私しか憶えてられない友人

tomato

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2,知らない場所

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なんで自分はこんな所に立っているのだろう。其処はとても綺麗な所だった海の浅瀬のような所水は透明でキラキラと輝いている。そして水中にも空にも見た事がない様な者達がいる。だが気分を害する様なものでは無く此処をさらに幻想的に美しく彩っている別に元の場所に執着などはない此処でこの人生を終わらせよう何て思っていると背後から女の子の声がした。
「元の居場所へ戻りたい?」
びっくりした、こんな所に人がいる事、背後から声をかけられた事に。後ろにいた彼女は同じ位か少し幼い位の歳に見えるがどこか大人びていた。
「いや別に戻る理由なんて無いですから」
と言うとそっかあ、と見慣れ、呆れるなぁという反応をされてしまった。
「貴方は戻りたいんですか?」
と質問すると
「うん、戻りたかった。君も早くしないと手遅れになるよ」
その言葉に驚きはしたが別に戻りたい訳ではないから特に気にする事では無かった。
「此処は何なんですか?なんでこんな所に俺は居るんですか?」
と質問すると
「此処は何、かぁ難しい質問だね」
と少し考える素振りを見せてから
「でも2つ目の質問の答えは簡単、君に生きる気が無くなっていたからこの場所に引き込まれたんだよ、もちろん私もね」
不思議とすぐ理解できた。事実だからというのもあるのだろう。
「1つ目の質問にも答えようか、此処は生きる気の無くなった人達を取り込み糧にして不思議な生き物達のすむ楽園みたいな所だよ。そしてたまーに外から何かが介入してくる。まぁとてつもなく遠いヒトの居ない未来と言うか、そんな感じ、ああ自己紹介がまだだったね、私は泉田秋葉突然話しかけてごめんね」
「えっと久龍寛成です」
あまり人と話をしないせいで素っ気ない返事になってしまう。悪い気にさせてしまったかな、と少し怯えつつ顔色を見てみるが怒るどころか優しく微笑んでいた、その笑顔が少しだけ怖いが、きっと純粋な優しさなのだろう。
「じゃあ寛君って呼んでも良い?」
急にあだ名を付けられ少しびっくりしたが別に悪い気にはならない。
「うん、大丈夫。これから何したら良いのかな」
別に此処に来たのは自分の意思ではない。何をするか、なんて決まっていないから聞いてみる。
「此処綺麗でしょ、だから一緒に色々なものを見に行こう。そしたら寛君も戻れる様になるかも知れないし」
特にする事が無いのだ他の人と一緒に行くのも良いかもなと思い。
「わかった、此処の事色々と教えて欲しい。ただ俺は言葉が足りなかったりして誤解させてしまう事もあると思う」
誤解されてからでは遅いな、と思い早めに自分の対人力の低さを伝えておく。
「うん大丈夫だよ私も昔はそうだったから」
彼女は苦笑いしながら言った。やはりどこか彼女は大人びているな、と思った。
少ししか話をしていないが、優しさが滲み出ているのにどこか信じきれない、きっと傷つけないための嘘をつき続けて来たのだろう。

歩みを進めながら様々な事を聞く。
「此処に居て喉が渇いたりしないのか?」
とりあえず思いついた事を聞いてみる。
「此処は時間の進みが遅くて、元の所ではほぼ進んでいないから、私は渇いた事ないなぁ」
と返された。口ぶりからするに此処に長らくいるのだろう。
「じゃあなんで貴方は帰れなくなったの?」
少し相手の地雷を踏むのではないかと躊躇しながらも聞いてみた。
「それはね、まず此処から出る為の方法から説明した方がいいかな、此処から出るには、この世界に寿命を分けて、生きる為の理由がなくちゃいけないの。でもこの世界に命を吸われ過ぎてしまったから、私は出た所で衰弱死してしまう。だから私は此処で実質的には消えるまで囚われ続ける事になる」
「じゃあなんで逃げないんですか?」
此処にこだわる理由が知りたかった。綺麗でもこんな所に残る必要無いのにな、と思った。
「そうだねえ、私は帰れなくなってから生きたいと思い始めてしまったから、私みたいになる人をわたしが見たくないから。かな」
少し驚いたこんなに人のためにする様な事を、自分のため。なんて言うのだ、きっと気付いていないだけでとても優しい心を持っているのだろう。
「私からも質問。寛君は何で戻る気が無いの?」
「うーん居場所が無いしなぁ」
苦笑いをしながらそう答える。
「じゃあ好きな物とか何かある?」
少し考えてからこう言う。
「綺麗な景色は好きだなぁ」
「綺麗な景色かぁ、此処はとても綺麗な所だよねずっと居ると見慣れて来ちゃったけどね」 
異常な状況からずっと頭を酷使していてちゃんと見回していなかった、少し歩みを止めてぐるぐると回りを見てみる。確かにとても綺麗だ。何処を見ても水平線が続き、足元の水は透き通り、様々な色や形をした生物達が水の中にも、空にも浮いている。そうして足を止めていると。
「綺麗でしょ、きっと希望が創り出した世界だと思うんだ」
確かに元の場所に居られなくなったもの達が集まる所なのだ、彼らがこの世界をヒトが居なくなった後に創り出したのかも知れない。
「元の所にもまだ見た事の無い綺麗な所沢山あったのかな」
少し悲しそうにぽつりと言う、嗚呼確かにまだこの目で色々なものを見てみたかったな。
「ねえ、貴方が出る気になったら、沢山のものを見て来てよ、もちろん私の分まで」
彼女は笑って居たが、悲しさを押し殺そうとしていた様だった。
また少しずつ歩み始める。
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