彼の愛に堕ちて溺れて

螢日ユタ

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episode4

1

翌朝、先に目覚めていた夏輝に寝顔を見られ、恥ずかしがりながらも隣に居る喜びを噛み締めながら幸せな朝を迎えた私は、今日は何時頃帰ってしまうのか聞けずにいると、


「ねぇ未來ちゃん、今日さ、ちょっと遠出しない?」


そんな思いもよらぬ言葉が夏輝の口から紡がれたことで、驚いた私は反応が遅れてしまう。


「……え?」

「だから、遠出しない? それとも、都合悪い?」

「ううん! 全然! 行きたい!!」

「はは、何か凄い必死じゃない? 最初反応悪いから都合悪いのかと思った」


すぐに返せなかったことを指摘された私が「だって、今日はもう、帰っちゃうのかと思ってたから……」と理由を呟くように話すと、


「そんな訳無いじゃん。今日は一日未來ちゃんと過ごしたいから、昨日仕事終わりに来たんだよ? そりゃ、今日も一日部屋でイチャつくでもいいけどさ、未來ちゃん的には外でのデートもしたいかなって思ったから誘ったんだよ」


ギュッと身体を引き寄せて抱き締めながら、今日は元から私と過ごすことを決めていたと教えてくれた。


「嬉しい……」


セフレだからデートなんてしてくれないかと思っていた私は夏輝の気持ちが嬉しくて、私も夏輝を抱き締め返すと、


「――ッん、」


抱き締めてくれていた手が離れたと思った刹那、顎を掬われた私はそのまま唇を奪われた。


そして、何度か角度を変えながらのキスを繰り返した夏輝は唇を離すと、


「これ以上すると、今日もこのままベッドから動けなくなりそうだから一旦止めとくね。未來ちゃん、とりあえず出掛ける準備してきなよ、ね?」


名残惜しそうな表情と共にそう口にした夏輝は優しく頭を撫でながら私に出掛ける準備をするよう促してきた。


私は夏輝と二人でデートに出掛けられることが嬉しくて、服はどうしよう? メイクは? 髪型は? と、胸を躍らせながら準備を始めようとするも、ふと、服にしても髪型にしても夏輝の好みはどんなものなのかを知らないことに気づく。


「ねぇ夏輝」

「ん?」


ベッドの上でスマートフォンを弄る夏輝に声を掛けた私は、


「夏輝ってさ、女の子がどういう髪型や服装でデートに出掛けるのが好きとかある?」


少し遠慮がちに問い掛けると、一旦スマートフォンを下ろしてこちらへ視線を向けた彼は、


「俺は、ありのままの未來ちゃんがいいと思ってるから、未來ちゃんがしたいようにしてくれると嬉しいな? まあ、俺の好みも勿論あるけど、それはまた今度、教えるね?」


微笑みながらそう答えてくれた。


「そっか、分かった。それじゃあ準備してくるね」


ありのままの私が良いだなんて言われてしまうと、それはそれで少しプレッシャーもあるけれど、私が一番似合うと思っている髪型や服装で行こうと決めた。


「夏輝、お待たせ」

「…………」


準備を終えて夏輝の前に姿を見せた私は少し不安を覚えた。


だって、私を直視した夏輝が何も言わずに居るから。


もしかして、思ってたのと違ったとか? ちょっと張り切り過ぎちゃった?


