サラリーマンのおっさんが英雄に憧れたっていいじゃないか~異世界ではずれジョブを引いたおっさんの英雄譚~

梧桐将臣

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第2章~学園動乱編~

色欲の宴と頑張るおっさん

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ゲギャッ!ゲギャッ!という聞く者を不快にさせる声と「ん゛っ・・!ん゛っ!」という女性のうめき声、ぱんっぱんっと規則正しく肉と肉がぶつかり合う音。

その音は、俺たちが足を踏み入れた空間のほぼ真ん中から発せられている。

音の発信源は1人の人間女性と3匹のゴブリン。

女性は固い岩の地面に仰向けで寝かされており、衣服はほぼ無い状態で腰の細い部分にぼろ布がひっかかっているのみ。元々下半身を隠していたものなのか胸部を隠していたものなのかもわからない。

素肌は汚れにまみれ、汗なのかゴブリンの体液なのかも判別できないが妙に光を反射しており、周りにはゴブリン達が群がっている。

股の間を陣取る1匹は快楽のままに同じ動きを繰り返し、その度に女性はくぐもったうめき声を上げている。

もう1匹は胸部の柔らかく盛り上がり規則正しく揺れ波打つふたつの感触を、指先や舌で存分に堪能している。

更にもう1匹は己の欲望の塊で女性の口を塞ぎ、自由に声を発することすら奪っている。

「くっ・・・!」

アニメやラノベの世界では割とお決まりのはずで、知識もありある程度の想定をしていたがいざ目の当たりにすると、怒りとも哀しみとも言えない感情に頭が支配されそうになる。

目の前の光景が発する圧倒的に悲惨な現実が形をつくり、物理的な衝撃を持って頭を殴られたような感覚を覚える。

「・・・!!!」

大きく息を飲む音が聞こえ振り返るとエリスが口を抑え、目を背けていた。

無理もない。

色々な汚いものを見てきたり社会にすりきれ、感情が鈍くなり社畜を経たこの俺でも強烈な衝撃を覚えるこの光景。

いくら異世界の人間といえど、まだ冒険者見習いにも満たない16歳の少女では経験したことも無ければ想像だにしたこともない惨状だろう。

幸い目の前にいる3匹のゴブリンは快楽を貪ることに夢中でこちらに気付く様子は無い。

俺は瞬時に大広間全体を見渡す。

大広間には更に奥に繋がる通路が1つ。

更に壁際には木製だが頑丈そうな檻の牢屋のような部屋が数室あり、その奥には人影が見えるがここからだとはっきりとその姿形や人数までは把握できない。

ただ髪の長さや体型から女性である事は伺える。

俺たちの姿は恐らく見えているはずだが、特に騒いだりもしないのはゴブリン達に気付かれないようにする為か、抵抗する気力さえも失っているからか知る由もない。

捉えられている女性たち以外には、この大広間に人間は見当たらない。

生物と言えば色欲に狂った肉の宴を繰り広げる、大部屋中央のゴブリン3匹と哀れな贄と俺とエリスのみ。

この空間に他にゴブリンがいないとは言え、凌辱を続けるゴブリン達に騒ぎ立てられると奥に続く通路から増援が来ないとも限らない。

女性の尊厳をいわれのない悪意と色欲で理不尽に踏みにじられる光景を目の当たりにして、強い衝撃をうけているエリスの次の行動が読めない以上俺のとる行動はひとつだ。

――一3匹を一瞬で殲滅。

バチィッ!!!

女性の口に小汚い欲望を突っ込み快楽の絶頂に達しようとしているゴブリンの胴体に、掌底を叩き込む。

――体術アーツ【迅雷掌】

対象まで急接近し雷の力を纏った掌底を打ち込む技。

レベル11である俺のアーツを喰らい声を発する間も無く絶命するゴブリン。

突如現れ仲間の命を奪う闖入者である俺を視認するも、快楽をむさぼっていたゴブリン2匹は次のアクションを起こせないでいる。

その間抜けな姿を尻目に俺は刀を左後方に引き、身体を回転させながら真円を描くように水平に薙ぎ払う。

――刀アーツ【月車】

刀の軌跡は月のように鈍く光り、ゴブリン2匹の命を一刀のもとに奪い去る。

3匹のゴブリンは光の塵となり消え去り、目の前には凌辱の限りを尽くされたほぼ全裸の女性のみが横たわっていた。

「だ・・大丈夫ですか?」

特段コミュ障という訳では無いが、この状況でなんと声をかければ良いかがさすがにわからず、大丈夫な訳がないのに間抜けな事を聞いてしまう。

「あ・・・あ・・。うわーーーん!!!!」

女性は俺の顔を見てしばらく呆けていたが、徐々に状況を理解し始めたのか横たわったまま顔を覆い泣き始めてしまった。

女性が全裸という事もあり、どうしたらいいかわからずおろおろしているとエリスがかけつけてきた。

「もう大丈夫!もう大丈夫だから・・・。」

エリスは女性の上半身を起こし抱きしめながら言葉をかける。

ほぼ全裸の女性とエリスが抱きあう様を見ながら、ふと思いつきインベントリを確認する。

「う・・・。」

女性に何か着せようと思ったが、着せられるものは持っていなかった。

・・・そうだ!

できれば冒険者学校を卒業できるレベル11もあるという事実は、エリスにも伏せておきたかったがこの際しょうがない。

俺は【ユリダ武具店】で購入したレベル10以上から装備可能な花風羽織に着替えた。

そして今まで装備していたレベル1から装備可能な冒険者の服をエリスに渡す。

「エリス。これを着せてやってくれ。」

白を基調とした地味な冒険者の服から、鮮やかな赤の着流しに装備を変えた俺を見て一瞬何かを言いたそうな顔をしていたが、エリスは冒険者の服を俺から受け取るとほぼ全裸の女性に着させた。

女性もエリスの胸でひとしきり泣いた後に服を着た事もあり、少しずつ落ち着きを取り戻してきた様子だ。

「助けて頂きありがとうございます。」

「ううん。私は何もしてないから。それよりも早くここから逃げよう!それに他にも捕まっている人がいるよね?みんなで一緒に逃げよう。」

「・・・。」

エリスはクエスト本来の目的であるブローチを探す事はすっかり頭から抜けて、ここに囚われている女性を全員逃がそうとしている事だけを考えているようだ。

俺も賛成だ。クエストクリアを優先して目の前で悲惨な状況になっている人を放っておけるような考えは持ち合わせていない。

だが、エリスから脱出を提案された女性の表情が気になる。

「・・・です。」

「え?」

「無理なんです。みんなで逃げるのは。」
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