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第09話 歴解派操言士と空白の物語
2.認定審査(中)
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「アタシの波動は感じ取れたかしら」
「はい。大きくて、太い感じの波動でした」
「あの波動がアタシの言従士、初美咲っていう女の子なんだけど、彼女に向かって飛んでいったの。初美咲はその波動を足に宿して、今頃超速でここに向かっているはずよ」
「超速……」
「のたのたとのんびり歩いてきたんじゃ、急に呼び出す意味がないでしょ。そうね、あーたがいま、騎士団の詰所で武器や防具に加護を施したみたいに、遠隔で初美咲に加護を施した……というか、加護を飛ばした、と言えばわかるかしら」
「加護を飛ばす……はい、なんとなくわかります」
紀更がミッチェルに頷いたその瞬間、突風のような風が守護部会館の出入口に吹き込んだ。その風と一緒に現れたのは、頭に黒いリボンを付けた赤毛の少女だった。
「なによー、オッサン。なんか急ぎの用事でもあんのー」
走ってきたのか飛んできたのか、一瞬にして紀更の前に現れた少女は右手を腰に当てて、気だるげに構えた。年齢的には紀更より上で成人しているかもしれないが、身長は紀更より少し低い。
「紀更、紹介するわ。彼女がアタシの言従士、初美咲よ」
「んー? 紀更?」
「初美咲、彼女は初段操言士の紀更。新人よ」
「どうもー。初美咲でーす。よろしくっすー」
「紀更です。あの、よろしくお願いします」
紀更は軽く会釈をして、挨拶をする。
初美咲は自分で髪の毛を切っているのか、後ろ髪は鎖骨より下まであるが頬にかかる髪は顎までしかなく、心なしかその長さはバラバラだ。服装も、少年が着るようなくすんだ緑色の上着を羽織り、中にはグレーの質素なシャツといういで立ちで女性らしさが少ない。おまけに、化粧が得意ではないのか眉が不自然に太く、ミッチェルと並ぶと両者ともいろいろと指摘したい部分が多すぎて、なぜか逆に言葉を呑み込んでしまった。
「で、オッサン。なにさ」
「用はないのよ。紀更が自分の言従士を呼ぶために、アタシが実演してみせただけ」
「用がないのに呼び出されたのはちょっちウザいんですけどー。でも、へえ……新人ちゃんなのに、もう言従士がいるんだ?」
初美咲はにやにやと紀更の表情をうかがった。
紀更は、言従士なのに自分の操言士を「オッサン」呼ばわりする初美咲の態度の大きさに、呆気にとられる。
(言従士って、誰もがみんな自分の操言士にかしずく、ってわけでもないのかしら)
「よし、ウチも見守ってあげましょー。ほら紀更、さっさと言従士を呼んで」
「えっ、あ、はい」
初美咲はミッチェルの隣に並び立つと、顎で紀更をうながした。
紀更は初美咲の押しに流されるように、先ほどミッチェルが使った言葉と同じ言葉を紡ぐ。
【唯一無二の我が絆、その名は紅雷、我が呼び出しに応えてここへ来たれ】
王都のどこかにいる紅雷に、まずはこの呼び出しの声が届くように。それから、紅雷が疾風のような速さでここに来るように。
ミッチェルと違って手を使うことはしなかったが、紅雷が軽やかに移動できる様をしっかりと思い描いて、紀更は操言の力を使った。
「さーて、紀更の言従士ちゃんは来られるかな~」
初美咲はそう言ってあたりをきょろきょろと見回す。
「紀更、操言の力の使い方は悪くないわ。あとは、紅雷が紀更の力をうまく受け取れているかどうかね」
紅雷を待つ紀更に、ミッチェルは励ましの声をかけた。
その時、初美咲が現れた時のように強い風が一瞬だけ吹き、紅雷が現れた。
「あっ、紀更様! いま、あたしのこと呼びました!?」
何が起きたのかわからなかったようだが、紅雷は紀更に気が付くと、正面から紀更の腰に両腕を回して抱きついた。そんな紅雷を受け止めるため、紀更は両足に力を入れて踏ん張る。
