3 / 67
序章
第01話 予想外(下)
しおりを挟む
「そっ、そういうティルはどうなのよ! 順番としてはあなたがきっと最後に結婚するでしょうけど、他国に嫁がされても平気なの!?」
ベアトリーチェは話の矛先をティルフィーユに変えてそう尋ねた。ティルフィーユもしばらく黙り込んだが、よくよく考えたうえでゆっくりと答えた。
「女性でありながらもこの大国を見事に率いるお母様のことを、私は本当に尊敬しているの。自分に同じことができるとは思わないけれど、私の結婚が少しでも宗家と、何よりグントバハロンという国と民の支えになるのであれば、他国の殿方と結婚する覚悟はしているわ」
「それって、宗家と国のために犠牲になるってことじゃない! ティル、本当にそんな人生でいいの!?」
ベアトリーチェはカッと目を見開き、前のめりの姿勢でティルフィーユに尋ねた。しかしティルフィーユは穏やかにほほ笑む。
「犠牲だなんて、そうは思わないわ。自分に果たせる役目が……務めがある。それは誇らしいことだと思うの」
「嫌よ! 嫌ッ! ティル、もっと自分を大事にしてちょうだい! 他国の殿方と結婚する覚悟なんて要らないわよ! 結婚なんてしないで、いつまでもこうして私の話を聞いてよ! 私の一番の理解者はティルなんだから!」
長女と次女は三歳差だが、次女と三女のベアトリーチェは十三も年が離れている。そのため、姉妹といってもベアトリーチェにとって気軽に話せる姉妹はふたつ下のティルフィーユなのだ。少々内気で口下手なティルフィーユは自分から多くを話すことを得意としない代わりに、どんなにベアトリーチェが金切り声で愚痴を吐き出そうとも辛抱強く聞き役に徹してくれる。ベアトリーチェが男性に対して恐怖して感情がたかぶっても、ティルフィーユが我慢強く愚痴を受け止めてくれるおかげで、ベアトリーチェはどうにか心に平穏を取り戻せるのだ。
「でも、リチェお姉様……」
「お願い! 私はまだ結婚したくないし、ティルにも結婚してほしくない……いつまでも姉妹で一緒にいたいわ」
悲壮感に満ちたベアトリーチェに、ティルフィーユはかける言葉が見つからなかった。
◆◇◆◇◆
「えっ……お母様、いまなんと?」
それからしばらく経ったある日のこと。
宗家であろうが全国民が何かしらの労働をする義務があるグントバハロンなので、宗家の末姫であるティルフィーユも、いつも通り出勤して仕事をしていた。しかし職場に同父兄のジェラルドが現れ、「責任者に話はつけたから今日はもう退勤だ。急いで当主のもとへ行くよ」と言われた。そうしてジェラルドと共に当主の執務室に向かうと、先に来ていたベアトリーチェがすでにソファに座って、母と向き合っていた。
そして子供たち三人を呼びつけた母、グントバハロン宗家当主のマリアンジェラは二人の娘に告げたのだ。
「エヴァエロン共和国の騎士団長にはティルフィーユが嫁ぎなさい」
「私……私が?」
突然の指名に、ティルフィーユは驚きのあまり固まってしまった。それはベアトリーチェも同じだったが、ベアトリーチェはすぐに我に返り、噛みつくようにマリアンジェラに意見した。
「母上、どうしてティルなの!? そのお話、嫁ぐのは私じゃなかったの!?」
「あら、そんな予定はなくってよ? 〝宗家の姫〟を嫁がせる方向で調整はしていたけれど、ベアトリーチェとティルフィーユのどちらを嫁がせるか、決めたのは今日よ」
「嘘……」
確かに、「ベアトリーチェを嫁がせる予定だ」と、これまでにマリアンジェラが明確に言ったことはなかった。しかし長女と次女はすでに嫁いでいるため、順番的に未婚で三女の自分が嫁がされるのだと、ベアトリーチェはそう思い込んでいた。それはティルフィーユも同じで、ベアトリーチェは激しく拒絶しているが結果的には三女のベアトリーチェが嫁ぐことになるのだろうと、疑いもしなかった。
「どうしてあなたが落胆するの? ベアトリーチェは結婚の話も、相手が新興国の騎士団の団長だってことも、嫌がっていたじゃない。むしろ自分じゃないと知って喜ぶかと思ったわ?」
マリアンジェラが静かな声で、しかし的確にベアトリーチェの本音を指摘する。
「どうして、って……だって……」
