【R18】恋愛願望強めの魔女は邪な欲望のままに召喚する

とらやよい

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2.美青年

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「留年とか、さすがにマズイよな」
 
 青年は大学内のトイレで洗面所の前に立つ。彼の口からは小さな独り言が漏れ長い睫毛が微かに揺れた。
 睫毛の奥にある瞳は色素が薄いのか透明感のある薄茶色だ。そのうえ綺麗な二重瞼と白く透き通った肌が彼の一見、中性的にも見える整った顔立ちを際立たせていた。
 
 成績が優秀だったお陰で奨学金を受け大学進学は出来たものの、バイトをいくつも掛け持ちして生活するのがやっとだった。そんな生活が仇となり明後日提出のレポートにさえ全く手を付けていない現状に焦りを通り越して諦めに近い感情が支配し始める。
 
 手を洗うと無意識に眼の前の鏡に映る自分の顔を見た。
 その、ほんの一瞬だった。
 息苦しさと同時にぐにゃりと視界が歪み辺りが真っ暗になった。停電かと思った瞬間、前後左右の感覚はなくなり酷い目眩が彼を襲った。
 怖くなりギュッと目を瞑る。
 どのくらいの経っただろうか鼻を突くのような生臭さい臭いに恐る恐る目を開けた。

 『暗い』
 
 目を細め漸く暗さに目が慣れてくると、床には這いつくばり自分を見上げる女の姿があった。

 ギョッとして無意識に胸の前で拳を構える。
 
「何? あんた痴女? 男子トイレに忍び込む女とか、やば過ぎだろ」

 睨みつけられているというのに、女は瞳を輝かせて感動のあまり声を震わせた。

「これって、現実? 本当に召喚できたの? 嘘……え、あれ? 女の子?」
「おい、痴女! お前、頭だけじゃなくて視力もイカれてるのか?! 俺は男だ!」

 青紫に染めた髪、ゴールドのカラコンとか奇抜な様相の女に最も嫌うフレーズを言われた青年は眉根を寄せ声を荒らげた。
 
「凄い……こんな理想どおりの美青年、召喚できちゃうなんて」

 金色の瞳を大きく見開いたままヨロヨロと歩み寄ると青年の手を両手でガシリと握った。
 
「私と! 付き合ってください!」
「はあ?!」

 手を振りほどこうとするが必死な女の握力はどこにこんな力があるのかと思うほど強い。
 
「離せ! この痴女!」
「や、やっぱり駄目ですか? わ、私じゃ。美人ではないけれど……普通くらい? いや……普通よりちょっと下くらいだと思ってたんですが、タイプではないですか? 駄目ですか?」

 グイグイ迫ってくる女に恐怖を感じ青年は後退る。
 
「男子便所でいきなり交際を申し込んでくるような痴女と誰が付き合うか! 断る!」

 女は藁にも縋る思いで恐怖に歪んだ青年の顔を見上げた。
 
「じゃ、じゃあ! せめて、私の処女もらってください!」
「はあ?!」
 
 必死に喰らいつく女と、頭のおかしな痴女を引き離そうと藻掻く青年。二人の攻防が続く室内に大きな咳払いが聞こえた。
 二人は固まるのと同時にゆっくりと視線を動かした。
 
「お取り込み中、すまないが……ここ、どこだ?」

 そこには黒いスーツ姿の男が立っていた。

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