国を建て直す前に自分を建て直したいんだが! ~何かが足りない異世界転生~

猫村慎之介

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第一部 二章

第二十章 会食を終えて

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「だ、大丈夫だったか!?」

 部屋に帰るなり、オルデミアが叫びながら駆け寄って来た。

「大変だったよ……」

 ミーミルはため息をつきながらソファーに座る。

「バレたりしなかっただろうな? 大丈夫だな?」
「それは、まあ、多分」

 恐らくバレている感じはしなかった、とアヤメも思う。

「所で謁見からずっと見かけなかったけど、どうしてたんだ?」
「うむ。事後処理をな……今までずっと闘技場の修理支持や、破損した練習器具のチェックを行っていた。まだ復旧にはかなりかかりそうだ」
「ぐぬぅ」

 ミーミルは低く唸ると、ガクリと頭を垂れたまま動かなくなる。

「兵士達の装備に傷が無かっただけマシだ。アヤメ殿のおかげ――というか兵の命を救ってくれたのだ。アヤメ殿には感謝してもしきれない」
「あ、あれはたまたま上手くいっただけだからね。あそこで護ってなかったらミーミル確実に牢獄行きだったし」

 照れ隠ししながらアヤメが言っても、ミーミルはへし折れたまま動かない。
 というか動けなかった。

「しかし今日は本当に疲れた。私も座らせて貰うよ」

 確かに最初に会った時より、少しやつれているように見える。
 目から生気も失われているような気がする。
 それでも相変わらず赤い火属性っぽい覇気のある人だが。

「これ食べる?」

 アヤメは持っていたシシルの実が乗った器を差し出す。
 果物でも食べれば少しは疲労回復するかも、と思ったのだ。

「それは――それはシシルの実ではないか!」

 さっきまで弱っていたオルデミアは急に立ち上がった。
 食べる前から元気になっている。

「そ、そうだよ。お腹いっぱいだからもって帰ってきたの」
「ももも貰っていいのか? 超高級品だぞ? 一粒で馬が買える程の逸品だぞ」
「大丈夫。置いてて腐ったら意味ないし」
「そ、それじゃ有り難く――!」

 オルデミアは実に勢いよく手を伸ばす。

「ちょっと待った」

 へし折れていたミーミルがオルデミアを制した。
 突然の制止に首を傾げるアヤメを横目に、ミーミルはオルデミアに聞く。

「一つ聞きたいんだけど、シシルの実って毒ある?」
「無いな。毒性のある植物ではない」
「アヤメは食べて大丈夫だったか?」
「食べたけど別に?」
「ふーむ……」

 ミーミルは顎をさすりながら考え込む。

「どうしたの」
「実はさっき俺が食べたら毒抵抗したんだよね」
「……本当に?」
「マジだよ」


『リ・バース』ではモンスターやプレイヤーから毒を撃ち込まれる事がある。

 モンスターなら蛇や蜘蛛型、プレイヤーならアサシンやアーチャー系の職が持っている状態異常を引き起こすスキルだ。
 毒を食らうと、持続的にHPが減少していく。
 毒にはCLASSがあり、CLASS1、CLASS2と数字が増えていく毎に毒の効力が高くなり大ダメージを受ける事となる。

 だが毒は確実に効く訳ではない。
 種族や職業によってCLASSの低い毒は効き辛かったり、無効化すらできる。
 その無効化や効果減少の事を『毒抵抗』と呼んだ。

 つまりミーミルが食べたシシルの実には、毒があった――という事なのだ。

「CLASS3の毒だった。そんな強い毒じゃないけど」

 アヤメは強化した種族特性スキルのお陰でCLASS5までの毒を無効化できる。
 ミーミルは職業と種族特性のお陰でCLASS7までの毒を無効化できた。
 だから問題なく無効化できたが……。

「うーん、ゲーム基準で言うと弱い毒だけどねぇ」
「だがこの世界基準でCLASS3毒が、どれ程のモノなのかさっぱり分からん」
「それに、この世界の人たちには効かなくて、私たちだけ効く毒かもしれない」
「ナウシュカ族だけに効いて、エタニア族には効かない毒ってパターンもあるな」
「むうー」

 アヤメも唸って考え込んでしまう。

 蚊帳の外のオルデミアは、意味不明の会話よりシシルの実に視線が釘付けになっていた。
 シシルの実は南部領のみで摂れる最高級果実だ。
 貴族や王族くらいしか食べる事はできず、一般家庭には絶対に流通しない。
 商人の出だったオルデミアは、当然ながら口に入れた事は無かった。
 稀に王の食卓に並んでいるシシルの実を、遠くから羨望の眼差しで見る程度である。

 それが今、目の前にあって、しかも食べていいと言われているのだ。
 よく分からないがシシルの実に毒などない。
 シシルは樹木だが、木の皮にも葉にも根にも、そして実にも毒などない。

「試しに毒見させて貰うぞ」

 オルデミアは実を一つ摘まむと、口に実を放り込んだ。

「うむ……これは想像以上に美味いな」

 ぷりっとした果肉が弾けるたびに、甘酸っぱい果汁が溢れ出す。
 間違いなくオルデミアの人生で、最も美味な果物であった。

「大丈夫? 何ともない?」
「何度も言うが、シシルの実に毒などない。毒を口に入れた時に感じる苦みや痺れもないから大丈夫だろう」

 オルデミアは二つ目に手を出すが、全く様子に変化はない。
 その様子はとても毒があるようには見えなかった。

「ふーむ、やっぱ異世界人だけに毒なのか」
「私が毒抵抗してないから、ミーミルだけかもね」
「何か理不尽だ。まあ効かないからいいけど」
「しかしそうなると食事してると、突然に毒ってパターンもあるのかなぁ」
「それは困るな。一緒にご飯食べてて、突然吐血とかしたら怖すぎるわ」
「ゴボォ」

 オルデミアが血を吐いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


毒耐性=一定CLASS以下の毒を無効化する。<パッシブスキル>
    アヤメはCLASS5まで無効化。
    ミーミルはCLASS7まで無効化。

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