お前らの転生先には不満があるから消えてもらう

エンドクルス

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day1

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俺はお弟子さんに潜伏先となる鍛冶屋に案内され、無事、親方と会うことができた。
「おいトム!なにしてやがる、下っ端が迎えよこせなんて前代未聞じゃねーか!中で説教してやる、ついて来い!」
あ、あばばば、なんという迫力なんだ。この世界でトムとして生まれ落ちなくて良かったランキング1位だよ、お父さんお母さん、地球のみんなありがとう!!
カンカンと、甲高い音が鳴り響き、罵声にも似た職人達の指示、轟々と燃え盛る炉の有様に俺は圧倒された。本当に剣を作るところを見る機会が俺の人生にあるとは思わなかった。見たことのない形の剣や道具はとても興味をそそられた。自分のいる世界では感じ取ることのない、剣が主力として良しとされた時代の重みはさざ波のように俺に押し寄せてきた。本当にこれで人を殺すことがあるんだ、それも気に入らないというだけで実行してしまうようなクソ野郎が俺の敵で、これからゴロゴロ出てくるなんて。
「出来んのかな、俺…」
怖気づきそうなときになって親方がガシっと腕を掴んで俺は加工場の奥に連れていかれた。やべ、呼ばれてるの忘れてた、俺大丈夫かな。

ガチャリと、年季の入った扉を閉めると親方とみられる人物は俺の腕をパッと放すとふぅ、とため息をついた。見た目は40後半ぐらいの風貌のその人は俺に座るように促し、俺は素早く指示に従った。入った部屋はどうやら商談室のようで、落ち着いた雰囲気な上に加工場からは離れているので鉄を打つ音は僅かにしか聞こえない。

「アンタ、名前は?」
親方は部屋の奥からお茶を持ってきて俺に差し出してくれた。
「トムだよ」
だが俺から崩すのはまだ早い、もしかするなら立ち聞きしたなりすましの可能性がある。
「トムは俺が提案した名前だ、アンタが、異国から来て、あの野郎を始末するのは、神父から聞いてる。ほれ、確認証もあるぞ」
差し出された封筒は俺も何度か使ったことのある馴染みの薄い紙製の茶封筒だった。中を開けると、一枚の紙が入っており、協力者の名前らしき文字と簡単なプロフィールが書いてあった。
「デニル…さん。黒騎士御用達の鍛冶屋[ドラゴンキラー]の親方、ふーむ、本当なのかも。」
「まだ疑ってんのか?」
「いいえ…自分初任務な者で」
こんな異世界で誰彼信じろとか無茶苦茶だろ
「大丈夫かよ、奴は強いぞ、本当にやれんのか?」
ここで情報提供が受けられないのはとても痛い、俺は人生で初めて大真面目な虚勢を張った。
「大丈夫です、ファーストコンタクトでコテンパンのギッタギタですわ~ハハッ!」
すかさずいま自分に出来る最大限のキメ顔を出してみる。キマれ、堕ちろ、俺に力をくれ、ネズミの国の長よ!
「まぁいいがな。、んで?名前は?」
「俺?仕事するのに本名いらねーだろ、成果で答えてやるさ。」