「あなたは男性全般が苦手だから全部悪い方向に見えてしまうのでしょうけれど、ダミアレア族は悪い人たちじゃないわ。確かに、少し特殊な生き方をしている一族ではあるけれどね。それにエヴァエロン共和国も、そこの騎士団団長の座に就いたミリ族の新しい族長も、悪人ではない。ジャノオン王国をクーデターで倒したのは事実だけれど、その汚点を背負ってなお、あの地に住まう民の生活を良くしたいと願う善良な為政者たちよ。かわいい娘の嫁ぎ先として、決して悪くはない。そう判断したの。そして、ベアトリーチェじゃなくてティルフィーユに嫁いでもらいたいわ」
当主である母が決定した事柄は、基本的に覆らない。だからこれは、ティルフィーユの意思など関係なく決定事項だ。しかし、当主ではなく母としての情をわずかに見せながら、マリアンジェラはティルフィーユの顔色をうかがった。
「はい、お母様。お母様がお決めになったのなら、従います」
「ティル、なんでよ! あんな怖い人のところに嫁がなくてもいいじゃない!」
「リチェお姉様、いいの。驚いたけれど、エヴァエロン共和国には私が行くわ。リチェお姉様を寂しくさせてしまうけれど……私はきっと大丈夫よ」
「ティル……っ」
ベアトリーチェは隣に座っているティルフィーユの両手を取ると、力強く握った。何かを言いたいが、しかし宗家当主の母に逆らうことは誰もできない。
「輿入れは来年の春の予定よ。必要な準備や調整はジェラルドに一任したわ。ティルフィーユは輿入れまでのスケジュールを最優先にして、仕事を控えなさい」
「はい、わかりました」
「ジェラルド、あとはお願いね」
「はい」
マリアンジェラがそう言うと、誕生日席のソファに座っていたジェラルドはティルフィーユとよく似た穏やかな微笑で頷いた。
それからしばらく、ベアトリーチェは暇を見つけてはティルフィーユをつかまえて、「今からでも嫌って言って婚約を破棄すればいいわ」と唆した。そのたびにティルフィーユは辛抱強く、ベアトリーチェに言い聞かせた。「お母様が決めたことは絶対よ。それに、私自身は嫌じゃないの」と。
しかしティルフィーユに嫁いでほしくないベアトリーチェは、何度も何度もティルフィーユに話した。先日ちらりと見ただけだが、相手は本当に背が高く、もしかしたら武家の中で最も大柄な一族と呼ばれるあのマンダール家の武人に匹敵するくらいかもしれないと。不愛想な表情は本当に怖かったし、小動物のように小柄で愛らしくておとなしいティルフィーユなんて簡単に踏みつけられてしまうかもしれない。あなたはおしゃべりが得意ではないけれど、それはきっと相手も同じで、必ず苦労する。あなたは姉上たちのように嫁ぎ先でも強い態度に出られるような性格じゃないし、幸せになんてなれないわ、と。一番の味方であり、癒しであり、かわいい妹であるティルフィーユの結婚を、ベアトリーチェは阻止したい一心だった。
だがそんなベアトリーチェを、ティルフィーユはやさしくなだめ続けた。その一方で長兄ジェラルドの指示のもと、輿入れ準備も着々と進めていった。
新婦は一国の姫とはいえ新郎は騎士団の団長にすぎないので、国として成立したばかりなこともあって、結婚式は国主催ではなく、あくまでも新郎側一族主催のそれほど華美なものにはならないとのことだった。それでも花嫁を送り出す側のグントバハロン宗家としては、ティルフィーユの結婚式での衣装や嫁ぎ先で必要な日用品などを可能な限り豪勢に用意した。けれどもひとつだけ、ティルフィーユ自身が断ったことがあった。
「ティル、本当に使用人は誰もつけなくていいのかい?」
「はい、ルドお兄様。エヴァエロン共和国には私一人で参ります」
ティルフィーユの輿入れに伴い、グントバハロンから数名の使用人を同行させることが検討された。しかし、長年の同盟国であったジャノオン王国を倒して興された新興の国ということで、エヴァエロン共和国を忌避する者の方が多いだろう。いくら宗家当主が信頼したとはいえ、エヴァエロン共和国の対外的な印象はまだまだ善良なものとは言えない。使用人たちがそうした心情を抱くことを考慮して、グントバハロンからエヴァエロン共和国へ共に居を移す使用人の帯同を、ティルフィーユは辞退したのだ。
「グントバハロンとのつながりを強化したい」と今回の婚姻を持ちかけてきたのはエヴァエロン共和国の方なので、ティルフィーユが万が一にも邪険にされることはないだろうが、しかしティルフィーユはまだ成人したてだ。誰一人知る者がいない環境で果たして上手く、時には狡猾に立ち回れるだろうか。婚姻の万事を取り仕切るジェラルドはティルフィーユ本人がそう言うのなら、と納得したが、兄としては心配が隠せなかった。
