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第三章 儚い星空
第13話 出かけて縮める距離(中)
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「ほとんど使われていないものだと新品同様だから、中古にしては少し値が張るけど……それでも、新品よりは安いと思う」
「一番のお勧めは、新歓合宿で貸してくださったこの種類ですか?」
「そうだな……防寒って点なら、これが一番いいと思う。かさばるデメリットもあるから、もう少し薄いものでもいいかもしれないけど」
そこで謙志は言葉を止めて、じっと桃音を見下ろした。
男の自分と違って薄く細い身体の桃音は、寒さに強そうには決して見えない。生地が分厚いのでかさばるデメリットはあるが、それを呑み込んででも、一番防寒力の高いアウターウエアを買ってほしいと思った。
「あの……松浦先輩とおそろいになってしまいますが……いいですか」
その時、自分にサイズが合うものを手に取りながら、桃音はおずおずと謙志を見上げた。桃音の気にしていることがよくわからなかったが、謙志はとりあえず返事をする。
「別に大丈夫だと思うけど……。スポーツをやってれば、いいアイテムはみんなこぞって買うから、誰かとかぶるなんてしょっちゅうだし」
「そうなんですね」
桃音は相槌を打つと、念のために、近くにある別のメーカーのウィンドブレーカーなども見てみた。どれも軽くてかさばりはしなさそうだったが、謙志が勧めてくれたものが一番暖かそうで、値段もそこまで高くはなく状態もよかったので、桃音はそれを買うことにした。
「あとは……えーっと……天体観測用のライトも見てみるか? 小さいのなら高くないし、一つくらい持っていると便利だと思う」
アウターウエアを手に持った桃音に、謙志は尋ねた。
桃音は所持金に余裕があるわけではないだろうから、あまりあれこれと買わせるのはよくない。そう思ったのだが、せっかくの合宿なので、持っていると便利なものは持たせてやりたいと思った。
「はい」
桃音が頷いたので、謙志はライト売り場を探してそちらに向かう。アウターほど品数はなかったが、それほど大きくはない、手頃なサイズの天体観測用ライトがいくつかあった。
「望遠鏡は無理でも、双眼鏡くらいあるともっと楽しめるけど……それは個人で持っていなくてもいいと思う。少し古いけど、部費で買ったものを上級生が持っていくと思うから、借りることもできるし」
「すごいですね。新歓合宿もそうですけど、一年生は言われたとおりにするだけでした。でも三年の先輩方が、前々から宿泊手続きやそうした荷物の準備をしてくださっているんですよね」
「そうだな。会長も代々三年生がなるし、サークル運営の中心は三年生だな。四年生は就活があって、卒業に必要な単位分の講義しか履修していないと、ほとんど大学にも来なくなるから」
「それは……少し、もったいない気がします」
「舟形は学びたくて大学に来てるんだもんな。就活がどうなるかわからないけど、四年次でもとれる講義はとって大丈夫だぞ。俺もたぶん、三年の後期も来年も、まだ結構な数の講義をとるつもりだ。だから、サークルのことは正直、同学年のほかの奴らに頼ってる」
(でも……)
そうは言いつつも、謙志はこうしてサークルの後輩の桃音の買い出しに付き合ってくれている。部室にも顔を出すし、新歓コンパでも裏方として立ち回ってくれていたし、謙志なりにサークルには貢献していると、桃音はそう思った。
そんな話をしつつ、桃音はアウターウエアと観測用ライトを持ってレジに向かった。新歓合宿では、結美と一緒に「もっと大きなレジャーシートにすればよかった」と言っていたが、それはワンコインショップなどでも十分探せそうな気がしたので、今日は見ないことにした。
「あとは……まあ、そうだな。暖かいインナーとか靴下とか、そういう細かいものを用意すれば、夏合宿は大丈夫だと思う。二月の冬合宿は、もうちょっと本格的に準備しないとちょっと厳しいけど」