決まったぜチクショウ見たかオーディエンス、フゥー。
だがそれは俺自身を鼓舞するための空元気で本当は仕方ないなぁという顔をされて情けないというのが事実だった。
ぐっとお茶を飲むと親方は咳払いをして俺に注意を向けるようにするとゆっくりと話し始めた。
「クラウスはな、3年前突然この王国にやってきたんだ、葉っぱ一枚でな。」
「葉っぱ一枚ってなんですか?」
「何も着て無かったんだよ、本人もなそれは顔を真っ赤にして…フッ、不憫で可哀想だったねぇ」
鼻で笑ったね、鼻で
「でも不思議なことがおこったんだよ、近くを通りかかった男からお情けで食い物をもらうと途端に、こう、なんていうか光り輝いてさ、あれよあれよといううちに立派な服を着て、精悍な顔立ちをした男になってたんだ。」
そうなれば、話によると能力には糧が必要と考えるタイプか、しかし顔までって欲張りなやつだな。
「それでそいつ、ギルドはどこだだの貨幣はどうなってるだの手当たり次第に人に聞いてきて変なやつが来たなって思ったんだ。葉っぱ一枚だしな、フハハ」何笑ってんだ、他人の不幸大好きかよ。
「それからどんな活躍をしたんですか?」
「ああ、しばらくは魔族を倒したり、王国を略奪しようとする他国の勢力と戦ったりとこの国のために剣をとってくれたもんだ。」
「へぇー、強いんですか。」
「強いよ、強いどころじゃないね、もう強すぎて強すぎて本気出さないよって顔しながら戦うやつになったよ。」
「調子に乗ってる人じゃないですか」
「そうかもな、しばらくは剣一本で人とは思えない速さで魔族や敵国兵士を捌きまくってたのに、いつしか片手で破壊術のような熱球をポンと放って敵も味方も関係なしに戦場一面焼け野原にして決着つけようとしやがる。剣士なんて見かけだけの魔術士もどきに成り下がりちまったよ。それにな最近、そいつの国で使ってるていうものを俺たちに使うように強く勧めてきてな、ほれ」親方が指差す方向を目で追っていくと、そこには電子レンジなるものがデン、と我が物顔で鎮座している。
「あ、あれ使い方知ってるんですか?」
「もちろんだよ、便利だからってな、みんな集めて広場で実践してくれたのさ。あと乗り物もな、カブって知ってるか?」
「ダメに決まってるだろうがぁ!!」思わず俺は立ち上がってしまった。
「おい、どうしたんだ急に、びっくりさせるなよ。」
「あ、すいませんつい、思うところがあって。えーっと、ということは電気とかもあるってことですか?」
「ああ、この国の森の近くにドーム状の建物があって、そこで電気を作ってるって話だ。」
「ガソリンもですか」
「ん、ガソリンてなんだ?」
「え!?カブはどうやって動かしてるか知ってるんですか?」
「ああ、捻って、持つところをこうガチャガチャってやるとうごくんだよな」
「燃料のことです」
「燃料なんていらないぞ」
「何だと?」
「燃料はいらねぇ、だからすごい便利な乗り物だって広まってるよ。」
くっ、ガソリンは魔力で代用してるわけか?じゃあなんで電気は魔力で変換してないんだろう?
そもそもどうやって動くのか不思議に思わないのだろうか?もしくはこの世界の魔力という力はそれだけに大きな存在にも関わらず曖昧なもので、追求を逃れることのできる代物なのかもしれない。というかこいつら新しいものにえらく寛大じゃないか?そう簡単に先代からの知恵で手に入れてきた暮らしの形式を便利だからといって使い捨てみたいに放棄するだろうか?その価値観わかんねぇな。
その後も親方の話によると大分俺たちの文明の利器を魔力と思われる力でポンポン出してはこの世界の暮らしを便利にしているようだ。一見良い行いをしているようだが、先ほどのような彼のやり方には思いやりがない。というのも、彼がいなくなれば成り立たないものがあまりに多すぎているからである。魔力で動く原付、海や地下から魔術を用いてエネルギーとなる石炭やその他の鉱物を強引に集め、また魔術を通して電気に生成、そして地下に埋められている電線を通して各家庭に無料で提供しているらしい。これは神もコイツを消したくなると思う。
会社での話もあったように神は多様性があることを好むのでこいつがいると他の奴が開拓するであろう事柄を先の結果を携えて世に出してしまうのだ。世界をデータ容量で見るとして10が満タンなら、コイツが8で他のやつが1、環境、神の嗜好で1の情報内容になってしまいかねない。
これを神が面白いというのなら、俺は神の立場になって思考を巡らせ、予測して解決案を練るという方法は選択肢から削除しなければならない。しかし、いまは己が持っている感性で神の立場に立ってどう思うかを判断するほうがこの仕事の速やかな達成に繋がると感じる。
「今クラウスさんはどちらにいらっしゃるのですか?」
「今日の昼近くに来るはずだ、新しい剣をわざわざ受け取りに来るとさ。暇そうだからな」
 
まずはターゲットをこの目で見てどうするか決めよう、間抜けそうなら毒殺で手早くすむかもしれないからな。

俺はこの鍛冶屋でのお弟子さんという隠れ蓑もあり、クラウスが来るまで待たせてもらうことにした。

「おい、トム、早く材料取ってこい」
聞いてない、聞いてないぞ。
「え?」
「そこにある鉄を持って来いって言ってるだろうがこのバカタレがぁ!」
ふっフラッシュバック!俺の設備業にいた時に聞いたその暴言が世界を跨いでまさか俺にショックを与えるなんて。く、くそが、ぼ、ぼぼぼボカァな、おうあの頃の自分とはちがうんだぞ、従順な負け犬はここにはいないんだ!
「おい、わかったのか?」ゴツゴツの手をボキボキ鳴らして俺を威圧するタコ坊主の先輩方は睨みを利かせてくる。ま、まけないぞぅ….。

