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ファンタジーは面白い奴だけでいい
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原付でついて行くほど数分、俺は男の拠点らしきものについた。2階建の四角いなんの趣も見出せないその建物には男の苗字と思しき「タケイ」という看板、というか表札のようなものがポツンとあるだけだ。
「入りたまえ」
「お邪魔します」
会釈をして、俺は中に入った。中は机が四台にパソコンが各1台ずつ、そして左隅にスクリーンが垂れ下がっていて、プロジェクターが、待機していた。
「好きなところに座って少し待っていてくれくれ。私はお茶を持ってくるから」
そう言うと俺の返事も聞かず、タンタンと2階に続くであろう階段を軽やかに登っていった。
俺は手前の席に着くことにした。ここならもしスクリーンを使うことがあっても見やすい。しかし殺風景な部屋だ。カレンダーはないし、花瓶も置いていない。机の上にも個人のモノ1つとして置いておらず、なんだか不気味だ。
「何か興味を惹かれたものがあるのかね」
「いえ、特には。」
「ここはね、わたしが経営している会社の事務所として使っている場なんだ、因みに2階は私の居住空間として扱っている。」
「社員の人は?」
「社員の人は私ともう2人いるよ、だけどここで作業することはほとんどない。私の会社は現場でほとんど作業するからね。」
「もしかして体力系の仕事ですか?」
「そのもしかして、だよ。体力、気力が問われるスケールの大きいバイトだ。」
スケールの大きい仕事をバイトにさせるなんて、黒の中の黒じゃねーか。ぼくちんかえりゅ。
ガタンと席を立つと俺は一礼してその場を離れようとした。
「100万円だ。」
「え?」
「1ヶ月の報酬100万円、成功すれば追加で払おう。」
トントンと机を軽くノックし座り直すよう男が促し、俺は100万円の話を詳しく聞くことにした。聞くだけタダだしな。
「この内容を説明するのはとても難しいから細かいことは追い追い説明するとして、ズバリ言うと…人を殺して欲しいんだよね。」
「アンタ何言ってんだ!」
「そうだね、その反応は間違いじゃない。だが現場はここじゃない…異世界だ。」
「ゲーム脳ってやつか、あんた俺に白い粉運ばせたり、訳の分からないボタン押させたりするのを誤魔化して言ってるならもうちょっと賢く生きようとした方がいいよ。」
「私は今真面目に説明しようとしている。興奮するのも分かるが最後まで聞いて欲しい。君は最近のアニメ、小説投稿サイトを見る事はあるかい?」
「あ?ああ、あるよ、絞り込んで見るくらいだ」
「その中に異世界転生というジャンルについてはどうだ?」
「なんでそんな事聞くんだよ、あんたオタクか?」
「人は誰しも何か1つオタクであるという」
「はいはい」これからはつまらないなと思って俺は手を横に振り制した。
「嫌いだよ。もしアンタが好きなだったら気分悪くするかもだけどさ、嫌いなんだ、あの本気出さない感じといい、ご都合主義で多数決に結局流される感じ。見ていて殺意すら湧いてくるよ。」
「最高だよ、君」
「は?」
「最高だと言ったんだ。君は逸材だ、私と意見の合うベスト社員候補生だ。」
男はニヤニヤして手遊びが激しくなり落ち着きがなかった。やがて俺の顔が気持ち悪いものを見るような顔だったのか咳払いをすると、話を続けるように落ち着きを取り戻した。
「そんな君には、異世界で飽和している奴らを殺害してほしいんだ。勇者、冒険者を名乗り、転生時に授かったであろう異能を用いてやりたい放題なゴミ共を間引く役目を君に依頼したい。近年転生先を指定する件が異常なほど増えてね、大変偏りが酷いんだ。」
「んで?向こうに俺のアバターでも作って自宅でコントローラーで操作してか?そのときは側にポテチとコーラを待機させてもいいか?ギャラリーがいると燃えるんだよ、俺。」
「ユニークだとは思うが先に言ったじゃないか、体力を使う仕事だと。君には実際に君の体を用いて戦ってもらう。」
