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第二章 破廉恥な関係
第08話 迷って進める関係(下)
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「それって、本当に前回と同じことを期待して準備してた……ってことですよね」
二日前のカフェでは、とても言いづらそうだったのに。今だって躊躇しているようで、決して積極的なわけではないのに。しかし、ちゃっかり事前にシャワーを浴びて準備をしているあたり、謙志はよほどえっちな行為をしたかったのだろう。それもほかの誰かとではなく、桃音と。
「ふふっ……かわいいなあ、松浦先輩」
桃音は自分の中で、カチッ、と何かのスイッチが入るのを感じた。
恥ずかしくてためらい、尻込みしながらも桃音との恥ずかしい行為を待ち望む謙志は、なんてかわいいんだろうか。
表情が少なくて堅物な見た目でありながら、しかし忠犬よろしく与えられるのをじっといい子で待っている。素直に、とても能動的に誘うことはできないものの、もじもじと桃音を欲しがっている。
内に秘めたその欲望を自分で持て余しているような謙志のことが、桃音はとにかくかわいく思えて仕方がなかった。
「今日も……かわいがってあげますね」
桃音は膝立ちをすると、謙志の頬を両手で包んだ。そしてまずはそのひたいにちゅ、とキスをする。それから、彼の両頬をやさしくなでさすったあとに、その手を両耳へと持っていき、耳たぶや耳輪などを指の腹で挟んで軽く潰すようにマッサージをする。すると桃音のその手の動きが気持ちよかったのか、謙志は桃音に身を任せるようにそっと目を閉じた。
「いい子ですね、松浦先輩」
そうしておとなしくしている謙志に、桃音はやわらかく笑いかけた。
それから始まったふれ合いは、先日よりも官能的だった。謙志も桃音も前回より積極的で、互いの身体の熱を、感触を、無我夢中で求めた。
夢に思えるような、しかし現実の感覚すべてをひどく淫らに刺激するような時間が過ぎて、二人はベッドの上で横になった。どちらも何も言わないまま、時間がゆっくりと過ぎていく。
謙志も桃音も、あれこれと考えて何かを言おうとはしてみるものの、喉が施錠されてしまったように何も言えない。
そうしてしばらく無音の空気が流れていたが、先に動いたのは謙志だった。
謙志の腕を抱き込んでいる桃音の頬に左手を伸ばし、謙志は指の腹で恐る恐る桃音の頬をなでる。太ももと同じようにふっくらとしていて、すべすべとした感触が気持ちよくて、謙志の胸の中にはほっこりとした心地が広がった。
「ありがとう」
「えっ?」
「いや……勉強しなきゃいけないだろうに……今日、来てくれて……」
謙志は低い声で呟いた。
正確には、この部屋に桃音が来てくれたことだけではない。またしたいと望んでいた破廉恥な行為を桃音がしてくれて――しかもそれは前回よりももっといやらしくて、おまけに自分だけでなく桃音も達してくれて、正直とても嬉しかった。謙志自身はほとんど何もしていないが、自分だけでなく桃音も気持ちよくなってくれたのなら、それはとても嬉しいことだ。
「はい……」
否定するのもなんだか変だと思ったので、桃音は一言頷いた。
謙志が嫌がるんじゃないか、謙志に幻滅されてしまうのではないか――何をするにしても、そんな不安が桃音の中で渦巻く。
しかし謙志は嫌がることなど一切なく、桃音の言うことに従ってくれた。おとなしく、桃音の好きにされていた。桃音はそのことを嬉しく思った。
「次、は……」
「ん……?」
「来週は、たぶん、その……月のあれが……くると思うので……」
「え、ああ……うん」
「でも……その次の週は……また、ここに来られると……思います」
桃音は謙志の顔を見ることができず、謙志の硬い二の腕をじっと見つめながら恥ずかしそうに小声で告げた。
「勉強は……ほかの時間で頑張りますから……大丈夫……です」
「そうか」
「はい」
「じゃあ……また……来てほしい」
謙志は手のひら全体で桃音の頬を覆った。小柄な桃音の顔は小さく、謙志の片手で簡単に覆い尽くすことができてしまいそうだ。
(違う、本当は……)
目を閉じる桃音の表情をうかがいながら、謙志ははがゆく思った。
二日前、将樹の計らいで半ば強制的に桃音と話をした時もそうだったが、本当に言いたいのはこんなことじゃない。桃音にこうして来てもらって卑猥な行為をしたいという欲求はたしかにあるが、そもそもその欲求の根底に抱いているのは、桃音を好きだという気持ちだ。
それを言わなければならないのに、どうしても怖気づいて言えない。こんな、まるで桃音を都合のいい性欲解消相手扱いするようなことは、本意ではないのに。きちんと恋人になって、そのうえで思う存分にいちゃつきたいのに。桃音がその関係を承諾してくれるかどうか、どうしても自信がなくて言えない。
