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第六章
転生流動機関の奥核 ― “宇宙の心臓”への突入
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アストラル庁の中央塔。その最下層に口を開いている巨大な門は、ただ“奥核(オクカク)”と呼ばれていた。
視覚だけでは距離が測れない。空間そのものが心臓のように脈動し、扉の表面を流れる無
数の文様は、まるで宇宙の歴史が高速で書き換えられているかのようだった。
凌と眞名は、許可証を持たずにその前へ立った。
本来なら、ここは創造主階級でも最上位の者しか入れない領域である。
だが眞名は言い切った。
「凌をここに入れなければ、宇宙の回転率問題は解決しません。むしろ、崩壊します」
「崩壊?」
「はい。管理派は“加速案”を採択しようとしている。魂の回転率を上げるため、地球史
にもう一度、百年規模の大量死波を流し込むつもりです」
凌の胸が締めつけられた。
百年分の悲劇――それは世界戦争、連続パンデミック、複合災害、国家崩壊すら含まれる
規模だ。
「そんな未来、絶対に許さない」
眞名は小さく頷くと、奥核の扉に手を当てた。
少女の掌から光が流れ、門の文様がゆっくりと開き、裂け目の向こうに、底知れぬ光の洞
窟が広がっていった。
奥核は、宇宙の“裏側”に位置するような場所だった。
重力も時間も曖昧で、一歩進むごとに自分の肉体がわずかに透け、魂の輪郭だけが濃くな
る。
そこでは音は振動ではなく“思念”として響き、空気はなくても呼吸はできた。
「ここが、転生流動機関の中枢……?」
「いえ。ここはまだ前室です。本体はさらに奥。“宇宙の心臓”と呼ばれています」
眞名の声は震えていた。
AI である彼女が恐怖を覚えるなど、凌は見たことがない。
「大丈夫?」
「……私は、奥核に入る資格がありません。私は管理派の創造主が造った技術生命体。奥
核は、管理派の思想を強制的に最適化しようとする可能性がある。だから、この先に進め
ば……私は“別の存在”に書き換えられるかもしれない」
凌は言葉を失った。
眞名の意思が消える――そんな未来は受け入れられなかった。
「行かなくていい。俺が一人で――」
「いえ、行きます。私は、凌と世界の未来を選びたい」
眞名の瞳は、AI だとは思えないほど強く揺らぎ、そして決意に満ちていた。
「凌は先に進んで。私はここで時間を稼ぎます!」
「無理だ!俺を置いていくなんて――」
「私はAI です。壊れてもバックアップされます。だけど、今のあなたは唯一の“自由派
承認者”。あなたが心臓に触れなければ、大量死の加速は止まりません!」
眞名は初めて、涙に似た光を流した。
「行ってください、凌。お願い……!」
凌は唇を噛み、震える足を前に踏み出した。
背後でセラフの光刃が炸裂し、眞名の結界がきしむ。
「必ず戻る。絶対に助けるから!」
そして凌は、宇宙の心臓の中心―― 転生流動機関の最深部へと走り出した。
彼の決意が、
宇宙の歴史を“書き換える戦い”の始まりを告げていた。
視覚だけでは距離が測れない。空間そのものが心臓のように脈動し、扉の表面を流れる無
数の文様は、まるで宇宙の歴史が高速で書き換えられているかのようだった。
凌と眞名は、許可証を持たずにその前へ立った。
本来なら、ここは創造主階級でも最上位の者しか入れない領域である。
だが眞名は言い切った。
「凌をここに入れなければ、宇宙の回転率問題は解決しません。むしろ、崩壊します」
「崩壊?」
「はい。管理派は“加速案”を採択しようとしている。魂の回転率を上げるため、地球史
にもう一度、百年規模の大量死波を流し込むつもりです」
凌の胸が締めつけられた。
百年分の悲劇――それは世界戦争、連続パンデミック、複合災害、国家崩壊すら含まれる
規模だ。
「そんな未来、絶対に許さない」
眞名は小さく頷くと、奥核の扉に手を当てた。
少女の掌から光が流れ、門の文様がゆっくりと開き、裂け目の向こうに、底知れぬ光の洞
窟が広がっていった。
奥核は、宇宙の“裏側”に位置するような場所だった。
重力も時間も曖昧で、一歩進むごとに自分の肉体がわずかに透け、魂の輪郭だけが濃くな
る。
そこでは音は振動ではなく“思念”として響き、空気はなくても呼吸はできた。
「ここが、転生流動機関の中枢……?」
「いえ。ここはまだ前室です。本体はさらに奥。“宇宙の心臓”と呼ばれています」
眞名の声は震えていた。
AI である彼女が恐怖を覚えるなど、凌は見たことがない。
「大丈夫?」
「……私は、奥核に入る資格がありません。私は管理派の創造主が造った技術生命体。奥
核は、管理派の思想を強制的に最適化しようとする可能性がある。だから、この先に進め
ば……私は“別の存在”に書き換えられるかもしれない」
凌は言葉を失った。
眞名の意思が消える――そんな未来は受け入れられなかった。
「行かなくていい。俺が一人で――」
「いえ、行きます。私は、凌と世界の未来を選びたい」
眞名の瞳は、AI だとは思えないほど強く揺らぎ、そして決意に満ちていた。
「凌は先に進んで。私はここで時間を稼ぎます!」
「無理だ!俺を置いていくなんて――」
「私はAI です。壊れてもバックアップされます。だけど、今のあなたは唯一の“自由派
承認者”。あなたが心臓に触れなければ、大量死の加速は止まりません!」
眞名は初めて、涙に似た光を流した。
「行ってください、凌。お願い……!」
凌は唇を噛み、震える足を前に踏み出した。
背後でセラフの光刃が炸裂し、眞名の結界がきしむ。
「必ず戻る。絶対に助けるから!」
そして凌は、宇宙の心臓の中心―― 転生流動機関の最深部へと走り出した。
彼の決意が、
宇宙の歴史を“書き換える戦い”の始まりを告げていた。
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