サラダ

貪欲ちゃん

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サラダ

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慎治も、涼も、咲良も居なくなって2ヶ月はたっただろうか。
いや、実際のところ何日たったか分からない。
あれから私は色々と変わった。
悪い意味でもいい意味でも。
私は本当のあたしを出すようになった。
ロボットみたいな性格のあたしを。
2人のことを忘れるために、仕事の虫になった。
いい意味では、お金がいっぱいはいった。
けど、片時も慎治のことを忘れたことは無い。
この恋は、無くしてから気づくものだった。
もう、戻らないケド。
部屋掃除をしていると、聞きなれた声が耳の奥でなる。
耳の奥じゃない、薄いテレビからだ。
そこには確かに、慎治が映っていた。
気になったが、ここで見たらきっと泣いてしまうから、見ないで作業をしていると。
ベットの下からあの、リングノートが見つかった。
「これは僕の最も愛していた人のために作った曲です。」
燦々とライトの光を受けた慎治は言う。
瞳の奥ではライトが煌々と光っており
花火のようだった。
「サラダ。」と。
曲の前奏に合わせてページをめくった。
歌詞は、そのまんま、慎治の声に合わせて
流れる。
いつかの思い出が脳でひしめき合った。



サラダかぁ......。
あの、机で私の料理を作る姿を見ていた慎治を思い出す。
軽やかな食材の音とギターの音色。
恥ずかしがって見せなかったのもそのせいか。





あの日々は、痛くて、愛おしかったな。




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