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第一部 二章
第二十一話 毒
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「あ?」
「えっ?」
前のめりにオルデミアがゆっくりと倒れていく。
床に倒れこむまで、スローモーションのようにゆっくりと見えた。
地面に倒れたオルデミアは痙攣を始めた。
二人は無言で地面に倒れ伏したオルデミアを見る。
「毒……かな?」
「毒だろ! 絶対に毒だろ!」
「ど、どうしよう!? どうすればいい?」
「アヤメ、ヒールか歌を」
「ヒールは自分だけだし、毒解除する歌はないよ! 状態異常抵抗上げる歌はあるけど、かかってからじゃ意味ないし!」
「クソッ! 攻撃スキルしかねぇ! 何の意味もねぇ! やっぱモナルカエクェスになった方が良かった!」
ナイトからの職分岐でドゥームスレイヤーではなくモナルカエクェスになれば、各種ヒールやバフが使えるようになるが今更、悔やんでも仕方がない。
「もしかしてCLASS3毒って死ぬレベルっぽい?」
「そりゃ血吐いたら死ぬっしょ!」
「医者! 医者呼ばなきゃ!」
「そうだよ、医者だよ! えーと110、違う。119だ。てか電話どこよ! どうして電話が無いんだ!」
二人は完全にパニックを起こしていた。
「結線石を! メイドさん呼ぼう!」
アヤメが棚の上に置いてあった結線石を指差す。
「オッケー!」
ミーミルは棚に走る。
その速度は目にも止まらぬスピードだ。
だがソファーに躓きバランスを崩したミーミルは、床に顔から突っ込んだ。
「ギャアー!」
悲鳴を上げながら地面を顔で滑るミーミル。
その速度は目にも止まらない。
そのまま壁に突っ込むと、ぐったりと横たわった。
とりあえず役立たずのミーミルを無視して、アヤメは地面にうつ伏せのオルデミアをひっくり返す。
オルデミアは口から血を流して白目を剥いていた。
唇はチアノーゼを起こし、紫色だ。
このままでは確実に死んでしまうだろう。
「ミーミル寝てないで起きて!」
「もし……もし……コカワさん?」
顔を少しケズりながら地面を這いずって、どうにか結線石にたどり着いたミーミルは、連絡を取り始めた。
だが今からではとても間に合いそうにない。
呼吸は弱弱しく、体も冷たくなってきている気がする。
回復系のスキルがない自分が恨めしい。
目の前で死にそうな人間を見て、何もできないのか。
アヤメは死にゆくオルデミアを、ただ見下ろす事しかできなかった。
その時、アヤメの足に何かが当たった。
小瓶――青い小瓶だ。
机に置いてあったインク用の瓶が、衝撃で落ちて転がって来たらしい。
これはただのインクだが、リ・バースには青がMPポーション。
赤がHPポーション。
後は状態異常の種類で様々な色の状態異常を治すポーションが存
「解毒薬!!」
アヤメの目の前に燐光を放ち、緑色の液体が入った瓶が飛び出てきた。
空中でそれを掴むと、アヤメは親指で蓋を開く。
CLASS5までの毒を解除できる解毒薬。
この世界の毒に効くかは分からないが、試さず死ぬよりマシだ。
アヤメは正座をし、オルデミアの頭を太ももに乗せると、口へと解毒薬を流し込んだ。
この体勢なら飲む力がなくても、体が低いから自然と流れて行くはず。
「ナイス機転」
連絡を終え、ミーミルは顔を抑えながらアヤメに親指を立てた。
最近は使う事が少なかったから、すっかり忘れていた。
パーティだと大抵の状態異常は、ヒーラーが治療してくれるからだ。
だがヒーラーが回復できないタイミングもある。
そこでヒーラーに頼りきらず、必ず自分でも状態異常回復薬は持っておく。
それがデキるプレイヤーへの一歩である。
「体力減ってるだろうし、体力回復剤も飲ませとくか?」
「薬を何度も飲ませると体に毒かもしれないから、歌で行く」
アヤメは小さな声で、静かに歌い始めた。
『urari urari ieyuku izuka miwa too ku』
三人の体が薄い紫色に輝き始めた。
消費MP55。
射程1000。
自然治癒力を上げ、HPとMPの自然回復量を大幅に引き上げる。
『アーディライトの夜想曲』だ。
本来の戦闘ではHP回復目的よりMPの自然回復に真価を発揮する歌である。
だがこの世界の毒がHPにダメージを与えるのか、MPにダメージを与えるのかさっぱり分からなかったので、両方をフォローできる歌にした。
リ・バースではMPが減少していく魔力毒というバッドステータスも存在するのでとりあえず、である。
「お……ちょっと血色良くなって来たか? な?」
チアノーゼを起こして紫色だったオルデミアの唇は肌色に戻っていた。
不規則だった呼吸も、みるみる安定していく。
