私しか憶えてられない友人

tomato

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他愛のない話をした。自分の事も彼女の事も沢山話した。ふと何か思い出した様な顔で質問をされた。
「寛君ってさ、母親、とか居る?」
気まずそうに聞かれた。
「今はいないです。だいぶ前ですけど、病気で気が滅入って、そこからはすぐでした」
もうこの事は立ち直れているつもりだ。別に聞かれてまずい訳でもない。直ぐに答えた。
「お母さん、どんな人だったか、とか覚えてる?少し酷かも知れないけど話して欲しい」
いつも笑っていたが真剣な顔で聞かれた。何でこんな事を聞くのか気になったがとりあえず答える。
「優しくて、地域の人達からも慕われて居ました。とても明るいくて、いつも、生きてきればきっと何とかなる、と言って励ましてくれました。
とにかく良い人の見本の様な人でした」
少し思い出しつつ話をするため止まったり、つっかえたりしながらも母の事を話した。
彼女はやっぱり、と言う顔をして。
「あの人の言っていた子君の事だったのか。寛君の母親は此処へ一度来ていてね、私と同じ、病気で生きることに疲れていた、でも少し話をしていると君、寛君の事を話してくれてね、君に何か残してあげたいけど、きっと君に伝える時間が、私には残っていないからって私に伝えたい事を遺してくれた、彼女はその後少しでも君の顔が見たいと言って此処から出て行った。君に遺された事やっと伝えられる」
彼女は泣きそうな笑顔でそう告げた。驚きつつもうなずきながら話を聞いていた。
「じゃあ伝えるよ。『寛を置いて逝ってしまう事、どうか許してね。本当はもっと寛に色々な事を教えて、色々な事を話して、色々な事を一緒に体験したかった。でもこの身体はそれをさせてくれないみたいです。だから。自分の事を大事にして《生きて》欲しいです。もし早々とこっちへ来ようとしたら叩き返してあげます。私の出来なかった事沢山してください。ずっと見守っていますよ。頑張ってね寛。』だそうです、此処に残っていてよかったなぁ君が此処に来る事、何で貴方の母親はわかってたんだろうね」
彼女は泣きそうになっている所を必死に堪えながら茶化す。きっと気を使ってくれたのだろう、今声も出せない様な状況で泣いている自分の事を。
何故だろう、目から涙が止まらない、感極まり、胸が熱くなる、他人に生きて欲しいなんて言われた事がない。嗚呼、ああ、《生きたい》なぁ生きていたいなぁ。そういった思いが溢れてくる。こんなに心が暖かくなったのはいつぶりだろうか。
「足元見てみて」
そう言われて止まらない涙を拭いながら足元を見る。
自分の足が半透明になりつつ光が溢れ出している。
「やっと生きていたいと思ってくれたね。ありがとう」
ありがとう、なんて言われる事していない。寧ろ感謝をすべきなのは自分の方なのに。呼吸がまだ整わない。が声を振り絞って言う。
「ありがとう、此処に残ってくれて。ありがとう救ってくれて。本当に、ありがとう」
回らない頭を無理やり使い感謝を伝える。すると彼女も泣きながら笑いこう言った。
「人に感謝されるのは君の母親以来だなぁ本当に残っててよかったなぁ、これからはこんな所に来ないでねこれから頑張ってね」
「あっ、あと私と友達になってよ、寛君が私の初めての友達!ね。私はずっと覚えてるから」
友達になって欲しいと言う言葉は嬉しい。もちろんだ。
「ああ、もちろん友達なるよ」
そう伝えると笑ってくれた。
その笑顔は見た目の歳に合った、心からの笑顔だった。この笑顔がこの世界で見る最後の光景だった。


「さようなら、最初で最後になるだろう私だけの記憶に残る友人さん。」
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