「はい。次はもう少ししっかり、防寒を重視して準備します」
中古用品店を出て、桃音は頷いた。
夏とはいえ、夜は冷える。それもこうした都会ではなく高い山の上ともなれば、なおさらだ。楽しく星空観察をするためにも、前回の反省を踏まえてできる準備は万全にしようと、桃音は心に決めた。
「じゃあ、買うべきものはこれで終わり……だけど……」
歩道の端に寄って、謙志は手持ち無沙汰な手を首に置く。
夏合宿のためにアウターを買うという、一番の目的は達成されてしまった。しかし時間はまだ昼と夕方の間くらいで、これで解散にしてしまうのは味気ない。とはいえ、デートだと思って来ている自分と違って、桃音はただの買い出しだと思っているかもしれない。もしそうなら、用事が済んだいま、さっさと解放されたいと思っているだろうから、さくっと解散したほうがいいだろうか。
そう思って謙志はちらっと桃音に視線を向けたが、桃音はまったく別の方向をじっと見ていた。そして、その視線をぱっと謙志に向けて、遠慮がちに謙志を誘った。
「あの……あそこ……クレープ屋さんがあって……」
「え、ああ……食べたいのか? 行くか」
「はい」
桃音は頷くと、謙志と共に横断歩道を渡り、しばらく歩道を歩いてクレープ屋に近付く。そこは細い路地を挟んで小さな露店がいくつか集まっているエリアで、クレープのほかにタコ焼きやワッフル、肉まんを売っている露店もあった。
「あ……クレープ以外もたくさんあるんですね」
「別のにするか?」
「えっと……松浦先輩はどれがいいですか?」
「え、俺?」
「はい……あの……お昼ご飯、パスタだけじゃ足りなかったんじゃないかと思って」
「あ……それは……えっと……」
桃音が言いづらそうにそう呟くと、謙志の思考は一瞬停止した。
パスタなら多くの女子が好きだろうと思って無難にパスタ屋を選んだが、実はパスタ一皿は、謙志にとっては物足りなかった。もっと食べたいと思ったが買い物もあるし、女子とのデートでがっつくのはなんだかみっともない気がして、我慢していたのだ。
「ふふっ……当たりですか?」
「いや、まあ……その……」
「私、あっちのミニワッフルを買ってきます。松浦先輩も好きなものを好きなだけ買ってきて、ベンチがあるので座って食べながら休憩しませんか」
桃音がそう言って笑顔で提案するので、謙志は「そうするか」と言って頷いた。そして、ワッフル屋に向かう桃音の背中をちらりと見送ってから、獲物を探すような目つきで露店を見比べた。なるべく腹に溜まりそうなものを、ということで、ネギ塩ポン酢のタコ焼き六個入と、白いプラスチックの容器に入ったミニカレーを買って、先に座っていた桃音の隣に腰を下ろす。
「何にしたんですか?」
「たこ焼きとカレー……」
「カレー……そういえば、陸上競技場に近い……えっと、八号館でしたっけ? そっちにも食堂があるんですよね。少し小さいですけど」
「ああ。カレーはそっちのほうが美味いと思う。なぜかはわからないけど」
ひとまずたこ焼きの入った箱を横に置き、謙志はカレーをプラスチックのスプーンですくった。それほど量はないが、少し辛めのルーとやわらかな鶏肉が美味しく、白米と一緒に夢中で口に運んだ。それからたこ焼きを割り箸で持ち上げて、火傷をしないように気を付けながらそちらも完食する。そうすると、空腹を訴えていた謙志の腹はようやく満足したようだった。
「松浦先輩、唇に青のりがついちゃってます」
「えっ」
「はい、鏡をどうぞ」
ミニワッフルを食べ終わっていた桃音は、バッグの中からコンパクトミラーを取り出すと、それを謙志に渡して前を向く。その間に謙志は鏡で唇や歯の隙間を確認して汚れを取り、斜め掛けのショルダーバッグの中からペットボトルの水を取り出してごくりと飲み込んだ。
「ありがとう」
「どういたしまして」
桃音は謙志から鏡を受け取り、それをバッグに戻す。
それからおもむろに、謙志に尋ねた。
「一人暮らしは……寂しくないですか」
「え?」
