サラダ

きゅうり

｢あーあーいっその事慎治から別れたいって言ってくれれば良いのにな。｣
底の見えない闇の中に身を委ねるかのような声で言った。
｢やーやだなぁ
中々怖いこと言うねぇ杏ﾁｬﾝ｣
｢でも慎治ｸﾝってすごい純粋じゃん。
傷つけちゃダメだよあんまり、ああいう子って後々面倒臭いからサ｣
相変わらず意地悪そうにニタニタして言う。
アメコミの悪役にそっくりだ。
アメコミと思い思い出したのは慎司だった。
慎治は思い出したくないのに、どうしても心にいる。
何か茨のツタのようなものが私と慎司に張り付いていて、動けばお互いが傷ついて
何も始めなければ、いつトゲが刺さるか分からない恐怖の淵にいる感覚だった。
そんなことを考えながら
付いたり、消えたりする天井の電灯を見た。
ふわふわ沈んだり浮いたりしている私のようだと思った。