に遅れをとる事はそうそうないだろう。

なんせ卒業の目安であるレベル10に到達しているのだから。

そんな事を振り返りながら、リビングへ向かう。

するとそこには、ジューシーな肉と野菜のサンドイッチと共に置き手紙があった

そこには『冒険者養成学園入学おめでとう!これ食べて力つけていってきな!』と書いてあった。

差出人の名前が書いていないがヒルダだろう。

俺はヒルダたちの大胆に露出する肌に目を奪われたことがきっかけで、【山賊の隠れ家亭】の弁当配達をタダでやる事になった。

しかし、ヒルダたちに出会えて本当に良かったと思う。

ヒルダたちに出会っていなければ、今とは全く別の異世界生活を送っていただろう。

それはそれで楽しかったのかもしれないが、今の異世界生活に俺は心から満足している。

ハーレムだけは足りていないが、人としての優しさや心遣いは充分すぎる程にもらっている。

感謝の気持ちと共にサンドイッチを食べ終わり部屋に戻る。

冒険者養成学園から届いた荷物は、合格通知の他にもあった。それは学園の制服だ。制服なんていつぶりだろうか。

インベントリ内でアイテムを操作し制服を装備する。

白いYシャツにワインレッド色のネクタイ。羽織るのは濃紺のジャケット、左胸部分には剣と杖が交差しその周りを植物のような柄が縁取っている紋章が描かれている。下はグレーのスラックスで日本の高校と似たような恰好だ。

中身は34才のおっさんだが、外見は転移の影響で16才に戻っているので違和感無く着こなせている。

サラリーマン生活で心身がすりへっていないせいもあるのか、年齢の影響以上に若く見える。

それに、転移の際に変化した瞳の色。晴れた夏の日の蒼天を思わせるような目の色もあいまって日本にいる頃より恰好よく見える。

うん!これなら童貞っぽい言動を慎めばそれなりにモテるはずだ!

俺はヒルダたちへの感謝と、今日から始まる学園生活に胸を躍らせ従業員寮【乙女のオアシス】をあとにする。



――オルニア冒険者養成学園。

略称で単純に“オルニア学園”と呼ばれる学園の入学式。

その学び舎は、芝生の生える広大な敷地に石造りの重厚な建物が建っている。

学校の校舎というよりは、どこか中世ヨーロッパの神殿や城下町のような街並みで、歴史を感じさせる趣きがある。

敷地内には淡い紫色の花を咲かせている樹木が生えている。

日本の桜を思い起こさせるその花弁は、青い空の下きゃっきゃと遊ぶ妖精のように舞っており新入生の入学を祝福しているかのようだ。

冒険者養成の為の学校と聞いていたので、入学試験の時の革ベルトスキンヘッドおっさんのようないかつい人が多いかと思っていたがそうではなかった。

かといって日本の高校の入学式とも違う。

まず髪色が派手だ。俺のような黒髪はほぼいない。茶、金、緑、ピンク、青、赤、紫など様々な髪色の若者がこれからの学園生活に希望を持ったような輝いた表情で学園の門をくぐる。