「はい、全力で働かせて頂きます!」結果働いた。
でも俺はまだ負け犬ではない、利口な犬さ、ワンワン。勝敗なんてなかった、俺、上下関係にはちょっと厳しいとこあるんだ、今回たまたま配役として俺が下だった。従う理由はそれだけなんだからね♪

しばらく俺が潜伏の為とこき使われていると瞬く間に時間は過ぎ、日は高く昇っていて約束の時間になっていた。そろそろなんじゃないか?休憩か、クラウスか?もう2択しか残ってないはずだ、なんて事を考えながらタラタラと汗をかきかき俺は薪を運んだり、材料となる鉄やなんか分からん物が沢山入っている箱を運んだりしていた。ポーターも真っ青の運び屋に成り下がったぜ、あとはスーツとスキンヘッドか。ハードル低いな、俺のポーター。
 
「すいませーん、剣の注文をしていたクラウスです。店主はいますか?」
店の入り口で男の声がしたので奴が来たことが分かった。
裏で仕事をしていたので急いで駆けつけることにした。出来ればこいつと店の主人を合わせる奴にポジション入りして顔を覚えもらい奴のコミュニティに接触しやすい環境を作るのがベストだ。
たったったっと駆け足で店の前に出るとすでに他の職人の1人がクラウスと思われる一行と喋っていて出番はない様子である。くそ、次は店番にしてもらうようにいうか。 
 
クラウスは写真で見たよりも悔しいが…イケメンだった。堀が深くて立体的な目鼻立ちで日本人とは雲泥の差があった。肌も白く目の色なんてアメージング!赤色だったんだ!厨二かよ。
背も高いのに鎧も様になっていて戦士は俺だと言わんばかりのクオリティに俺はひびってた。
ラノベの挿絵やアニメに出てくる奴らの覇気とは比べ物になんねぇよ、重みが違いすぎて寒気がするくらいだ。
周りのあのー、ギルメンて言うの?そいつらもなんかイケイケな陽キャラしかいない感じて俺と同じフィーリングしそうな奴1人もカケラもなかった。男女混合の少数精鋭派なのか6人程度だがみんなファーストネームで呼びあっているようでなんか、こう、住んでる世界がここでも違うかと思い知らされてイラっとした。

しばらくして店主が新しい剣を持ってきてクラウスに手渡しするようだったのだが俺と目が合うと、中で細かな説明があるから商談室にいこうということにになりクラウスと店主だけにしてくれとギルメンにクラウスが伝えて奥に入っていく。すると店主に引っ張られるように俺も連れていかれ、3人で店の奥に引っ込むかたちになった。