「おっ、いいね~。言従士って感じの娘ですな~」
「紀更、その娘が紅雷かしら?」
「あ、はい」
紀更はミッチェルを見上げて困惑気味に頷いた。それから、紅雷を制御するためにあえて大きな声を出す。
「紅雷、気を付け!」
「はいっ!」
紀更に号令されると、紅雷は両腕を身体の真横に付け、背筋を伸ばして直立した。
「ミッチェルさん、あらためまして、こちらが紅雷です。紅雷、こちらは操言士団守護部の操言士ミッチェルさんと、その言従士初美咲さんよ」
「……紅雷です」
紅雷はミッチェルと初美咲をじーっと見つめたあと、ただ一言名乗った。
「紅雷、私が操言の力で呼んだの、わかった?」
「もちろん! すぐにわかりましたよ! しかも、急ごうと思ったらなんかものすごい速さで走れました!」
大きく首を縦に振って、紅雷は得意げに頷いた。
「紀更、上出来よ。今後、紅雷を急ぎで呼びたいなら今みたいに呼べばいいわ」
ミッチェルも満足げに言った。
「紀更と紅雷はここでちょっと待ってなさい。ラファル部長を呼んでくるわ」
「オッサン、ウチは? もう自由にしていいの?」
「初美咲は第一城壁の見回りを頼もうかしら。王都の住民じゃない人の出入りがあったら、注意深く観察してちょうだい。怪しげな人間は、しばらく尾行して観察するのよ」
「尾行して観察して、マジでヤバい人だったらどうすんのさー」
「そのときはすぐに戻ってきて教えてちょうだい」
「りょーかい。じゃあね、紀更、紅雷」
初美咲は右手をひらひらと振ると、守護部会館を背にして歩道の方へ歩き出した。
「さ、すぐ呼んでくるから待ってらっしゃい」
ミッチェルはそう言うと守護部会館の中に入り、部長執務室を目指して階段を上った。
◆◇◆◇◆
「なるほどなるほど、わかりました」
部長執務室で、王黎はラファルと向かい合ってソファに座り、話し込んでいた。
「僕と紀更でピラーオルドその他諸々について調査しろ、詳細を解明しろ、それが操言士団に与えられた王命であり、僕らへの特別任務である、と。なぜ僕と紀更に白羽の矢が立ったのかというと、僕らが唯一ピラーオルドその他諸々に遭遇したからと。はいはい、そうですねー」
「なんだよお前、不服なのか」
「いえ? むしろずいぶん決断が遅かったなーって思いますよ」
王黎はシニカルな笑みを浮かべた。
「コリン団長は王都に帰還した僕らを聴取した際に……いえ、僕がポーレンヌから手紙を送った時点で、すでに気付いていたはずです。異常事態に何度も遭遇する僕らの特異性を。そして過去に例のないこの事態に関わりが一番あるとすれば、一年前に出現した〝特別な操言士〟、つまり紀更だとね」
「お前らがレイトやラフーアの襲撃に遭遇したのも、ピラーオルドの奴らと接触できたのも全部偶然だろ? 同じ偶然が今後また起こるとは限らないじゃないか。どうしてそんな自信満々に言えるんだ」
「起こらないとも限らないから、ですよ」
「屁理屈を」
「ライアン王が正しいと思いますよ、ラファルさん」
王黎は組んでいた足を優雅に組み替えた。
「オリジーア……いえ、この世界は大きく変わろうとしている。その変化の渦の中心にいるのは紀更です。彼女の存在が、この変化の正体を見定めるための鍵なんです」
「お前までそんなことを言うか。そんなの言い掛かりだ。紀更は普通の女の子だろ」
「この世界にとってはそうではないようですよ」
「世界、世界って! そのために犠牲になれと言うのか、お前まで」
ラファルは悔しげな表情で眉間に皺を寄せた。
国王ライアンもコリンも、紀更を「トクベツ」扱いする。特別だからいま起きている異常事態に関係があるはずで、人々のために犠牲になれと。一部の幹部操言士やその取り巻きたちにいたっては、これまでに例のない「トクベツ」だから不吉で、今の操言士の安寧を脅かす存在だとあからさまに悪意を持って紀更のことをそしる者までいる。