「あ、えっと……私はずっと実家暮らしで……いまだにお姉ちゃんと同じ部屋で二段ベッドなので、一人での暮らしが想像できなくて」
「そう……だな。まあ……さすがに最初は寂しく思ったかな」
謙志は少し遠くを見やった。
「俺の実家は、自分で言うのもなんだけどまあ……祖父も父も士業をしていてわりと裕福なほうで、父方の祖父母と両親と弟の六人家族で……近所にも親戚がいた。高校が違っても隣近所のダチとはよく遊んでたし、知らない人のほうが少なかった。だからまあ、進学と同時に首都特区に上京してきて、あの部屋で一人暮らしを始めた頃は、あまりにも静かで少し……怖いとさえ思ったかな」
「松浦先輩でも、何かを怖がることがあるんですね。意外です」
「今は平気だからな?」
桃音に落胆されたくないと思って、謙志は「今は」の部分を強調した。
「真面目に勉学に打ち込むことを条件に、あのマンションの家賃は父親が出してくれてる。だからしっかり勉強したいとは思っていたけど……プロの世界は本当にすごくて、自分がそこでやっていけるのか、正直まったく自信がないんだ。俺は野球経験者でもないし……」
数日前の見学を思い出して、謙志は少し俯いた。
当たり前と言えば当たり前なのだが、今の自分には、まだまだ足りないものが多い。
見学の最終日、盛岡コーチからこんなことを尋ねられた。「バットの持ち方を変えたおかげで、ヒット数が格段に増えた選手がいる。球団としても喜ばしいし、本人も喜んでいた。だが、バットを寝かせるその持ち方はデメリットもあって、ストレートにも変化球にも対応できる代わりに、飛距離が出せないんだ。つまり、ヒットは打てるけどホームランは打てない。でも、本人はただのヒッターで終わるつもりはない。そのヒット数を維持しつつ、ホームランも打てるようになりたいと考えている。さあ、どう指導する?」と。
バットの持ち方を変えて、増えたヒット数。しかし、それでは打てないホームラン。けれども、ホームランを打てるようになりたい選手。その希望を叶えるためには何をすべきなのか。どこに改善点があるのか。打開策はあるのか。コーチとして、トレーナーとして、そんな選手にどんな練習方法を提案できるのか。
「一番のお勧めは、新歓合宿で貸してくださったこの種類ですか?」
「そうだな……防寒って点なら、これが一番いいと思う。かさばるデメリットもあるから、もう少し薄いものでもいいかもしれないけど」
そこで謙志は言葉を止めて、じっと桃音を見下ろした。
男の自分と違って薄く細い身体の桃音は、寒さに強そうには決して見えない。生地が分厚いのでかさばるデメリットはあるが、それを呑み込んででも、一番防寒力の高いアウターウエアを買ってほしいと思った。
「あの……松浦先輩とおそろいになってしまいますが……いいですか」
その時、自分にサイズが合うものを手に取りながら、桃音はおずおずと謙志を見上げた。桃音の気にしていることがよくわからなかったが、謙志はとりあえず返事をする。
「別に大丈夫だと思うけど……。スポーツをやってれば、いいアイテムはみんなこぞって買うから、誰かとかぶるなんてしょっちゅうだし」
「そうなんですね」
桃音は相槌を打つと、念のために、近くにある別のメーカーのウィンドブレーカーなども見てみた。どれも軽くてかさばりはしなさそうだったが、謙志が勧めてくれたものが一番暖かそうで、値段もそこまで高くはなく状態もよかったので、桃音はそれを買うことにした。
「あとは……えーっと……天体観測用のライトも見てみるか? 小さいのなら高くないし、一つくらい持っていると便利だと思う」
アウターウエアを手に持った桃音に、謙志は尋ねた。
桃音は所持金に余裕があるわけではないだろうから、あまりあれこれと買わせるのはよくない。そう思ったのだが、せっかくの合宿なので、持っていると便利なものは持たせてやりたいと思った。
「はい」
桃音が頷いたので、謙志はライト売り場を探してそちらに向かう。アウターほど品数はなかったが、それほど大きくはない、手頃なサイズの天体観測用ライトがいくつかあった。