例年より少しだけ厳しい冬が始まり、年も変わる。結婚式に向けて、ティルフィーユは長いサックスブルーの髪の毛の手入れを怠らなかった。特注のウェディングドレスが着られない、なんてことにもならないように、食べすぎにも気を付ける。
近付く別れの日を恐れてか、ベアトリーチェは以前にもまして、ティルフィーユとのおしゃべりの時間を持ちたがった。その間も着々と婚姻の準備は進み、そして春をむかえた頃。ティルフィーユは祖国グントバハロンに別れを告げて、エヴァエロン共和国へ向かうのだった。
ベアトリーチェは話の矛先をティルフィーユに変えてそう尋ねた。ティルフィーユもしばらく黙り込んだが、よくよく考えたうえでゆっくりと答えた。
「女性でありながらもこの大国を見事に率いるお母様のことを、私は本当に尊敬しているの。自分に同じことができるとは思わないけれど、私の結婚が少しでも宗家と、何よりグントバハロンという国と民の支えになるのであれば、他国の殿方と結婚する覚悟はしているわ」
「それって、宗家と国のために犠牲になるってことじゃない! ティル、本当にそんな人生でいいの!?」
ベアトリーチェはカッと目を見開き、前のめりの姿勢でティルフィーユに尋ねた。しかしティルフィーユは穏やかにほほ笑む。
「犠牲だなんて、そうは思わないわ。自分に果たせる役目が……務めがある。それは誇らしいことだと思うの」
「嫌よ! 嫌ッ! ティル、もっと自分を大事にしてちょうだい! 他国の殿方と結婚する覚悟なんて要らないわよ! 結婚なんてしないで、いつまでもこうして私の話を聞いてよ! 私の一番の理解者はティルなんだから!」
長女と次女は三歳差だが、次女と三女のベアトリーチェは十三も年が離れている。そのため、姉妹といってもベアトリーチェにとって気軽に話せる姉妹はふたつ下のティルフィーユなのだ。少々内気で口下手なティルフィーユは自分から多くを話すことを得意としない代わりに、どんなにベアトリーチェが金切り声で愚痴を吐き出そうとも辛抱強く聞き役に徹してくれる。ベアトリーチェが男性に対して恐怖して感情がたかぶっても、ティルフィーユが我慢強く愚痴を受け止めてくれるおかげで、ベアトリーチェはどうにか心に平穏を取り戻せるのだ。
「でも、リチェお姉様……」
「お願い! 私はまだ結婚したくないし、ティルにも結婚してほしくない……いつまでも姉妹で一緒にいたいわ」
悲壮感に満ちたベアトリーチェに、ティルフィーユはかける言葉が見つからなかった。
◆◇◆◇◆
「えっ……お母様、いまなんと?」
それからしばらく経ったある日のこと。
宗家であろうが全国民が何かしらの労働をする義務があるグントバハロンなので、宗家の末姫であるティルフィーユも、いつも通り出勤して仕事をしていた。しかし職場に同父兄のジェラルドが現れ、「責任者に話はつけたから今日はもう退勤だ。急いで当主のもとへ行くよ」と言われた。そうしてジェラルドと共に当主の執務室に向かうと、先に来ていたベアトリーチェがすでにソファに座って、母と向き合っていた。
そして子供たち三人を呼びつけた母、グントバハロン宗家当主のマリアンジェラは二人の娘に告げたのだ。
「エヴァエロン共和国の騎士団長にはティルフィーユが嫁ぎなさい」
「私……私が?」
突然の指名に、ティルフィーユは驚きのあまり固まってしまった。それはベアトリーチェも同じだったが、ベアトリーチェはすぐに我に返り、噛みつくようにマリアンジェラに意見した。
「母上、どうしてティルなの!? そのお話、嫁ぐのは私じゃなかったの!?」
「あら、そんな予定はなくってよ? 〝宗家の姫〟を嫁がせる方向で調整はしていたけれど、ベアトリーチェとティルフィーユのどちらを嫁がせるか、決めたのは今日よ」
「嘘……」
確かに、「ベアトリーチェを嫁がせる予定だ」と、これまでにマリアンジェラが明確に言ったことはなかった。しかし長女と次女はすでに嫁いでいるため、順番的に未婚で三女の自分が嫁がされるのだと、ベアトリーチェはそう思い込んでいた。それはティルフィーユも同じで、ベアトリーチェは激しく拒絶しているが結果的には三女のベアトリーチェが嫁ぐことになるのだろうと、疑いもしなかった。