髪型はいつも下ろしているから、今日はギャップ萌えを狙ってミックス巻きをしてから後ろに束ねたミックス巻きのポニーテール。


服装はキャミソールタイプでスカート丈がくるぶしくらいまであるロングワンピースに少し薄めのカーディガンを羽織ったスタイル。


「あの、……変、かな?」


無言の空気に耐えきれない私がポツリと呟くように尋ねると、


「あ、ごめん……そうじゃなくて……俺の好みの服装と髪型だったから驚いちゃって……見惚れてた」


我に返り、少し慌てた夏輝がそう答えてくれた。


「そう、だったんだ? それなら良かった! 私、張り切り過ぎちゃったのかと思ったから」

「――未來、こっち来て?」


夏輝の好みと私のお気に入りの服装や髪型が同じだったことが分かって嬉しく思っていると、夏輝が手招きをするので近付いていく。


「ここ、座って」

「え……?」


すると、ベッドの端に浅く腰掛け直した夏輝は自身の膝の上に座るように言ってくるから少しだけ戸惑ってしまう。


「いいから、ほら」

「あっ――」


そんな私の手を引いた夏輝によって半ば強引に彼の膝の上に腰掛けると、後ろからギュッと抱き締められた。


「な、つき?」

「あー、もう、これから出掛けるからこういうことしないって決めてたのに、未來が可愛いからついつい腕の中に閉じ込めたくなる」


そして、そう言いながら耳元に顔を近付けた夏輝は、


「――っあ、……っん、」


耳朶を舌で舐めてくると、そのまま食むようなキスをする。


「……っや、……なつ、き……ッ」

「分かってる。せっかくお洒落してくれたんだから、今はこれだけ。今日の夜も沢山可愛がってあげるから、覚悟しなね?」

「――ッ!」


耳朶から首筋へ口づけてきた夏輝は顔を離す前に再び耳元で囁くように口にしたその言葉に、私は身体をゾクリと震わせながら、密かに興奮した。


今夜もずっと傍に居てくれることと、夏輝に抱いてもらえることが分かったから。


今日は一日、ずっと一緒に居られるんだ……。嬉しい……。


「夏輝……、キス、して?」


抱き締められていた手が緩んで彼の身体が離れた直後、一旦立ち上がった私は向かい合うように夏輝の前に立つと、大胆にも自ら彼の膝の上に跨るように座ってキスを強請る。


「……あのさ、未來ちゃん、もう出掛けるんだよ?」

「……分かってる、けど、今すぐにキスがしたいの……駄目?」


こんな誘い方、普段なら絶対しないけど、今はどうしても夏輝とキスがしたかった私が恥を忍んでお願いすると、


「――仕方ないなぁ、未來がそこまで言うなら応えてあげないといけないよね? けど、止まれなくなったら、未來のせいだからね?」

「――ッんん……」


顎をクイッと持ち上げてきた夏輝はニヤリと口角を上げながらそう言葉を漏らすと、そのまま唇を重ねてきた。


「――っん、……はぁっ、んん」


数回角度を変えながらの口づけをされた後、すぐに舌を入れてくる。


私の頬に触れていた夏輝の両手が耳を捉えると、耳朶や耳の入り口付近を指で刺激し始めた。


「……っふぁ、……っん、ぁ、……やぁっ、」

「――嫌? けど、未來が煽ったんだよ?」

「……っ、ぁ」


私の弱いところばかりを攻めてくる夏輝。


確かに、キスを強請った私が悪いのかもしれない。


出掛けるんだから、こんなことしてちゃ駄目なのに、キスで興奮しているのは夏輝も同じようで、彼に跨がって座っているから大きくなってきた夏輝のソレが私の敏感な部分に当たっているのがよく分かる。


このまましたいけど……でも、やっぱりデートもしたい……。


我侭なのは分かっているけど、どちらもしたいと願う私は自分勝手なのかもしれない。


だけど、


「――ッんん、……はぁっ、」


唇を離し、それと同時に頭を撫でてきた夏輝は、


「ストップ。このまま最後までしたい気持ちはあるけど、俺としては、せっかく未來がこんなに可愛くお洒落してくれたから……出掛けたい。だから、続きはまた、夜にね?」


自分だってこんな中途半端は辛いだろうに、これ以上は駄目だと言いながら、続きはまた夜にと言ってきた。


「……ごめんね、私が、キスしたいだなんて言ったから……」


そもそもは欲望に打ち勝てずにキスを強請った自分が悪いと私が肩を落として謝るも、


「別に、未來は悪くないよ? 俺だっていつでもキスしたいし。それに、未來から言ってくれたのだって嬉しかったしさ、そういう積極的なのは大歓迎。夜も楽しみにしてるからね?」

「……う、うん……」


夏輝は、私が悪い訳じゃない、むしろ嬉しかったと答えてくれた。


こういうところも夏輝を好きな理由だなと、改めて再確認した私はもう一度だけ彼にチュッと口づけてから身体を離していった。
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