サラリーマンのおっさんが英雄に憧れたっていいじゃないか~異世界ではずれジョブを引いたおっさんの英雄譚~

梧桐将臣

文字の大きさ
40 / 62
第2章~学園動乱編~

ゴブリン達の思惑と困るおっさん

しおりを挟む
「エリス・・・!」

「うわ!本当にでてきた。」

岩陰の裏口からでてくるゴブリンたち。

ぞろぞろとでてくるゴブリンの数は俺が予想していた以上に多くその数18体。

こん棒や弓矢装備はもちろん、小隊のリーダー格であろう片手剣と兜をかぶった個体も何体かいる。

ゲギャゲギャと不快な声をあげながら行列を作り歩く様子は、本能的な忌避感を見る者に与え戦闘の心得のない人間ならすぐに逃げ出したくなるだろう。

粗末な木製の籠を神輿のように4体で持っているゴブリンたちもおり、籠の中には荒縄のようなものも見える。

そして、18体の最後尾に陣取るのは周りのゴブリンたちよりもひとまわり大きく、装備も片手剣に兜、さらには鎖かたびらのようなものを着こんでいる個体。

名前はゴブリンリーダー。レベルは6。

俺とエリスなら問題にならない強さだろうがいかんせん周りの数が多い。

まぁそれでも俺1人ならユリダ武具店で買ったレベル11の装備に着替えれば何の問題も無く殲滅することはできそうだ。

「あんなにたくさん中にいたんだ・・・。でもナツヒ君なんでゴブリンたちがでてくるってわかったの?」

「それは・・・」

俺は今までのゴブリンたちの行動や、まさに今目の当たりにしている行列の様子からひとつの仮説を導き出しているがエリスにどう説明するか言葉に詰まってしまう。

俺が考えている事はこうだ――

まずやつらが動物型のモンスターたちと違い、俺たちを単なる敵や獲物とみてむやみやたらには襲ってこない。

それどころか3体1組などの小隊を作って行動しており、そこには指揮系統のようなものが存在している。

今日はやつらと2回遭遇したが、2回とも真っ先に襲ってくるのは俺だった。

これは何かしらの意図があって俺に襲い掛かってきたとみていいだろう。

偶然とは考えにくい。

更に先ほど交戦した群れのリーダー格であるゴブリンがエリスに向けていた目。

あれは、敵として倒す対象ではなく明らかに好色そうな目つきで見ていた。

そして、目の前の18体の集団が持っている籠と荒縄。

生け捕りにしようとする意図がありありと見える。

今日遭遇したゴブリンたちは俺を殺しにきていた。

となると、生け捕りの対象はエリスの他には考えられない。

繁殖の為なのか、快楽の為なのかまではわからないが捕まった女性がその尊厳を踏みにじられ、悲惨な想いをするだろうということは想像に難くない。

しかし、18体もの兵隊を投入してまで女を捕まえに行くとは想像以上ではある。

やつらが人間の女性に対して性的な優劣を判断する感性があるかはわからないが、エリスがゴブリンからも魅力的に映っており捕獲に本気であることは伺える。

確かにエリスは人間の中でもかなりハイスペックなレベルだろう。

冒険者ギルドしかり、今朝の待ち合わせの時もしかり男性から向けられる目は様々な欲が混じり合っている。

とにかく、ゴブリンたちは人間女性を性の対象として見ている可能性が高く、エリスを本気で捕獲しようとしている。

これらの女性にとって不快極まりない話をエリスにどうやって説明したものか――

「ナツヒ君・・・?」

不思議そうな顔でこちらをまっすぐにのぞきこんでくるエリス。

およそ穢れとは無縁な生活を送ってきたであろう大きなエメラルドグリーンの目で真っすぐにこちらを見つめてくる。

やはりエリスに俺の考え全てをありのまま伝えるのは憚れる。

とは言えやつらの狙いを伝えないままだと今後の戦闘に支障をきたす可能性が高い。

「うんーー・・・っと。簡単に言うと、ゴブリンは人間の女が好きでエリスの事を生け捕りにしようとしているかもしれないって事だ。だから一度巣に戻って体勢を立て直してまた出てくるんじゃないかなと思ったんだよ。」

俺は逡巡の後、ゴブリンの狙いを端的にエリスに伝えた。

「生け捕り!?なんの為に?」

まぁその疑問はもっともだよな。性的な可能性しか思い浮かばないが、もう少しソフトな言い方でごまかすしかない。

「いや、俺にもゴブリンの考えはよくわからないが、ペットにしたり動物園のように観賞用にしたり召使いのように使うのかもな。人間だって犬や猫を飼ったりするだろ?そういう感覚に近いのかもしれないな・・。」

ペットや召使いをとても悪い方向で広義的に解釈すればエリスに嘘をついている訳ではないと自分自身を納得させる。

「・・・。うーーん。あんなやつらにペットにされるのも嫌だし鑑賞されるのも嫌だし召使いになるのも嫌だ!生け捕りは無しな方向で!」

「お、おう!だからエリスはやつらがエリスを生け捕りにしようとしている事を念頭にこれからの戦闘に臨んでくれ。」

図らずも俺がエリスに伝えたかった事を伝える事ができた。

殺しにこようとしてくる相手と生け捕りにしようとくる相手の動きは必ず変わってくる。

それを念頭に入れて戦う事ができれば有利に戦闘を進める事ができるはずだ。

さて・・・。

総勢18体のゴブリンがでていった巣は恐らくもぬけの殻に近いだろう。

しかもゴブリンたちがでていた、裏口なら罠がある可能性も少ない。

冒険者ギルドで無印ランクの俺でも受けることができた、“しゃるる”という恐らく子供からの依頼であろう、報酬不明のクエスト【小鬼たちのお宝】

クエストも目的であるブローチを手に入れクエストクリアするには今が絶好のチャンスだ。

「よし!それじゃゴブリン供からブローチを奪い返しに行くか!」

巣からでていった18匹のゴブリンが充分遠くに行ったのを見計らって、俺とエリスはゴブリンの巣に突入するのだった。

---------------------------------------------------------

リアルがバタついて更新が滞ってしまいすみません。

これからは週1ペースを目安にのんびりと更新していきますので、これからも
おっさんの冒険を見守ってもらえると嬉しいです!

梧桐 将臣
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

処理中です...