「どうしてあなたが落胆するの? ベアトリーチェは結婚の話も、相手が新興国の騎士団の団長だってことも、嫌がっていたじゃない。むしろ自分じゃないと知って喜ぶかと思ったわ?」
マリアンジェラが静かな声で、しかし的確にベアトリーチェの本音を指摘する。
「どうして、って……だって……」
「あなたは男性全般が苦手だから全部悪い方向に見えてしまうのでしょうけれど、ダミアレア族は悪い人たちじゃないわ。確かに、少し特殊な生き方をしている一族ではあるけれどね。それにエヴァエロン共和国も、そこの騎士団団長の座に就いたミリ族の新しい族長も、悪人ではない。ジャノオン王国をクーデターで倒したのは事実だけれど、その汚点を背負ってなお、あの地に住まう民の生活を良くしたいと願う善良な為政者たちよ。かわいい娘の嫁ぎ先として、決して悪くはない。そう判断したの。そして、ベアトリーチェじゃなくてティルフィーユに嫁いでもらいたいわ」
当主である母が決定した事柄は、基本的に覆らない。だからこれは、ティルフィーユの意思など関係なく決定事項だ。しかし、当主ではなく母としての情をわずかに見せながら、マリアンジェラはティルフィーユの顔色をうかがった。
「はい、お母様。お母様がお決めになったのなら、従います」
「ティル、なんでよ! あんな怖い人のところに嫁がなくてもいいじゃない!」
「リチェお姉様、いいの。驚いたけれど、エヴァエロン共和国には私が行くわ。リチェお姉様を寂しくさせてしまうけれど……私はきっと大丈夫よ」
「ティル……っ」
ベアトリーチェは隣に座っているティルフィーユの両手を取ると、力強く握った。何かを言いたいが、しかし宗家当主の母に逆らうことは誰もできない。
「輿入れは来年の春の予定よ。必要な準備や調整はジェラルドに一任したわ。ティルフィーユは輿入れまでのスケジュールを最優先にして、仕事を控えなさい」
「はい、わかりました」
「ジェラルド、あとはお願いね」
「はい」
マリアンジェラがそう言うと、誕生日席のソファに座っていたジェラルドはティルフィーユとよく似た穏やかな微笑で頷いた。
それからしばらく、ベアトリーチェは暇を見つけてはティルフィーユをつかまえて、「今からでも嫌って言って婚約を破棄すればいいわ」と唆した。そのたびにティルフィーユは辛抱強く、ベアトリーチェに言い聞かせた。「お母様が決めたことは絶対よ。それに、私自身は嫌じゃないの」と。
しかしティルフィーユに嫁いでほしくないベアトリーチェは、何度も何度もティルフィーユに話した。先日ちらりと見ただけだが、相手は本当に背が高く、もしかしたら武家の中で最も大柄な一族と呼ばれるあのマンダール家の武人に匹敵するくらいかもしれないと。不愛想な表情は本当に怖かったし、小動物のように小柄で愛らしくておとなしいティルフィーユなんて簡単に踏みつけられてしまうかもしれない。あなたはおしゃべりが得意ではないけれど、それはきっと相手も同じで、必ず苦労する。あなたは姉上たちのように嫁ぎ先でも強い態度に出られるような性格じゃないし、幸せになんてなれないわ、と。一番の味方であり、癒しであり、かわいい妹であるティルフィーユの結婚を、ベアトリーチェは阻止したい一心だった。
だがそんなベアトリーチェを、ティルフィーユはやさしくなだめ続けた。その一方で長兄ジェラルドの指示のもと、輿入れ準備も着々と進めていった。
新婦は一国の姫とはいえ新郎は騎士団の団長にすぎないので、国として成立したばかりなこともあって、結婚式は国主催ではなく、あくまでも新郎側一族主催のそれほど華美なものにはならないとのことだった。それでも花嫁を送り出す側のグントバハロン宗家としては、ティルフィーユの結婚式での衣装や嫁ぎ先で必要な日用品などを可能な限り豪勢に用意した。けれどもひとつだけ、ティルフィーユ自身が断ったことがあった。
「ティル、本当に使用人は誰もつけなくていいのかい?」
「はい、ルドお兄様。エヴァエロン共和国には私一人で参ります」
ティルフィーユの輿入れに伴い、グントバハロンから数名の使用人を同行させることが検討された。しかし、長年の同盟国であったジャノオン王国を倒して興された新興の国ということで、エヴァエロン共和国を忌避する者の方が多いだろう。いくら宗家当主が信頼したとはいえ、エヴァエロン共和国の対外的な印象はまだまだ善良なものとは言えない。使用人たちがそうした心情を抱くことを考慮して、グントバハロンからエヴァエロン共和国へ共に居を移す使用人の帯同を、ティルフィーユは辞退したのだ。
