【R18】恋愛願望強めの魔女は邪な欲望のままに召喚する

とらやよい

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1.壊れた女

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 女はおぼつかない足取りで煮え立つ銅鍋に近寄ると乾燥トカゲの尻尾を放り込んだ。

「私ってばぁ。どうして、こんな簡単なことが思いつかなかったのかしらぁ! もうバカ、バカバカぁ……ふふふふ」

 九十九日に及ぶ連続勤務で体だけでなく精神的にも限界だった。二十九歳の誕生日を帰宅することも出来ずに研究室で迎えた女は破綻した精神状態で酒を呷った。
 
「ふっふふふふ」
 
 完全に酔いの回った女は高揚する気持ちを抑えられず鍋から上がる薄紫の湯気を見つめニタリと笑う。
   
 彼女の名はイルメラ。
 キトラニ王国の中枢、魔法省に勤める研究者だ。いにしえの魔術や術式を研究し新しい術式を編み出したり魔法に関わる古代の文献を読み解くのが仕事だ。しかし、イルメラのところには本来の仕事とは関係ない雑用が多方面から持ち込まれる為、常に仕事に追われ書類の山に埋もれる毎日だ。
 
 キトラニ王国には彼女のように魔力を持った人間が少数ではあるが存在する。魔力の大きさには個人差があるが、魔力を持って生まれた子供は貴族平民関係なく王立魔法魔術学院で学び、国の為にその力を使うよう教育され管理される。
 彼女の黒いローブの胸元にある刺繍は魔法省の象徴、蛇と魔法の杖をモチーフにしたものだ。仄明るい部屋の中でさえ光を集める金糸の刺繍は彼女がこの国の魔法省の中でもエリート集団の一人であることを示していた。

「ああ、これでいいのよ~、素敵な恋人を手に入れてぇ、満たされる愛の生活~憧れていたぁ」

 壊れた蓄音機のように歪んだ音程は頭を抱えるレベルだがイルメラ本人はとても気持ちよく歌い続けた。
 銅鍋から上がる湯気が薄紫から銀色に変わると彼女は目を見開き指をパチンと鳴らした。

「……きた、きたきたきた! これよ! まさに文献のままじゃない! やっぱり私って天才!」

 煮立ち黒紫の気泡が弾ける鍋の中にロートスの木の皮を細かく砕いて入れると深呼吸した。
 そして目を瞑り唇を動かすこと無く呪文を唱える。
 
「ンカウヨシンメケイ――シンナビ――シンナビ――」

 すると周囲の空気が一気に薄くなりイルメラが息苦しさに顔を歪めた瞬間、辺りが真っ白になった。

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