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第一部 二章
第十四話 帝国周辺地理
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「それで、何を聞きたいのですか?」
コカワ以外の四人は、リビングに置いてあったソファーに腰を降ろしていた。
アヤメのスキル『じゃんぷ☆あっぱー』がミーミルの顎に炸裂し。
アヤメがリリィに羽交い絞めされ、ソファーに座らされた後の事である。
ミゥンはそんな二人を見て「ひぃー」と悲鳴を上げていた。
コカワが皇帝を落ち着け、今は全員がおとなしくなっている。
「ええと――実は色々と俺――私が生きていた時代と色々変わっているようなので、違いについてレクチャーしてほしいと思いまして」
コカワの言葉にミーミルはたどたどしく答える。
かつての皇帝がメイド如きに敬語なのは、かなりの違和感であったが、ミーミルとアヤメは全く気付けていない。
そして目隠ししたまま、スタートから足元グラグラの綱渡りが開始された。
「そういう事ですか。分かりました。それでは、どの辺りについて説明すればよろしいでしょうか?」
「そ、そうですね……」
ミーミルは少し考えると、
「じゃあ帝国を取り巻く環境について教えて下さい」
と答えた。
なかなかに、いい質問だ、と自分で思うミーミル。
「分かりました。それでは我がアイリス帝国を取り巻く環境について簡単に説明させていただきます。ただ、詳しい状況はカカロ様やオルデミア様の方が詳しいかと思われますが……」
「いえ、コカワさんだからこそいいのです」
「は、はぁ」
コカワはミーミルの言葉の意味を図りかねず、少し首を傾げる。
「それでは――」
コカワはテーブルの上にあった小物を並べる。
「この結線石がアイリス帝国と思って下さい。水差しが青の皇国ミネラポリス、馬の置物がアルコン王国。それから、この果物籠が――失礼ながら蛮族の地と呼ばれている場所になります」
結線石は真ん中に、水差しは右に、馬の置物は左に、果物籠は下に置かれた。
「アイリス帝国は西のアルコン王国と戦争状態になっていました。東のミネラポリスはアイリス帝国と同盟を結んでいたのですが、破棄されております。蛮族の地とは、不干渉状態が続いております」
「何で同盟破棄されたんですかね」
「それは――戦争協力を要求したからです。ミネラポリスは、帝国の属国に近い存在でした。それが反乱を起こしたと思って頂ければ」
「反乱って……」
「理由は色々とありますが、主に重税を課し過ぎたせいです」
「アルコン王国と戦争なのは?」
「領土拡大の為に、こちらが侵略を始めました」
「じゃあ全面的にこっちが悪者なのでは……?」
「そ、それは私からは何とも」
コカワはミゥンとリリィに目配せしながら言い淀む。
「北側はどうなっているんですか?」
「北側は山脈が続いております。山脈の向こう側にはアリスティア共和国がありますが、険しい山脈に阻まれているせいで国交は一切ありません」
「じゃあ蛮族の地は――」
「蛮族の地は、南部に広がる深い森に包まれた未開の地です。亜人族が国を作っているらしいのですが、我が帝国とは完全に不干渉となっております」
「つまり孤立無援と」
「そうなりますね。アルコンを攻めていたら、後ろから仲間だと思っていたミネラポリスに刺された形になっております」
「やっぱ戦争はいかんね」
「え……失礼ながら剣皇様は統一戦争でアイリス帝国を作り上げたのでは」
「うむ! 無計画な戦争はいかんねぇ!」
アヤメはミーミルの会話のせいか、胃が痛くなってきた。
「そういえば私も閃皇様にお話があるのですが」
リリィがいきなりアヤメに話しかけて来た。
「えっ、私に!? 何で!? ていうか今説明中じゃ」
「それより重要な事があるのです」
リリィがずいっと体を寄せて来る。
「大事なお話ですので、お隣の部屋で」
「ミ……マグヌスと一緒じゃ駄目?」
「閃皇様にお話ししたいのです」
リリィから発せられるその圧力は、とても断れるようなモノではなかった。
アヤメはミーミルに目配せする。
「蛮族って何?」
「それは――亜人種の事になります」
「もしかして差別されてる?」
「そうですね……亜人種である剣皇様の前で言うのは憚れるのですが、アイリス帝国ではかなり嫌われております」
「何で?」
「それは色々と理由がありますが、決定的だったのはラナイア探検隊捕食事件です」
「おぉう……事件名だけで嫌な予感がする。だが気になるね! 詳細をどうぞ」
ミーミルはアヤメの視線に全く気付かない。
コカワとの会話を――というかメイドとの会話を存分に堪能している。
ミーミルのおかげで大変な状況なのに。
「閃皇様。よそ見をしている場合ではありません」
リリィはアヤメの顔を持つと、無理やり自分の方向に向かせる。
「では移動しますよ」
「ふぬぅー」
頭を掴んだままアヤメを立たせるリリィ。
アヤメはうめき声で不満と危機を同時に表すが、リリィとミーミルには効果がなかった。
「ミゥン様も一緒にこちらへ」
「ふぁい?」
ミゥンはソファーに座って、寝そうになっていた。
コカワの話がよっぽど眠かったらしい。
目を擦りながら立ち上がると、ふらつきながらリリィの促すまま歩いていく。
そうしてアヤメ、リリィ、ミゥンの三人は別室へと移動した。
移動した部屋は窓側に近い部屋――寝室である。
寝室に入ったミゥンはベッドに座る。
リリィはベッドに座らず、アヤメと対峙した。
リリィは部屋に入ってから、完全に沈黙を保っている。
嫌な予感しかしなかった。
「それで話っていうのは……?」
アヤメは恐る恐るリリィに声をかける。
「とても大事な話です」
「大事……な話ですか」
やましい事しかないアヤメはリリィから思わず視線を外してしまう。
「出会った時から、もしかしたら――と思っていたのですが。先ほど、剣皇様への攻撃で確信したのです」
アヤメの血の気が引く。
ミーミルへの攻撃は不味かったのかもしれない。
例えばツッコミ役がマグヌスで、ボケ役がデルフィオスであると伝わっていたら?