「グントバハロンとのつながりを強化したい」と今回の婚姻を持ちかけてきたのはエヴァエロン共和国の方なので、ティルフィーユが万が一にも邪険にされることはないだろうが、しかしティルフィーユはまだ成人したてだ。誰一人知る者がいない環境で果たして上手く、時には狡猾に立ち回れるだろうか。婚姻の万事を取り仕切るジェラルドはティルフィーユ本人がそう言うのなら、と納得したが、兄としては心配が隠せなかった。
例年より少しだけ厳しい冬が始まり、年も変わる。結婚式に向けて、ティルフィーユは長いサックスブルーの髪の毛の手入れを怠らなかった。特注のウェディングドレスが着られない、なんてことにもならないように、食べすぎにも気を付ける。
近付く別れの日を恐れてか、ベアトリーチェは以前にもまして、ティルフィーユとのおしゃべりの時間を持ちたがった。その間も着々と婚姻の準備は進み、そして春をむかえた頃。ティルフィーユは祖国グントバハロンに別れを告げて、エヴァエロン共和国へ向かうのだった。
0
あなたにおすすめの小説
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください
無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――
あなたのためなら
天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。
その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。
アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。
しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。
理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。
全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
【完結】この胸が痛むのは
Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」
彼がそう言ったので。
私は縁組をお受けすることにしました。
そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。
亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。
殿下と出会ったのは私が先でしたのに。
幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです……
姉が亡くなって7年。
政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが
『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。
亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……
*****
サイドストーリー
『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。
こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。
読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです
* 他サイトで公開しています。
どうぞよろしくお願い致します。
「好き」の距離
饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。
伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。
以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる