サラリーマンのおっさんが英雄に憧れたっていいじゃないか~異世界ではずれジョブを引いたおっさんの英雄譚~

梧桐将臣

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第2章~学園動乱編~

狂乱の入学決戦

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地に伏し白いスーツを赤く染める学園長。

慌てふためき叫ぶ者。講堂から出ようとする者。まだ様子を見るべく座っている者。新入生たちの行動は様々だった。

その光景をさも愉快なショーを楽しむような様子で檀上から眺める黒ローブの男。

「ナツヒ君。これは一体何なんだろう。」

「え?本当に刺した?本当に死んじゃっているのかな?」

「・・・。俺にもわからない。」

最後列に座っていたせいもあり、俺とエリスは割と冷静に状況を見ることができている。

しかし、左隣にいる男子生徒はあきらかに怯えている。

俺はとりあえず、座席後部にある出口の扉が開くかを確認する。

「駄目だ。後ろの扉もあかない。」

席に戻り2人に伝える。

「そっか、とりあえずは閉じ込められちゃっているって事だね。どうしようナツヒ君。」

「ナツヒさん・・・。僕たち入学式で殺されちゃうのかな・・。」

「・・・。」

そうだ。確定している事は、
①今日がオルニア学園の入学式だという事
②式中に不審者の乱入があり学園長が倒れている事
③黒ローブの男が「殺した。」と宣言している事
④講堂内の扉が開かない事。
この4つだ。

この材料からいくつか可能性が浮かび上がるが、まだ判断できる材料が少ない為断定する事ができない。従ってとるべき行動も決める事はできない。

「とりあえずまだ様子を見よう。どうせ扉は開かないんだ。」

「・・・うん。」

俺たちが様子を見ようと決めた頃には、黒ローブの男が「学園長を殺した。」と宣言した時よりも講堂内は落ち着きを取り戻していた。

いや、落ち着きを取り戻したというよりは、扉が開かない事を悟り諦めた事と、黒ローブの男が檀上で笑みを浮かべているのみで、更なる危害を加える様子が無いとわかったことにより警戒心が幾分か低まったという雰囲気だ。

「みなさ~~ん!!状況はわかって頂けましたか~~?今皆さんは閉じ込められていま~す!それに学園長も死んじゃっているみたいなので、ボクが代わりに入学式を進めてあげますね~!!」

再びざわつく講堂内。しかし、中にはちょっとしたイベントなのでは無いかと疑っているのか、隣の席同士で笑顔を見せつつ会話をしている者もいる。

俺にはまだ確証を得られないが、このまま黒ローブの男の話を聞いていれば、この状況の答えを導き出せるヒントを得られるはずだ。

「学園長が言っていた通り、冒険者っていうのは強くないと死んでしまうんです。強ければ富や名誉も得られるし英雄にだってなれます。・・・その裏でどんな卑怯な事をしていても、例え人を殺していても・・・。ずるいと思いませんか~~!?何かを奪っていても誰かを不幸にしていてもそれを封殺できる強さがあれば、正義として認められるなんて!」

なんだこいつは?いきなり何を言っているんだ。

「冒険者は強くないと死んでしまう。だから強くならなければいけない。強い事が正しい。強ければ何をしてもいい。冒険者のそんな傲慢な考えが僕はだいっきらいで~~~す!!・・・はぁ、少し話がそれてしまいましたね。でも冒険者が一般人よりも死にやすいのは事実です。」

それまではどこか道化じみた軽薄なオーラをまとっていた黒ローブの男だが、冒険者が大嫌いだという言葉を言い放った時には明確な敵意を感じた。そして少しの間の後に一転して落ち着いた様子に戻る。

「・・・こわいですよね?死ぬのは。・・・嫌ですよね?痛いのは。学園は厳しいみたいですよ?冒険者になったらもっと大変な事もあるみたいですよ?・・・でも安心してくださ~~~~い!!皆さんには今ここで死んでもらいまあぁぁ~~~~~っっす!!!!!!!もうこの先のことを憂う必要はありまっっっせ~~~~~~んん!!!!」