「大丈夫そうだ。ちゃんと効いてる」
ミーミルの言葉に歌っていて返事が出来ないアヤメは、こくこくと頷いた。
どうやら解毒薬がちゃんと効いたようだ。
歌も問題なく効力を発揮しているらしい。
「しかし何なんだ、この実は」
ミーミルは机に残されたシシルの実を眺めながら呟いた。
毒が無いと言った矢先に、いきなりの吐血である。
オルデミアは異世界から召喚されていないだろうから、この世界の食べ物が体に合わないという事もないはずだ。
となると無害な実の中に、毒がある実が混じったとしか考えられない。
「……あれ?」
ミーミルは首を傾げる。
「どうしたの?」
アヤメは歌を止めると、正座したままミーミルを見上げる。
「これ、暗殺? 暗殺じゃね?」
「……あ」
アヤメはぽん、と手を打った。
シシルの実に毒が入っていたのだ。
つまり誰かが剣皇と閃皇が邪魔だったので、暗殺しようとした。
そういう事だ。
でなければオルデミアが毒の無いはずの食物で死にかけるはずがない。
「犯人は、やっぱあの貴族の誰かか?」
「ええ……でも、会ってその日に暗殺? 無茶苦茶じゃない?」
「いや、あり得る。だってこの国、暗殺で王族皆殺しになってるし」
そう言われると確かにそうなのだが、国を救うための英雄をいきなり殺そうとするなんて、酷すぎるのではないか。
「暗殺する理由ある?」
「うーむ……普通に考えると利権絡みだろうけどな」
「ミーミルが亜人だから嫌われてるんじゃないの?」
「なら俺だけでいいじゃん? アヤメに毒盛る意味ないし」
「確かにそうだねぇ」
城壁を壊したから、という説もアヤメの脳裏に浮かんだが、やっぱりアヤメまで暗殺しようとする理由にはならない。
基本的にやらかしてるのはミーミルだけで、アヤメは嫌われるような事は何もしていなかったはずである。
だが、このシシルの実はアヤメの為に包まれたものだ。
閃皇や剣皇が存在する事に、殺したい程の不満を抱える人間がどこかにいる。
その事実はアヤメを不安にさせた。
「どうしよう。暗殺者みたいなのがやってきたりするのかな」
「参った……ちょっとこれはオルデミアに相談だな。俺達だけで解決できそうな問題じゃないと思うわ」
「そうだね……」
アヤメは膝枕で安らかな寝息を立てるオルデミアを見ながら呟いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
解毒薬=プレイヤーの毒を瞬時に回復する緑色のポーション。
CLASS5の毒まで有効。
「えっ?」
前のめりにオルデミアがゆっくりと倒れていく。
床に倒れこむまで、スローモーションのようにゆっくりと見えた。
地面に倒れたオルデミアは痙攣を始めた。
二人は無言で地面に倒れ伏したオルデミアを見る。
「毒……かな?」
「毒だろ! 絶対に毒だろ!」
「ど、どうしよう!? どうすればいい?」
「アヤメ、ヒールか歌を」
「ヒールは自分だけだし、毒解除する歌はないよ! 状態異常抵抗上げる歌はあるけど、かかってからじゃ意味ないし!」
「クソッ! 攻撃スキルしかねぇ! 何の意味もねぇ! やっぱモナルカエクェスになった方が良かった!」
ナイトからの職分岐でドゥームスレイヤーではなくモナルカエクェスになれば、各種ヒールやバフが使えるようになるが今更、悔やんでも仕方がない。
「もしかしてCLASS3毒って死ぬレベルっぽい?」
「そりゃ血吐いたら死ぬっしょ!」
「医者! 医者呼ばなきゃ!」
「そうだよ、医者だよ! えーと110、違う。119だ。てか電話どこよ! どうして電話が無いんだ!」
二人は完全にパニックを起こしていた。
「結線石を! メイドさん呼ぼう!」
アヤメが棚の上に置いてあった結線石を指差す。
「オッケー!」
ミーミルは棚に走る。
その速度は目にも止まらぬスピードだ。
だがソファーに躓きバランスを崩したミーミルは、床に顔から突っ込んだ。
「ギャアー!」
悲鳴を上げながら地面を顔で滑るミーミル。
その速度は目にも止まらない。
そのまま壁に突っ込むと、ぐったりと横たわった。
とりあえず役立たずのミーミルを無視して、アヤメは地面にうつ伏せのオルデミアをひっくり返す。
オルデミアは口から血を流して白目を剥いていた。
唇はチアノーゼを起こし、紫色だ。
このままでは確実に死んでしまうだろう。
「ミーミル寝てないで起きて!」
「もし……もし……コカワさん?」
顔を少しケズりながら地面を這いずって、どうにか結線石にたどり着いたミーミルは、連絡を取り始めた。
だが今からではとても間に合いそうにない。
呼吸は弱弱しく、体も冷たくなってきている気がする。
回復系のスキルがない自分が恨めしい。
目の前で死にそうな人間を見て、何もできないのか。
アヤメは死にゆくオルデミアを、ただ見下ろす事しかできなかった。