「望遠鏡は無理でも、双眼鏡くらいあるともっと楽しめるけど……それは個人で持っていなくてもいいと思う。少し古いけど、部費で買ったものを上級生が持っていくと思うから、借りることもできるし」
「すごいですね。新歓合宿もそうですけど、一年生は言われたとおりにするだけでした。でも三年の先輩方が、前々から宿泊手続きやそうした荷物の準備をしてくださっているんですよね」
「そうだな。会長も代々三年生がなるし、サークル運営の中心は三年生だな。四年生は就活があって、卒業に必要な単位分の講義しか履修していないと、ほとんど大学にも来なくなるから」
「それは……少し、もったいない気がします」
「舟形は学びたくて大学に来てるんだもんな。就活がどうなるかわからないけど、四年次でもとれる講義はとって大丈夫だぞ。俺もたぶん、三年の後期も来年も、まだ結構な数の講義をとるつもりだ。だから、サークルのことは正直、同学年のほかの奴らに頼ってる」
(でも……)
そうは言いつつも、謙志はこうしてサークルの後輩の桃音の買い出しに付き合ってくれている。部室にも顔を出すし、新歓コンパでも裏方として立ち回ってくれていたし、謙志なりにサークルには貢献していると、桃音はそう思った。
そんな話をしつつ、桃音はアウターウエアと観測用ライトを持ってレジに向かった。新歓合宿では、結美と一緒に「もっと大きなレジャーシートにすればよかった」と言っていたが、それはワンコインショップなどでも十分探せそうな気がしたので、今日は見ないことにした。
「あとは……まあ、そうだな。暖かいインナーとか靴下とか、そういう細かいものを用意すれば、夏合宿は大丈夫だと思う。二月の冬合宿は、もうちょっと本格的に準備しないとちょっと厳しいけど」
「はい。次はもう少ししっかり、防寒を重視して準備します」
中古用品店を出て、桃音は頷いた。
夏とはいえ、夜は冷える。それもこうした都会ではなく高い山の上ともなれば、なおさらだ。楽しく星空観察をするためにも、前回の反省を踏まえてできる準備は万全にしようと、桃音は心に決めた。
「じゃあ、買うべきものはこれで終わり……だけど……」
歩道の端に寄って、謙志は手持ち無沙汰な手を首に置く。
夏合宿のためにアウターを買うという、一番の目的は達成されてしまった。しかし時間はまだ昼と夕方の間くらいで、これで解散にしてしまうのは味気ない。とはいえ、デートだと思って来ている自分と違って、桃音はただの買い出しだと思っているかもしれない。もしそうなら、用事が済んだいま、さっさと解放されたいと思っているだろうから、さくっと解散したほうがいいだろうか。
そう思って謙志はちらっと桃音に視線を向けたが、桃音はまったく別の方向をじっと見ていた。そして、その視線をぱっと謙志に向けて、遠慮がちに謙志を誘った。
「あの……あそこ……クレープ屋さんがあって……」
「え、ああ……食べたいのか? 行くか」
「はい」
桃音は頷くと、謙志と共に横断歩道を渡り、しばらく歩道を歩いてクレープ屋に近付く。そこは細い路地を挟んで小さな露店がいくつか集まっているエリアで、クレープのほかにタコ焼きやワッフル、肉まんを売っている露店もあった。
「あ……クレープ以外もたくさんあるんですね」
「別のにするか?」
「えっと……松浦先輩はどれがいいですか?」
「え、俺?」
「はい……あの……お昼ご飯、パスタだけじゃ足りなかったんじゃないかと思って」
「あ……それは……えっと……」
桃音が言いづらそうにそう呟くと、謙志の思考は一瞬停止した。
パスタなら多くの女子が好きだろうと思って無難にパスタ屋を選んだが、実はパスタ一皿は、謙志にとっては物足りなかった。もっと食べたいと思ったが買い物もあるし、女子とのデートでがっつくのはなんだかみっともない気がして、我慢していたのだ。
「ふふっ……当たりですか?」
「いや、まあ……その……」
「私、あっちのミニワッフルを買ってきます。松浦先輩も好きなものを好きなだけ買ってきて、ベンチがあるので座って食べながら休憩しませんか」