これまで何人もの操言士の犠牲を見届けてきたラファルは、若き操言士が散っていくことがやるせない。操言士は国のため、人々のため、その生活を守り支える役目を負う。その逃れられないさだめを受け入れ、時にはあっさりと自分を捨ててしまえる操言士たちの徒花を、あと何回見ればいいのだろう。
「大丈夫です、ラファルさん。世界が紀更を選んだのなら、紀更はそうやすやすと死にません。犠牲になんかならない。僕もいるし、旅に出れば騎士の護衛もいる。騎士以外の護衛も、望むならもちろんつけていいのでしょう?」
「ああ。そこらへんは操言士団が全面的に支援する。路銀とかの心配も基本不要だ」
「それはありがたいですね。遠慮なく操言士団の財布をあてにさせてもらいます」
「遊びじゃねぇんだから、不必要な出費はすんなよ?」
「さすがにそこらへんは大丈夫ですよ」
朗らかに答えつつ王黎は続けた。
「守護部の部長を務めるラファルさんは部下を戦場に送り出すつらい立場で、何度も下唇を噛んできたことでしょう。でも、紀更も僕も、簡単に無駄死にはしませんよ。ピラーオルドに攫われるつもりなんてないし、怪魔に殺されるつもりもない。それに、僕らには言従士がいます」
王黎は自身に満ちあふれた笑顔を浮かべた。
怪魔との戦闘で、もしも操言士の身に危険が迫ったら。その時は必ず、言従士が飛んでくる。最美も紅雷もきっと、自分の操言士をかばうために迷うことなくその身を差し出すだろう。そんな言従士がいるからこそ、操言士は必ず生きて残ると心を強くし、踏ん張れる。もちろん、自分のために言従士が犠牲になることもそう簡単には許さない。
「怪魔が多発している理由、ピラーオルドの正体、攫われた操言士の行方、変わろうとしている世界の姿とその理由……それらすべてを解き明かすための旅ですか。歴解派の操言士たちからしたら垂涎の的ですね」
パーティーで幹部操言士マティアスから言われたことを、王黎は思い出す。
変わりゆく時代。新たに紡がれる歴史。そのただ中にいることで、より多くのことを知り、見て、触れる。マティアスの言うとおり、後世に伝え残すべき何かがこの先に待ち構えている気がする。
「はい。大きくて、太い感じの波動でした」
「あの波動がアタシの言従士、初美咲っていう女の子なんだけど、彼女に向かって飛んでいったの。初美咲はその波動を足に宿して、今頃超速でここに向かっているはずよ」
「超速……」
「のたのたとのんびり歩いてきたんじゃ、急に呼び出す意味がないでしょ。そうね、あーたがいま、騎士団の詰所で武器や防具に加護を施したみたいに、遠隔で初美咲に加護を施した……というか、加護を飛ばした、と言えばわかるかしら」
「加護を飛ばす……はい、なんとなくわかります」
紀更がミッチェルに頷いたその瞬間、突風のような風が守護部会館の出入口に吹き込んだ。その風と一緒に現れたのは、頭に黒いリボンを付けた赤毛の少女だった。
「なによー、オッサン。なんか急ぎの用事でもあんのー」
走ってきたのか飛んできたのか、一瞬にして紀更の前に現れた少女は右手を腰に当てて、気だるげに構えた。年齢的には紀更より上で成人しているかもしれないが、身長は紀更より少し低い。
「紀更、紹介するわ。彼女がアタシの言従士、初美咲よ」
「んー? 紀更?」
「初美咲、彼女は初段操言士の紀更。新人よ」
「どうもー。初美咲でーす。よろしくっすー」
「紀更です。あの、よろしくお願いします」
紀更は軽く会釈をして、挨拶をする。
初美咲は自分で髪の毛を切っているのか、後ろ髪は鎖骨より下まであるが頬にかかる髪は顎までしかなく、心なしかその長さはバラバラだ。服装も、少年が着るようなくすんだ緑色の上着を羽織り、中にはグレーの質素なシャツといういで立ちで女性らしさが少ない。おまけに、化粧が得意ではないのか眉が不自然に太く、ミッチェルと並ぶと両者ともいろいろと指摘したい部分が多すぎて、なぜか逆に言葉を呑み込んでしまった。