この世界にボケとツッコミがあるかどうかまでは分からないが、それに近い事が伝わっていたら、伝承の英雄像とはかけ離れた行動となってしまう。
「あ、あれは何というか、勢いというか、いつもはもっと」
アヤメは必死で弁解しようとする。
「いいえ、否定しなくても分かります。まず目が違います」
「目!?」
ここに来て外見に対するツッコミ!?
確かに閃皇と外見が全然違うであろう事は予想していたが。
今更そんな事を言われるとは思ってもみなかった。
言うのがとても遅い。
「あわーわ。あわわー」
もうダメだと思って、アヤメは目を閉じる。
そして目を閉じたアヤメに、リリィははっきりと、こう言った。
「そう、閃皇様の目は支配者の目をしておられます」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
帝国の北=山脈(越えられない)
帝国の南=森(亜人種の生息地)
帝国の東=ミネラポリス(都市国家で帝国に反旗を翻す。理由は重税)
帝国の西=アルコン王国(戦争中)
『じゃんぷ☆あっぱー』
スキル分類 幼精霊族エタニア種族スキル
消費MP 2
効果範囲 1
威力 100
クールタイム 2
効果 相手にジャンプアッパーを見舞う。
備考 各種族に必ず実装されているネタスキルのうちの一つ。
ヒットするとコミカルな音と共に星のエフェクトが出る。
実装当初は所かまわずスキルを繰り出す暴力的なエタニアが街に溢れた。
コカワ以外の四人は、リビングに置いてあったソファーに腰を降ろしていた。
アヤメのスキル『じゃんぷ☆あっぱー』がミーミルの顎に炸裂し。
アヤメがリリィに羽交い絞めされ、ソファーに座らされた後の事である。
ミゥンはそんな二人を見て「ひぃー」と悲鳴を上げていた。
コカワが皇帝を落ち着け、今は全員がおとなしくなっている。
「ええと――実は色々と俺――私が生きていた時代と色々変わっているようなので、違いについてレクチャーしてほしいと思いまして」
コカワの言葉にミーミルはたどたどしく答える。
かつての皇帝がメイド如きに敬語なのは、かなりの違和感であったが、ミーミルとアヤメは全く気付けていない。
そして目隠ししたまま、スタートから足元グラグラの綱渡りが開始された。
「そういう事ですか。分かりました。それでは、どの辺りについて説明すればよろしいでしょうか?」
「そ、そうですね……」
ミーミルは少し考えると、
「じゃあ帝国を取り巻く環境について教えて下さい」
と答えた。
なかなかに、いい質問だ、と自分で思うミーミル。
「分かりました。それでは我がアイリス帝国を取り巻く環境について簡単に説明させていただきます。ただ、詳しい状況はカカロ様やオルデミア様の方が詳しいかと思われますが……」
「いえ、コカワさんだからこそいいのです」
「は、はぁ」
コカワはミーミルの言葉の意味を図りかねず、少し首を傾げる。
「それでは――」
コカワはテーブルの上にあった小物を並べる。
「この結線石がアイリス帝国と思って下さい。水差しが青の皇国ミネラポリス、馬の置物がアルコン王国。それから、この果物籠が――失礼ながら蛮族の地と呼ばれている場所になります」
結線石は真ん中に、水差しは右に、馬の置物は左に、果物籠は下に置かれた。
「アイリス帝国は西のアルコン王国と戦争状態になっていました。東のミネラポリスはアイリス帝国と同盟を結んでいたのですが、破棄されております。蛮族の地とは、不干渉状態が続いております」
「何で同盟破棄されたんですかね」
「それは――戦争協力を要求したからです。ミネラポリスは、帝国の属国に近い存在でした。それが反乱を起こしたと思って頂ければ」
「反乱って……」
「理由は色々とありますが、主に重税を課し過ぎたせいです」
「アルコン王国と戦争なのは?」
「領土拡大の為に、こちらが侵略を始めました」
「じゃあ全面的にこっちが悪者なのでは……?」
「そ、それは私からは何とも」
コカワはミゥンとリリィに目配せしながら言い淀む。
「北側はどうなっているんですか?」
「北側は山脈が続いております。山脈の向こう側にはアリスティア共和国がありますが、険しい山脈に阻まれているせいで国交は一切ありません」
「じゃあ蛮族の地は――」
「蛮族の地は、南部に広がる深い森に包まれた未開の地です。亜人族が国を作っているらしいのですが、我が帝国とは完全に不干渉となっております」
