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第一章 産声

第十一話 premonición de amor

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ある冬の日のこと。
全日本を終えると、もう冬のイメージが一層強くなっていき、12月5日の今日はもう冬真っ盛り。空は雲ひとつない晴天でも、息をすると一気に白くなり、耳が悴む。僕は冬という季節があまり好きではない。
この日は1限目にに撰択言語の必修科目があるので当然出席。僕は第二外国語をスペイン語とした。
この学校は1学年の12月から2学年の3月まで第二外国語が必修である。
火曜一限からあるとかめんどくさいなと思いながら講堂に入る。
「どんな人がいるんだろう。」
緊張しながら席に着く。後ろから3番目。
隣に誰か人が座る。確認したいが、緊張している今の僕には90度左に向くことすらできない。
そんなこんなしてるうちに、教授が来た。
ロレンソ教授「¡Bienvenidos, señoras y señores!(ようこそ!みなさん!)今日からスペイン語をお教えするLorenzo(ロレンソ)です。」
 どうやら火曜日の教授はスペイン人のロレンソ教授。金曜日の3限目に必修がある教授は日本人の教授だそう。
ロレンソ教授「記念すべき第1回目の授業は簡単な自己紹介ができるようにしましょう。」
「スペイン語で私の名前は〇〇です。という時にはMe llama Lorenzo.と言います。」
「じゃぁ、1番前の君、自分の名前と共に言いなさい。」
生徒「Me llama Honma Fuuya.」
「?本馬、本馬楓弥!あいつもスペイン語選んだんだ。」
少しやる気というか、スペイン語を学ぶことに価値、意味が出た。
ロレンソ教授「うーん。いいですね。今の代名詞、Meを直接目的格といいます。このように、スペイン語は主格、直接目的格、間接目的格、再帰格の4つです。」
「今回の授業は主格です。主格の一人称、私を表すのはyoです。ですがYoはあまり使いません。私は~です。の時に使うときにはyo soy、略してsoyを使いましょう。」
「ではみなさん、隣の席の方と自分の名前を言ってみましょう!」
僕は恥ずかしがり屋なので初対面でこういうことはあまりできない。嫌悪感よりも羞恥心の方が多い。
ゆっくりとカクカクしながら隣の人と目が合う。どこかで記憶のある女性。
「Soy Yokohama Kaito.」
「Soy Shirataki Kae.」
白築、白築佳衣!この人は4月の時にいた隣の席のあの。睨んできた野郎。
顔をまた戻す。ゆっくりではなく、早く。
ロレンソ教授「どうですか。言えましたか?」

 ロレンソ教授「では今回の授業はこれで終わりです。Que tenga un buen día. Hasta la vista.(ご機嫌ようさようなら)。」
授業が終わると教室から抜け出す。急いで自販機へ駆ける。喉が渇いてたというより、あの空気、気まずすぎて逃げ出したかったのだ。隠しのために自販機へ寄った。
140円のスポーツドリンクを買うと後ろには白築がいた。
白築「あ、よろしく。」
「う、うん。よろしく。」
最初はこんな感じだった。ふと、白築の顔を見ると、少しばかり、顔が赤かった。
教室へ戻る。
本馬「あ、横浜じゃん!お前もスペイン語なんだ。」
「うん。本馬が指された時に分かってびっくりしたわ。本馬がいて良かった。心の余裕ができたw」
本馬「なんだよ心の余裕って。ってか顔、赤いぞ。冬なのに。大丈夫?」
「え、本当!?あ、もう2限目始まるから、じゃあねー」
席に着き急いでスポドリをゴクっと一気に飲んだ或る日。
「はぁやっぱり冬は好きじゃない。」
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