「どうやって行くのさ、バスか?飛行機?それとも引き出しか?」
ドラえもんはまだ引っ張るのかという顔を男に向けて聞いてみる。
すると男は背後にあるスクリーンを指した。
「これだよ、にわかに信じがたいかも知れないが君にはこれを使って異世界転移し、限られた時間内に指定された奴らを殺害してほしい。」
「なんで殺さないと行けないんだ?」
「最もな質問だ。殺しなんて誰しも避けたいに決まってる。私も出来る事なら亜空間にでもそやつらを投げ込んで神の前に放り出し、再転生してもらうように出来るならそうしたい。なんなら野放しにしてお互い関わらなければそれでいい、それが一番だ」男は溜息をつき、疲れ切った顔をしていた。すごく、老けて見えるのは深く刻まれたシワが更に目立つからかもしれない。
「だがそうもいかないんだ。実は、魂には限りがあってだね、各世界にも定員数があるんだ。」
「それが異世界では上限に達したという事?」
「その通りだ、正しくは今私たちのいるルールに縛られていない世界に対し、魂の数が増え過ぎて、バランスが取れない状態が続いている。」
「それってやばいの?」
「めちゃくちゃヤバイ」
「どうなるの?」
「押し寄せた魂は行き場をなくし、やがて消滅し、魂は増えることはなく、全体の数は減る1方だから繁栄することが難しくなる。簡単に言うと器の中身がどんどん減ってからの器ばかりになるということだ。もちろんそんな空っぽの世界に面白みを見出せる物好きな神はいないから管理する事もなく、1つ2つ、と世界は消滅していき、多様性を見出すことは無くなる。やがて手ぶらになった神が繁栄している世界を横取りしようと神々間で争いが起きかねない。予想をはるかに超えた問題が起こるんだ。」
「つまりどうしろと」
「今にも溢れそうな異世界でバカし放題な奴らを殺害しまくり、この私たちのいる世界に再転生させる。簡単だろ?」
「間違いねぇ、やる事ははっきりしてるよ」
「じゃあ受けてくれるかい」
待ってましたと両腕を広げて男が近付いてくる。
「3日くれないか、あと作業内容の詳しい説明を用紙でまとめたものをくれ」おれは3本指を突き立てて男を制し交渉する。
すると男は首を縦に振り、期待してるよといって説明書の制作に取り掛かるように動き始めた。
「入りたまえ」
「お邪魔します」
会釈をして、俺は中に入った。中は机が四台にパソコンが各1台ずつ、そして左隅にスクリーンが垂れ下がっていて、プロジェクターが、待機していた。
「好きなところに座って少し待っていてくれくれ。私はお茶を持ってくるから」
そう言うと俺の返事も聞かず、タンタンと2階に続くであろう階段を軽やかに登っていった。
俺は手前の席に着くことにした。ここならもしスクリーンを使うことがあっても見やすい。しかし殺風景な部屋だ。カレンダーはないし、花瓶も置いていない。机の上にも個人のモノ1つとして置いておらず、なんだか不気味だ。
「何か興味を惹かれたものがあるのかね」
「いえ、特には。」
「ここはね、わたしが経営している会社の事務所として使っている場なんだ、因みに2階は私の居住空間として扱っている。」
「社員の人は?」
「社員の人は私ともう2人いるよ、だけどここで作業することはほとんどない。私の会社は現場でほとんど作業するからね。」
「もしかして体力系の仕事ですか?」
「そのもしかして、だよ。体力、気力が問われるスケールの大きいバイトだ。」
スケールの大きい仕事をバイトにさせるなんて、黒の中の黒じゃねーか。ぼくちんかえりゅ。
ガタンと席を立つと俺は一礼してその場を離れようとした。
「100万円だ。」
「え?」
「1ヶ月の報酬100万円、成功すれば追加で払おう。」
トントンと机を軽くノックし座り直すよう男が促し、俺は100万円の話を詳しく聞くことにした。聞くだけタダだしな。
「この内容を説明するのはとても難しいから細かいことは追い追い説明するとして、ズバリ言うと…人を殺して欲しいんだよね。」
「アンタ何言ってんだ!」
「そうだね、その反応は間違いじゃない。だが現場はここじゃない…異世界だ。」