ぼそぼそっと喋ったかと思ったら、くるっと1回転して大きく両手を広げ高らかに宣言する黒ローブの男。そのローブの下の顔は満面の笑みが浮かんでいるだろう事が容易に想像できる。

「・・・!」

隣でエリスの息を飲む音が聞こえる。

まだ男の宣言している言葉の意味に現実感を抱けない様子の新入生たち。

「サモン!!ダーーーーーーーーークネッッッス!!!!!!」

黒ローブの男が呪文らしき詠唱をすると同時に、講堂内のあちこちから闇が浮かび上がる。

闇のもやの中から、異形の生物が湧き出てくる。

「キシャァ――!!!」

「きゃーーーー!!!!!」

「落ち着け!!」

「逃げろーーー!!!!」

異形の生物の威嚇の咆哮があちらこちらから鳴り響き、その声がきっかけとなり講堂内は狂騒に包まれる。

不快な声で鳴くその生物は頭があり胴体から手足が2本ずつ生えている。それだけをとれば人型と言えなくも無いが体は黒く硬質そうな光沢のある皮膚で覆われている。手足が人と比べて長く、手の先の爪は異様に長く鋭い。口は大きく割け牙がのぞいており目は赤く光っている。

ふとファンタジー世界にでてくるようなガーゴイルを連想するが、幸い翼は生えておらず飛ぶ気配はない。

だが、生で見るその姿は醜悪で本能的な恐怖心を煽ってくる。

隣ではエリスが一瞬光に包まれたかと思うと、入学式の時に装備していた革鎧と大剣を身につけている。

「ナツヒ君!戦うしか無さそうだね!」

「あぁ。そうみたいだな!」

俺もエリスにならいインベントリ内でセットしてある冒険者の服と打ち刀を装備する。

爽やかな風が吹き抜けるような音と共に、連なる光の輪に一瞬包まれ装備変更を終える。

「君は戦えるか?」

「う・・・うん!怖いけど頑張るよ!」

栗色の髪の男子生徒も装備を着替える。金属製の胸当てとすね当て、鎖かたびらも着込み、更には身の丈ほどもある大盾を装備している。

さすが盾役の家系だけある。これなら死ぬことはないだろう。

「ところで君名前は?」

「ぼ、僕はポポロ。ポポロ=ブークリエ。」

「俺はナツヒ、今さらだけどよろしく!しかし丈夫そうな装備だな。しっかり自分の身を守るんだ。ポポロ!死ぬなよ!」

戦闘中に名前を呼ぶ場面もある可能性を考慮し名前を聞いておく。

ポポロの胸当てを拳でとんとんっと叩き自分の命を優先して欲しいとだけ伝える。

他の新入生は俺たちのように装備を変えて戦おうとする者もいれば、いまだ制服姿のまま怯えているだけの者もいる。

「あ、あ、あ、テステス~。皆さ~~~ん!びっくりしましたか~~~~?今日会場内にいる新入生は確か324人だったかな?対してボクが召喚したモンスターは150体。2人で1体ほど倒せば君たちの勝ちですよ~~~!では皆さん頑張って下さいね~!!!」

狂騒の中マイクのような魔工製品を使い会場全体に話しかける黒ローブの男。

ご丁寧にも俺たち新入生の数とモンスターの数を教えたかと思うと、フードの下から覗かせる笑みを浮かべたまま手を振りながら闇の中へ消えていった。

「うぉぉぉーー!!!」

「いやぁぁーーー!!!!」

「シャアアァァァ!!!!!!!!」

「キシェエエエイイ!!!!」

会場は新入生らの雄たけびや悲鳴、モンスターたちの叫び声に包まれる。

――ここにオルニア学園新入生324人と異形のモンスター150体による決戦の火ぶたが切って落とされた。



―――――――――――――――――――――――― 

皆さんの応援のお陰で20話まで続ける事ができました。

お気に入りやコメントに応援。どれもが本当に執筆の力になっています!

いつもお読み頂きありがとうございます。

次回は戦闘シーン多めです。少しでもお楽しみ頂ければ嬉しいです!

梧桐 将臣
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