人種も俺のような人間だけでなく、様々な種類の動物の獣人やエルフにドワーフ、ホビット族などがいて改めて異世界にいるという事を実感させてくれる。

そして、親御さんらしき人と連れ添っている人もいれば友人同士で来ている人もいる。

俺のように完全ぼっちで来ている人は見当たらない。

そりゃそうだよな。俺だけこの世界で1ヵ月しか過ごしていないんだもんな。

高校生当時の俺ならこの状況に寂しさや居心地の悪さのひとつでも感じただろうが、日本でサラリーマン生活を経た俺は何も気にならない。

商談や出張、面接やプレゼン。仕事は1人でやる事なんてざらにある。

そして、ランチや居酒屋、映画館、旅行にいたるまで、世にあるひと通りの事は1人で行く事に対してなんの抵抗も持たなくなり、周りからの視線も気にならなくなった。

そう、日本で生きるサラリーマンのおっさんとは1人で生きる事に対して極大の耐性を獲得する事ができるのだ。げに悲しき独身サラリーマン。

そんな俺にとっては、この程度のぼっちはノーダメージである。

俺は客観的に周りを観察して、希望に満ちながらもどこか浮足だったような入学式の雰囲気を満喫している。

すると校門へ続く通りの方が何やら騒がしくなる。

実用的で無さそうな飾り鎧を着る護衛らしき兵士を何人も引き連れている、白地に金の派手な装飾が施された馬車が校門の前に止まっていたところだった。

そこから降りてくるのは、宝箱の中身の金貨のような金髪をかきあげ、無駄にきらきらしたオーラを発生させているクロード=アルヴェイユだった。

「おおー!あれが噂の光の勇者!」

「アルヴェイユ家の神童と謳われた御方とうちのせがれが同期になれるとは!」

「きゃーー!!!!クロード様よーーー!!!!」

・・・。入学試験ぶりに会うが、改めてクロード大人気だな。

胸の奥の方で少しもやっとした気持ちが湧くのを感じながらも、なんとなく様子を見てしまう。

・・・俺もちょっと好きなのかなもしかして。

「はーーーはっはっはっ!諸君!偉大なる勇者の末裔であり“光の勇者”の再来といわれるクロード=アルヴェイユとは俺の事だ!同じ学び舎に通える事を新入生はもちろん、先輩方も光栄に思うが良い!!」

あ・・・。やっぱ無理だわ。自己顕示欲と自信の塊みたいな人間だな。

日本でもSNSでやたら自分の写真とかばかりのっけるやつは、どんなに顔の造形が整っていてもその時点で魅力を感じなかった。そんな俺にこのタイプはやはり苦手だと言う気持ちを感じざるを得ない。

しかし異世界の人たちは引くどころか拍手喝采だ。

こちらの世界もあぁいうタイプは一定数の人気があるんだな。

家柄とかの影響もあるのかもしれないな。

どちらにせよ俺が勝負する領域では無いな。早めにこの場を立ち去り入学式の会場に向かおう。

「おーー!!そこにいる黒髪の少年はもしかして平民君では無いか?」

え?俺?思わず振り返ってしまったのが失敗だった。

「やはり平民!このオルニア学園の制服を着ているという事は貴公も合格したようだな!魔法も使えないのによく合格できたものだ。オルニア学園の品位が落ちなければいいが・・・。まぁこの俺がいる限りは大丈夫だろう!貴公が教えを乞うと言うのなら魔法や冒険者の事を教えてやらなくもない!だが今はあいにく貴公のような平民に構っている時間は無いのだ。ゆくぞ!」

・・・・。いや、乞わないから大丈夫。しかもセリフが長い。よくもまぁ1人でぺらぺらと喋れるものだ。素直に関心してしまう。

しかも話しかけておいて時間が無いとかよくわからない。それに俺の事を少年とか言っていたが、お前もタメだろ。なんなら中身は俺の方がおっさんだぞ。

俺は日本のサラリーマン生活でそれなりにスルースキルも鍛えられたはずだが、こいつの突破力はなかなかのものがあるな。

ちなみに「ゆくぞ!」と言いながらクロードは颯爽と馬車の中に戻っていった。そして、馬車のまま建物の方へ向かって消えていった。一体なんの為に下りてきたんだよ・・・。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。 彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。 だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。 結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。 そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた! 主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。 ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ
ファンタジー
佐藤健太、32歳。会社ではリストラ寸前の窓際サラリーマン。彼は人生逆転を賭け『探索者』になるも、与えられたのは戦闘に役立たない地味スキル【無限収納】だった。 「倉庫番がお似合いだ」と馬鹿にされ、初ダンジョンでは荷物持ちとして追放される始末。 だが彼は気づいてしまう。このスキルが、思考一つでアイテムや武器を無限に取り出し、敵の魔法すら『収納』できる規格外のチート能力であることに! サラリーマン時代の知恵と誰も思いつかない応用力で、地味スキルは最強スキルへと変貌する。訳ありの美少女剣士や仲間と共に、不遇だった男の痛快な成り上がり無双が今、始まる!

処理中です...