サラダ

ソース

よく知ったような声が耳の裏に響く。
「りょーﾁｬﾝー！」
後ろに見える女の人はオドオドとしていた。
「咲良ちゃんじゃん！どうしたの？」
いつか記憶に残る彼女が僕の中で鮮明に映る。
鮮明と言えども僕の中での彼女は霞んでいた。俺自身もよく分からないフィルターがかかっていて気持ちが悪かった。
「りょーﾁｬﾝに会いたかったよ。」
肉感的な唇を天の方に上げ、目をミカズキ型にしいかにも笑顔という顔をとった。
唇にはグロスがたっぷりと塗られていた。
あーあまたキスを迫られた時にグロスが口の中やら口の周りやらに付くんだろうなと嫌な奴がしそうな妄想をした。
その点杏は、テカテカではなくてマットだから変な所にくっつかないですむ。
いつまでもギャルを演じる咲良より大人しい杏の方が好き。
けど、やっぱ俺が杏を一番好きな理由は彼氏がいるからなんだ。
ステータス持ちの奴をぶち壊して初に追い込むのが好きなんだ。
たまたまソレが元彼ノだっただけ。
彼氏がいるって知ってそれに飛びついただけ。
つくづく最低だよな俺って。
そう思いながら、咲良にハグした。
こう考えながらハグする俺はさらに最低な気がして辞めた。
それから、虫を追い払うように、咲良を払った。