インシツな指先

カゲマル

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また?

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 高木の周囲を確認すると、今のところは誰もいない。場所が場所だけ一人ではないだろう。友達と来たとも考えづらいから、おそらく家族か。なら合流前までがチャンスだ。
 するとポケットの携帯が震えた。

「どうした、トイレか?予定のルートから外れているが」
「ちょっとした野暮用だ。すぐ終わる」
「手伝おうか?」
「いや、大丈夫だ」

 通話を終え、高木の尻にもう一度目をやると、ピッタリめのショートパンツを履いているのがわかる。まるで俺のために履いてきてくれたみたいだ。
 ……いいじゃないか。俺に権限があれば、内申点をどっさりプレゼントしてやりたい気分だ。
 おっといけないタイムリミットがあるからはやくしないとな。
 高木の後をつけて歩いていると彼女は目的のブースに到着したようだ。
 人気のマスコットキャラクターのゲームの最新作らしい。なるほど、これなら納得だ。いかにも高木らしい。
 よし、行くか。
 俺は早歩きで距離を詰め、パンフレットを受け取る高木の尻に手の甲を滑らせた。

「っ!あっ、ご、ごめんなさい……」
「……こちらこそ」

 必要以上に畏まった気もするが、まあ仕方ない。声も変えないといけないしな。
 しかし、最近一段と肉付きがよくなった気がする。VIVA成長期。
 俺は申し訳程度のブース内を見て回ってから、顔を高木に向けないようにその場を離れた。

 ・・・

 び、びっくりしたぁ……。
 尻に当たったごつごつした感触をなるべく思い出さないように努めながら、高木レイラは男のいなくなった方向を見つめた。
 まさか、こんな場所であんな風にぶつかってくる人がいるなんて……まるで先生みたい。
 今のは自分がボーっとしていたのが原因だと思いながらも、レイラの心の中では「また?」という気持ちが渦巻いていた。
 そのせいか、去っていく男の後ろ姿も先生と重なって見える。
 彼女は両親から声をかけられるまで、その方向を見つめていた。

 ・・・

「今から戻る」

 オッサンに報告だけ済ませると、俺は次のターゲットを確認した。

「ほう……」

 思わず感嘆の声が漏れる。あのオッサンは三人目に本命を入れたがるが、どうやら今回もそうらしかった。
 女の名前は成田瑞希。黒のポニーテールが特徴の美女だ。だが、活発的というよりはおとなしそうに見える。たれ目がちな目つきのせいだろうか。
 そして注目すべきは、どうやらこの女……女優の卵らしい。
 オッサンが添付してきたデータにはレッスン中の写真まであった。どうやって入手したかは知らないが。
 よし、すぐに行くから待ってろ。
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