その時、アヤメの足に何かが当たった。
小瓶――青い小瓶だ。
机に置いてあったインク用の瓶が、衝撃で落ちて転がって来たらしい。
これはただのインクだが、リ・バースには青がMPポーション。
赤がHPポーション。
後は状態異常の種類で様々な色の状態異常を治すポーションが存
「解毒薬!!」
アヤメの目の前に燐光を放ち、緑色の液体が入った瓶が飛び出てきた。
空中でそれを掴むと、アヤメは親指で蓋を開く。
CLASS5までの毒を解除できる解毒薬。
この世界の毒に効くかは分からないが、試さず死ぬよりマシだ。
アヤメは正座をし、オルデミアの頭を太ももに乗せると、口へと解毒薬を流し込んだ。
この体勢なら飲む力がなくても、体が低いから自然と流れて行くはず。
「ナイス機転」
連絡を終え、ミーミルは顔を抑えながらアヤメに親指を立てた。
最近は使う事が少なかったから、すっかり忘れていた。
パーティだと大抵の状態異常は、ヒーラーが治療してくれるからだ。
だがヒーラーが回復できないタイミングもある。
そこでヒーラーに頼りきらず、必ず自分でも状態異常回復薬は持っておく。
それがデキるプレイヤーへの一歩である。
「体力減ってるだろうし、体力回復剤も飲ませとくか?」
「薬を何度も飲ませると体に毒かもしれないから、歌で行く」
アヤメは小さな声で、静かに歌い始めた。
『urari urari ieyuku izuka miwa too ku』
三人の体が薄い紫色に輝き始めた。
消費MP55。
射程1000。
自然治癒力を上げ、HPとMPの自然回復量を大幅に引き上げる。
『アーディライトの夜想曲』だ。
本来の戦闘ではHP回復目的よりMPの自然回復に真価を発揮する歌である。
だがこの世界の毒がHPにダメージを与えるのか、MPにダメージを与えるのかさっぱり分からなかったので、両方をフォローできる歌にした。
リ・バースではMPが減少していく魔力毒というバッドステータスも存在するのでとりあえず、である。
「お……ちょっと血色良くなって来たか? な?」
チアノーゼを起こして紫色だったオルデミアの唇は肌色に戻っていた。
不規則だった呼吸も、みるみる安定していく。
「大丈夫そうだ。ちゃんと効いてる」
ミーミルの言葉に歌っていて返事が出来ないアヤメは、こくこくと頷いた。
どうやら解毒薬がちゃんと効いたようだ。
歌も問題なく効力を発揮しているらしい。
「しかし何なんだ、この実は」
ミーミルは机に残されたシシルの実を眺めながら呟いた。
毒が無いと言った矢先に、いきなりの吐血である。
オルデミアは異世界から召喚されていないだろうから、この世界の食べ物が体に合わないという事もないはずだ。
となると無害な実の中に、毒がある実が混じったとしか考えられない。
「……あれ?」
ミーミルは首を傾げる。
「どうしたの?」
アヤメは歌を止めると、正座したままミーミルを見上げる。
「これ、暗殺? 暗殺じゃね?」
「……あ」
アヤメはぽん、と手を打った。
シシルの実に毒が入っていたのだ。
つまり誰かが剣皇と閃皇が邪魔だったので、暗殺しようとした。
そういう事だ。
でなければオルデミアが毒の無いはずの食物で死にかけるはずがない。
「犯人は、やっぱあの貴族の誰かか?」
「ええ……でも、会ってその日に暗殺? 無茶苦茶じゃない?」
「いや、あり得る。だってこの国、暗殺で王族皆殺しになってるし」
そう言われると確かにそうなのだが、国を救うための英雄をいきなり殺そうとするなんて、酷すぎるのではないか。
「暗殺する理由ある?」
「うーむ……普通に考えると利権絡みだろうけどな」
「ミーミルが亜人だから嫌われてるんじゃないの?」
「なら俺だけでいいじゃん? アヤメに毒盛る意味ないし」
「確かにそうだねぇ」
城壁を壊したから、という説もアヤメの脳裏に浮かんだが、やっぱりアヤメまで暗殺しようとする理由にはならない。
基本的にやらかしてるのはミーミルだけで、アヤメは嫌われるような事は何もしていなかったはずである。
だが、このシシルの実はアヤメの為に包まれたものだ。
閃皇や剣皇が存在する事に、殺したい程の不満を抱える人間がどこかにいる。
その事実はアヤメを不安にさせた。
「どうしよう。暗殺者みたいなのがやってきたりするのかな」
「参った……ちょっとこれはオルデミアに相談だな。俺達だけで解決できそうな問題じゃないと思うわ」
「そうだね……」
アヤメは膝枕で安らかな寝息を立てるオルデミアを見ながら呟いた。
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CLASS5の毒まで有効。
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