「つまり孤立無援と」
「そうなりますね。アルコンを攻めていたら、後ろから仲間だと思っていたミネラポリスに刺された形になっております」
「やっぱ戦争はいかんね」
「え……失礼ながら剣皇様は統一戦争でアイリス帝国を作り上げたのでは」
「うむ! 無計画な戦争はいかんねぇ!」
アヤメはミーミルの会話のせいか、胃が痛くなってきた。
「そういえば私も閃皇様にお話があるのですが」
リリィがいきなりアヤメに話しかけて来た。
「えっ、私に!? 何で!? ていうか今説明中じゃ」
「それより重要な事があるのです」
リリィがずいっと体を寄せて来る。
「大事なお話ですので、お隣の部屋で」
「ミ……マグヌスと一緒じゃ駄目?」
「閃皇様にお話ししたいのです」
リリィから発せられるその圧力は、とても断れるようなモノではなかった。
アヤメはミーミルに目配せする。
「蛮族って何?」
「それは――亜人種の事になります」
「もしかして差別されてる?」
「そうですね……亜人種である剣皇様の前で言うのは憚れるのですが、アイリス帝国ではかなり嫌われております」
「何で?」
「それは色々と理由がありますが、決定的だったのはラナイア探検隊捕食事件です」
「おぉう……事件名だけで嫌な予感がする。だが気になるね! 詳細をどうぞ」
ミーミルはアヤメの視線に全く気付かない。
コカワとの会話を――というかメイドとの会話を存分に堪能している。
ミーミルのおかげで大変な状況なのに。
「閃皇様。よそ見をしている場合ではありません」
リリィはアヤメの顔を持つと、無理やり自分の方向に向かせる。
「では移動しますよ」
「ふぬぅー」
頭を掴んだままアヤメを立たせるリリィ。
アヤメはうめき声で不満と危機を同時に表すが、リリィとミーミルには効果がなかった。
「ミゥン様も一緒にこちらへ」
「ふぁい?」
ミゥンはソファーに座って、寝そうになっていた。
コカワの話がよっぽど眠かったらしい。
目を擦りながら立ち上がると、ふらつきながらリリィの促すまま歩いていく。
そうしてアヤメ、リリィ、ミゥンの三人は別室へと移動した。
移動した部屋は窓側に近い部屋――寝室である。
寝室に入ったミゥンはベッドに座る。
リリィはベッドに座らず、アヤメと対峙した。
リリィは部屋に入ってから、完全に沈黙を保っている。
嫌な予感しかしなかった。
「それで話っていうのは……?」
アヤメは恐る恐るリリィに声をかける。
「とても大事な話です」
「大事……な話ですか」
やましい事しかないアヤメはリリィから思わず視線を外してしまう。
「出会った時から、もしかしたら――と思っていたのですが。先ほど、剣皇様への攻撃で確信したのです」
アヤメの血の気が引く。
ミーミルへの攻撃は不味かったのかもしれない。
例えばツッコミ役がマグヌスで、ボケ役がデルフィオスであると伝わっていたら?
この世界にボケとツッコミがあるかどうかまでは分からないが、それに近い事が伝わっていたら、伝承の英雄像とはかけ離れた行動となってしまう。
「あ、あれは何というか、勢いというか、いつもはもっと」
アヤメは必死で弁解しようとする。
「いいえ、否定しなくても分かります。まず目が違います」
「目!?」
ここに来て外見に対するツッコミ!?
確かに閃皇と外見が全然違うであろう事は予想していたが。
今更そんな事を言われるとは思ってもみなかった。
言うのがとても遅い。
「あわーわ。あわわー」
もうダメだと思って、アヤメは目を閉じる。
そして目を閉じたアヤメに、リリィははっきりと、こう言った。
「そう、閃皇様の目は支配者の目をしておられます」
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帝国の北=山脈(越えられない)
帝国の南=森(亜人種の生息地)
帝国の東=ミネラポリス(都市国家で帝国に反旗を翻す。理由は重税)
帝国の西=アルコン王国(戦争中)
『じゃんぷ☆あっぱー』
スキル分類 幼精霊族エタニア種族スキル
消費MP 2
効果範囲 1
威力 100
クールタイム 2
効果 相手にジャンプアッパーを見舞う。
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