「すいませんねクラウスさん。この剣は魔剣なので説明する必要性があるんですよ。
「そうだったな、この剣は魔剣、魔力導入対応剣だ。俺もまさかこの世界に魔力が効かないモンスターが存在するとは思わなかったよ、あのドラゴン、俺の手を煩わせるなんて生意気だぜ、なぁそう思わないか坊主?」
ああ?おめなんていったんだよもういっぺん言ってみろや、テメェの奥さんと息子に辱め受けさせやろうか?なんて思いつつ、本人は何にも出来ないあたり俺の陰キャラ露呈してしまうところだったよ。あぶねー、俺が優しくて命拾いしたな、俺。
「そ、そっすねー、でもそうゆう思うようにいかないのも冒険の醍醐味なんじゃないですかぁ、いったことないんですけど、僕はそう思います。」
どうだ、ちょっと小生意気だけど元気のある弟子感、出てんじゃない?俺、可愛いんじゃない?
「わかったようにゆうじゃねーか、HAHAHA!」
スパーン!機嫌良さげに肩を叩かれた。くそっ、お前もかよ。気軽に触れてんじゃねーよ。
えへへとその場をやり過ごし、商談室に入るとおかけになってください、と店主がクラウスに言うと俺を引っ張って、奥で茶を淹れてきますからと言う名目で一緒に奥に引っ込んだ。
「おい、ファーストコンタクトでコテンパン?愛想良くして下手にでてんじゃねーか。口だけのハッタリおばけかポンコツ!」
「違うって!ここからだって。まだ勝負をかけるには早いからですよ、へへへ。」俺はゴマをすった。今はマジで大事な時、店主も冗談で言っているのは想像がつく。どうやら俺をクラウスさんに何かしらの形で接触しやすいようにしてくれるようだ。
「いいか、俺がお前を冒険者の剣の勉強のため見学につかせてくれとクラウスさんに頼むからそれでなんとかしろ。正直、この先修理で依頼にくるほどあの剣は壊れることはない。あの剣は魔力導入対応剣、剣の主の魔力を通し、他の魔力を断つ剣だ。剣から出力された魔術の類は魔力と認知されない、剣によって傷つけられたと同じように物理攻撃と見なされ殺傷力を遠距離から発動することが出来てしまう剣だ。」
「え、てことは剣から出力された破壊光線や爆発は?」
「物理攻撃と認知され、対魔力防御は貫通される。通らなかったものが通るようになるということだ。」
「なんでそんな物騒なもの作るんだよ」
「だって依頼なんだもん、出来ちゃうんだもん♪」
「もんじゃねーよ、あんたもしあいつが世界を破滅させるような事を考えたらその剣は奴の破壊行動の助長になるからな、わかってんすか?」
「それもこれもお前がなんとかしてくれるんだろ、頼んだぞトム。」
ん、それを言われると言葉が出てこない、覚悟を決めていくしかないのかな。
俺はわかったよと、曖昧な返事をして言われた通りに茶を淹れ、店主と一緒に商談室に座り話を聞くことにした。

それから話し合いの傍観者として俺は彼らの側に付き、適当な相槌をうってその場をやり過ごした。
話の内容として、このクラウスはいつものように魔力弾や光線で国外のダンジョンに挑んでいたのだが、中層にいるグラスドラゴンという対魔力防御のモンスターによって行く手を阻まれ、一時的撤退をしてきたらしい。そして攻略法を考えていくうちに魔剣、魔力導入対応剣の存在を知り、贔屓にしているこの店に剣を発注したそうだ。剣で倒せばいいだろと店主も言ったのだが、返り血で汚れたくないだの、一流は一撃で倒すのがもっともらしいだろと勇者らしからんことが平気で出て来るもんだから呆れ顔が思わず出てくるじゃないかと自分にヒヤヒヤしたものだった。
それから店主が俺をこれからの冒険者のニーズに沿った刀剣とはどうゆうものなのかを自分の感性で感じて掴んでこいというぺーぺーには無茶なんじゃないかという目的でクラウスに1日でも多く見学させてくれないかと頼んでくれた。クラウスは快諾してくれてみたいだけみるといいよと冒険に同伴することを許してもらえた。

「じゃあ、今日は他にも予定があるからこれで失礼するよ。明日もここに来るから君は朝にここにきたらいいから。」
「はい、オモクソ勉強させていただきます。」俺はヤケクソで頭を下げた。なんで頭下げなきゃいけないんだよくそがよ。
ああ、と返事を返すなりクラウス一行は魔術師と思われる仲間の魔法陣に入ると一瞬のうちに消えてしまった。転移魔法まであるとは、異世界だなぁ、おい。
「さて、出来ることはしたつもりだ。あとはお前の腕次第だ、トム。真面目な話、俺たちはあいつに頼りきりの生活で今が成り立っているが、人はいずれ死ぬんだ。あいつも例外じゃないと思ってる。俺たちは俺たちに出来る生活を営まなくてはならないということも。でもあいつにかなう奴なんて俺たちの中には居ないし、こんな小国で要になっているあいつに敵意を向ければ他の国民が黙ってないんだ。」
話しているうちに店主のおっさんはなんだか老けていくようで本当はまいっているんだなとおもった。電子レンジもカブも電気も便利なことこの上ないだろう。けど、それを1人の存在で左右される不安定さに日々を過ごす人々はどうだろうか。
俺ならすごいストレス溜まるし、どうにかなってしまいそうだ。代償は奴だけではなく、使っている奴らにも払わされているんだ。やるししかないだろ、仕事だしな。
「やってやりますよ、俺の剛腕でさ」
俺は腕まくりをして細い腕をペシペシと叩いた。
店主に鼻で笑われたけど、ハッタリいうよりマシな顔になったんでよしとした。
これから先が俺と奴の戦いなんだ、ホントに命がけの戦いが始まるんだと思うと心の底から震えた。
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