桃音がそう言って笑顔で提案するので、謙志は「そうするか」と言って頷いた。そして、ワッフル屋に向かう桃音の背中をちらりと見送ってから、獲物を探すような目つきで露店を見比べた。なるべく腹に溜まりそうなものを、ということで、ネギ塩ポン酢のタコ焼き六個入と、白いプラスチックの容器に入ったミニカレーを買って、先に座っていた桃音の隣に腰を下ろす。
「何にしたんですか?」
「たこ焼きとカレー……」
「カレー……そういえば、陸上競技場に近い……えっと、八号館でしたっけ? そっちにも食堂があるんですよね。少し小さいですけど」
「ああ。カレーはそっちのほうが美味いと思う。なぜかはわからないけど」
ひとまずたこ焼きの入った箱を横に置き、謙志はカレーをプラスチックのスプーンですくった。それほど量はないが、少し辛めのルーとやわらかな鶏肉が美味しく、白米と一緒に夢中で口に運んだ。それからたこ焼きを割り箸で持ち上げて、火傷をしないように気を付けながらそちらも完食する。そうすると、空腹を訴えていた謙志の腹はようやく満足したようだった。
「松浦先輩、唇に青のりがついちゃってます」
「えっ」
「はい、鏡をどうぞ」
ミニワッフルを食べ終わっていた桃音は、バッグの中からコンパクトミラーを取り出すと、それを謙志に渡して前を向く。その間に謙志は鏡で唇や歯の隙間を確認して汚れを取り、斜め掛けのショルダーバッグの中からペットボトルの水を取り出してごくりと飲み込んだ。
「ありがとう」
「どういたしまして」
桃音は謙志から鏡を受け取り、それをバッグに戻す。
それからおもむろに、謙志に尋ねた。
「一人暮らしは……寂しくないですか」
「え?」
「あ、えっと……私はずっと実家暮らしで……いまだにお姉ちゃんと同じ部屋で二段ベッドなので、一人での暮らしが想像できなくて」
「そう……だな。まあ……さすがに最初は寂しく思ったかな」
謙志は少し遠くを見やった。
「俺の実家は、自分で言うのもなんだけどまあ……祖父も父も士業をしていてわりと裕福なほうで、父方の祖父母と両親と弟の六人家族で……近所にも親戚がいた。高校が違っても隣近所のダチとはよく遊んでたし、知らない人のほうが少なかった。だからまあ、進学と同時に首都特区に上京してきて、あの部屋で一人暮らしを始めた頃は、あまりにも静かで少し……怖いとさえ思ったかな」
「松浦先輩でも、何かを怖がることがあるんですね。意外です」
「今は平気だからな?」
桃音に落胆されたくないと思って、謙志は「今は」の部分を強調した。
「真面目に勉学に打ち込むことを条件に、あのマンションの家賃は父親が出してくれてる。だからしっかり勉強したいとは思っていたけど……プロの世界は本当にすごくて、自分がそこでやっていけるのか、正直まったく自信がないんだ。俺は野球経験者でもないし……」
数日前の見学を思い出して、謙志は少し俯いた。
当たり前と言えば当たり前なのだが、今の自分には、まだまだ足りないものが多い。
見学の最終日、盛岡コーチからこんなことを尋ねられた。「バットの持ち方を変えたおかげで、ヒット数が格段に増えた選手がいる。球団としても喜ばしいし、本人も喜んでいた。だが、バットを寝かせるその持ち方はデメリットもあって、ストレートにも変化球にも対応できる代わりに、飛距離が出せないんだ。つまり、ヒットは打てるけどホームランは打てない。でも、本人はただのヒッターで終わるつもりはない。そのヒット数を維持しつつ、ホームランも打てるようになりたいと考えている。さあ、どう指導する?」と。
バットの持ち方を変えて、増えたヒット数。しかし、それでは打てないホームラン。けれども、ホームランを打てるようになりたい選手。その希望を叶えるためには何をすべきなのか。どこに改善点があるのか。打開策はあるのか。コーチとして、トレーナーとして、そんな選手にどんな練習方法を提案できるのか。
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