「で、オッサン。なにさ」
「用はないのよ。紀更が自分の言従士を呼ぶために、アタシが実演してみせただけ」
「用がないのに呼び出されたのはちょっちウザいんですけどー。でも、へえ……新人ちゃんなのに、もう言従士がいるんだ?」
初美咲はにやにやと紀更の表情をうかがった。
紀更は、言従士なのに自分の操言士を「オッサン」呼ばわりする初美咲の態度の大きさに、呆気にとられる。
(言従士って、誰もがみんな自分の操言士にかしずく、ってわけでもないのかしら)
「よし、ウチも見守ってあげましょー。ほら紀更、さっさと言従士を呼んで」
「えっ、あ、はい」
初美咲はミッチェルの隣に並び立つと、顎で紀更をうながした。
紀更は初美咲の押しに流されるように、先ほどミッチェルが使った言葉と同じ言葉を紡ぐ。
【唯一無二の我が絆、その名は紅雷、我が呼び出しに応えてここへ来たれ】
王都のどこかにいる紅雷に、まずはこの呼び出しの声が届くように。それから、紅雷が疾風のような速さでここに来るように。
ミッチェルと違って手を使うことはしなかったが、紅雷が軽やかに移動できる様をしっかりと思い描いて、紀更は操言の力を使った。
「さーて、紀更の言従士ちゃんは来られるかな~」
初美咲はそう言ってあたりをきょろきょろと見回す。
「紀更、操言の力の使い方は悪くないわ。あとは、紅雷が紀更の力をうまく受け取れているかどうかね」
紅雷を待つ紀更に、ミッチェルは励ましの声をかけた。
その時、初美咲が現れた時のように強い風が一瞬だけ吹き、紅雷が現れた。
「あっ、紀更様! いま、あたしのこと呼びました!?」
何が起きたのかわからなかったようだが、紅雷は紀更に気が付くと、正面から紀更の腰に両腕を回して抱きついた。そんな紅雷を受け止めるため、紀更は両足に力を入れて踏ん張る。
「おっ、いいね~。言従士って感じの娘ですな~」
「紀更、その娘が紅雷かしら?」
「あ、はい」
紀更はミッチェルを見上げて困惑気味に頷いた。それから、紅雷を制御するためにあえて大きな声を出す。
「紅雷、気を付け!」
「はいっ!」
紀更に号令されると、紅雷は両腕を身体の真横に付け、背筋を伸ばして直立した。
「ミッチェルさん、あらためまして、こちらが紅雷です。紅雷、こちらは操言士団守護部の操言士ミッチェルさんと、その言従士初美咲さんよ」
「……紅雷です」
紅雷はミッチェルと初美咲をじーっと見つめたあと、ただ一言名乗った。
「紅雷、私が操言の力で呼んだの、わかった?」
「もちろん! すぐにわかりましたよ! しかも、急ごうと思ったらなんかものすごい速さで走れました!」
大きく首を縦に振って、紅雷は得意げに頷いた。
「紀更、上出来よ。今後、紅雷を急ぎで呼びたいなら今みたいに呼べばいいわ」
ミッチェルも満足げに言った。
「紀更と紅雷はここでちょっと待ってなさい。ラファル部長を呼んでくるわ」
「オッサン、ウチは? もう自由にしていいの?」
「初美咲は第一城壁の見回りを頼もうかしら。王都の住民じゃない人の出入りがあったら、注意深く観察してちょうだい。怪しげな人間は、しばらく尾行して観察するのよ」
「尾行して観察して、マジでヤバい人だったらどうすんのさー」
「そのときはすぐに戻ってきて教えてちょうだい」
「りょーかい。じゃあね、紀更、紅雷」
初美咲は右手をひらひらと振ると、守護部会館を背にして歩道の方へ歩き出した。
「さ、すぐ呼んでくるから待ってらっしゃい」
ミッチェルはそう言うと守護部会館の中に入り、部長執務室を目指して階段を上った。
◆◇◆◇◆
「なるほどなるほど、わかりました」
部長執務室で、王黎はラファルと向かい合ってソファに座り、話し込んでいた。
「僕と紀更でピラーオルドその他諸々について調査しろ、詳細を解明しろ、それが操言士団に与えられた王命であり、僕らへの特別任務である、と。なぜ僕と紀更に白羽の矢が立ったのかというと、僕らが唯一ピラーオルドその他諸々に遭遇したからと。はいはい、そうですねー」