「ゲーム脳ってやつか、あんた俺に白い粉運ばせたり、訳の分からないボタン押させたりするのを誤魔化して言ってるならもうちょっと賢く生きようとした方がいいよ。」
「私は今真面目に説明しようとしている。興奮するのも分かるが最後まで聞いて欲しい。君は最近のアニメ、小説投稿サイトを見る事はあるかい?」
「あ?ああ、あるよ、絞り込んで見るくらいだ」
「その中に異世界転生というジャンルについてはどうだ?」
「なんでそんな事聞くんだよ、あんたオタクか?」
「人は誰しも何か1つオタクであるという」
「はいはい」これからはつまらないなと思って俺は手を横に振り制した。
「嫌いだよ。もしアンタが好きなだったら気分悪くするかもだけどさ、嫌いなんだ、あの本気出さない感じといい、ご都合主義で多数決に結局流される感じ。見ていて殺意すら湧いてくるよ。」
「最高だよ、君」
「は?」
「最高だと言ったんだ。君は逸材だ、私と意見の合うベスト社員候補生だ。」
男はニヤニヤして手遊びが激しくなり落ち着きがなかった。やがて俺の顔が気持ち悪いものを見るような顔だったのか咳払いをすると、話を続けるように落ち着きを取り戻した。
「そんな君には、異世界で飽和している奴らを殺害してほしいんだ。勇者、冒険者を名乗り、転生時に授かったであろう異能を用いてやりたい放題なゴミ共を間引く役目を君に依頼したい。近年転生先を指定する件が異常なほど増えてね、大変偏りが酷いんだ。」
「んで?向こうに俺のアバターでも作って自宅でコントローラーで操作してか?そのときは側にポテチとコーラを待機させてもいいか?ギャラリーがいると燃えるんだよ、俺。」
「ユニークだとは思うが先に言ったじゃないか、体力を使う仕事だと。君には実際に君の体を用いて戦ってもらう。」
「どうやって行くのさ、バスか?飛行機?それとも引き出しか?」
ドラえもんはまだ引っ張るのかという顔を男に向けて聞いてみる。
すると男は背後にあるスクリーンを指した。
「これだよ、にわかに信じがたいかも知れないが君にはこれを使って異世界転移し、限られた時間内に指定された奴らを殺害してほしい。」
「なんで殺さないと行けないんだ?」
「最もな質問だ。殺しなんて誰しも避けたいに決まってる。私も出来る事なら亜空間にでもそやつらを投げ込んで神の前に放り出し、再転生してもらうように出来るならそうしたい。なんなら野放しにしてお互い関わらなければそれでいい、それが一番だ」男は溜息をつき、疲れ切った顔をしていた。すごく、老けて見えるのは深く刻まれたシワが更に目立つからかもしれない。
「だがそうもいかないんだ。実は、魂には限りがあってだね、各世界にも定員数があるんだ。」
「それが異世界では上限に達したという事?」
「その通りだ、正しくは今私たちのいるルールに縛られていない世界に対し、魂の数が増え過ぎて、バランスが取れない状態が続いている。」
「それってやばいの?」
「めちゃくちゃヤバイ」
「どうなるの?」
「押し寄せた魂は行き場をなくし、やがて消滅し、魂は増えることはなく、全体の数は減る1方だから繁栄することが難しくなる。簡単に言うと器の中身がどんどん減ってからの器ばかりになるということだ。もちろんそんな空っぽの世界に面白みを見出せる物好きな神はいないから管理する事もなく、1つ2つ、と世界は消滅していき、多様性を見出すことは無くなる。やがて手ぶらになった神が繁栄している世界を横取りしようと神々間で争いが起きかねない。予想をはるかに超えた問題が起こるんだ。」
「つまりどうしろと」
「今にも溢れそうな異世界でバカし放題な奴らを殺害しまくり、この私たちのいる世界に再転生させる。簡単だろ?」
「間違いねぇ、やる事ははっきりしてるよ」
「じゃあ受けてくれるかい」
待ってましたと両腕を広げて男が近付いてくる。
「3日くれないか、あと作業内容の詳しい説明を用紙でまとめたものをくれ」おれは3本指を突き立てて男を制し交渉する。
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