桃音が何を考えているのかはわからない。けれども、こうしてここへ来てくれる。月経が終わったあとにも、また来てくれると言う。謙志はそんな桃音の申し出に、情けなくも甘えることしかできなかった。
◆◇◆◇◆
二日前のカフェでは、とても言いづらそうだったのに。今だって躊躇しているようで、決して積極的なわけではないのに。しかし、ちゃっかり事前にシャワーを浴びて準備をしているあたり、謙志はよほどえっちな行為をしたかったのだろう。それもほかの誰かとではなく、桃音と。
「ふふっ……かわいいなあ、松浦先輩」
桃音は自分の中で、カチッ、と何かのスイッチが入るのを感じた。
恥ずかしくてためらい、尻込みしながらも桃音との恥ずかしい行為を待ち望む謙志は、なんてかわいいんだろうか。
表情が少なくて堅物な見た目でありながら、しかし忠犬よろしく与えられるのをじっといい子で待っている。素直に、とても能動的に誘うことはできないものの、もじもじと桃音を欲しがっている。
内に秘めたその欲望を自分で持て余しているような謙志のことが、桃音はとにかくかわいく思えて仕方がなかった。
「今日も……かわいがってあげますね」
桃音は膝立ちをすると、謙志の頬を両手で包んだ。そしてまずはそのひたいにちゅ、とキスをする。それから、彼の両頬をやさしくなでさすったあとに、その手を両耳へと持っていき、耳たぶや耳輪などを指の腹で挟んで軽く潰すようにマッサージをする。すると桃音のその手の動きが気持ちよかったのか、謙志は桃音に身を任せるようにそっと目を閉じた。
「いい子ですね、松浦先輩」
そうしておとなしくしている謙志に、桃音はやわらかく笑いかけた。
それから始まったふれ合いは、先日よりも官能的だった。謙志も桃音も前回より積極的で、互いの身体の熱を、感触を、無我夢中で求めた。
夢に思えるような、しかし現実の感覚すべてをひどく淫らに刺激するような時間が過ぎて、二人はベッドの上で横になった。どちらも何も言わないまま、時間がゆっくりと過ぎていく。
謙志も桃音も、あれこれと考えて何かを言おうとはしてみるものの、喉が施錠されてしまったように何も言えない。
そうしてしばらく無音の空気が流れていたが、先に動いたのは謙志だった。
謙志の腕を抱き込んでいる桃音の頬に左手を伸ばし、謙志は指の腹で恐る恐る桃音の頬をなでる。太ももと同じようにふっくらとしていて、すべすべとした感触が気持ちよくて、謙志の胸の中にはほっこりとした心地が広がった。
「ありがとう」
「えっ?」
「いや……勉強しなきゃいけないだろうに……今日、来てくれて……」
謙志は低い声で呟いた。
正確には、この部屋に桃音が来てくれたことだけではない。またしたいと望んでいた破廉恥な行為を桃音がしてくれて――しかもそれは前回よりももっといやらしくて、おまけに自分だけでなく桃音も達してくれて、正直とても嬉しかった。謙志自身はほとんど何もしていないが、自分だけでなく桃音も気持ちよくなってくれたのなら、それはとても嬉しいことだ。
「はい……」
否定するのもなんだか変だと思ったので、桃音は一言頷いた。
謙志が嫌がるんじゃないか、謙志に幻滅されてしまうのではないか――何をするにしても、そんな不安が桃音の中で渦巻く。
しかし謙志は嫌がることなど一切なく、桃音の言うことに従ってくれた。おとなしく、桃音の好きにされていた。桃音はそのことを嬉しく思った。
「次、は……」
「ん……?」
「来週は、たぶん、その……月のあれが……くると思うので……」
「え、ああ……うん」
「でも……その次の週は……また、ここに来られると……思います」
桃音は謙志の顔を見ることができず、謙志の硬い二の腕をじっと見つめながら恥ずかしそうに小声で告げた。
「勉強は……ほかの時間で頑張りますから……大丈夫……です」
「そうか」
「はい」
「じゃあ……また……来てほしい」
謙志は手のひら全体で桃音の頬を覆った。小柄な桃音の顔は小さく、謙志の片手で簡単に覆い尽くすことができてしまいそうだ。
(違う、本当は……)
目を閉じる桃音の表情をうかがいながら、謙志ははがゆく思った。
二日前、将樹の計らいで半ば強制的に桃音と話をした時もそうだったが、本当に言いたいのはこんなことじゃない。桃音にこうして来てもらって卑猥な行為をしたいという欲求はたしかにあるが、そもそもその欲求の根底に抱いているのは、桃音を好きだという気持ちだ。
それを言わなければならないのに、どうしても怖気づいて言えない。こんな、まるで桃音を都合のいい性欲解消相手扱いするようなことは、本意ではないのに。きちんと恋人になって、そのうえで思う存分にいちゃつきたいのに。桃音がその関係を承諾してくれるかどうか、どうしても自信がなくて言えない。
桃音が何を考えているのかはわからない。けれども、こうしてここへ来てくれる。月経が終わったあとにも、また来てくれると言う。謙志はそんな桃音の申し出に、情けなくも甘えることしかできなかった。
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