「なんだよお前、不服なのか」
「いえ? むしろずいぶん決断が遅かったなーって思いますよ」
王黎はシニカルな笑みを浮かべた。
「コリン団長は王都に帰還した僕らを聴取した際に……いえ、僕がポーレンヌから手紙を送った時点で、すでに気付いていたはずです。異常事態に何度も遭遇する僕らの特異性を。そして過去に例のないこの事態に関わりが一番あるとすれば、一年前に出現した〝特別な操言士〟、つまり紀更だとね」
「お前らがレイトやラフーアの襲撃に遭遇したのも、ピラーオルドの奴らと接触できたのも全部偶然だろ? 同じ偶然が今後また起こるとは限らないじゃないか。どうしてそんな自信満々に言えるんだ」
「起こらないとも限らないから、ですよ」
「屁理屈を」
「ライアン王が正しいと思いますよ、ラファルさん」
王黎は組んでいた足を優雅に組み替えた。
「オリジーア……いえ、この世界は大きく変わろうとしている。その変化の渦の中心にいるのは紀更です。彼女の存在が、この変化の正体を見定めるための鍵なんです」
「お前までそんなことを言うか。そんなの言い掛かりだ。紀更は普通の女の子だろ」
「この世界にとってはそうではないようですよ」
「世界、世界って! そのために犠牲になれと言うのか、お前まで」
ラファルは悔しげな表情で眉間に皺を寄せた。
国王ライアンもコリンも、紀更を「トクベツ」扱いする。特別だからいま起きている異常事態に関係があるはずで、人々のために犠牲になれと。一部の幹部操言士やその取り巻きたちにいたっては、これまでに例のない「トクベツ」だから不吉で、今の操言士の安寧を脅かす存在だとあからさまに悪意を持って紀更のことをそしる者までいる。
これまで何人もの操言士の犠牲を見届けてきたラファルは、若き操言士が散っていくことがやるせない。操言士は国のため、人々のため、その生活を守り支える役目を負う。その逃れられないさだめを受け入れ、時にはあっさりと自分を捨ててしまえる操言士たちの徒花を、あと何回見ればいいのだろう。
「大丈夫です、ラファルさん。世界が紀更を選んだのなら、紀更はそうやすやすと死にません。犠牲になんかならない。僕もいるし、旅に出れば騎士の護衛もいる。騎士以外の護衛も、望むならもちろんつけていいのでしょう?」
「ああ。そこらへんは操言士団が全面的に支援する。路銀とかの心配も基本不要だ」
「それはありがたいですね。遠慮なく操言士団の財布をあてにさせてもらいます」
「遊びじゃねぇんだから、不必要な出費はすんなよ?」
「さすがにそこらへんは大丈夫ですよ」
朗らかに答えつつ王黎は続けた。
「守護部の部長を務めるラファルさんは部下を戦場に送り出すつらい立場で、何度も下唇を噛んできたことでしょう。でも、紀更も僕も、簡単に無駄死にはしませんよ。ピラーオルドに攫われるつもりなんてないし、怪魔に殺されるつもりもない。それに、僕らには言従士がいます」
王黎は自身に満ちあふれた笑顔を浮かべた。
怪魔との戦闘で、もしも操言士の身に危険が迫ったら。その時は必ず、言従士が飛んでくる。最美も紅雷もきっと、自分の操言士をかばうために迷うことなくその身を差し出すだろう。そんな言従士がいるからこそ、操言士は必ず生きて残ると心を強くし、踏ん張れる。もちろん、自分のために言従士が犠牲になることもそう簡単には許さない。
「怪魔が多発している理由、ピラーオルドの正体、攫われた操言士の行方、変わろうとしている世界の姿とその理由……それらすべてを解き明かすための旅ですか。歴解派の操言士たちからしたら垂涎の的ですね」
パーティーで幹部操言士マティアスから言われたことを、王黎は思い出す。
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