【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました

成実

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sideレイモンド

 すごい、あの美味しいお菓子を作っていたのが、ディアだったなんて。

 フレディの野菜クッキーも、弟の健康を考えてつくっていたんだな。

 結婚を前提の交際にも良い返事を貰えた。

 最近、グレイとフレディは帰省をせず、学院で過ごしている。

 彼らにも、ディアに会うために色々と世話になった。学院に戻ったら、お礼を言わなくては。まずは、父上達に報告に行こう。

 執務室の部屋をノックすると、母上の声で返事が聞こえた。

 「失礼します。母上にも話があるので、ちょうど良かったです。ちょうど二人でお茶されていたんをですね」

「ええ、レイモンドこちらにお座りなさい。私は旦那様の隣に行くから。
 随分うれしそうね。良いことでもあったの?
 ミュージカルに行った帰りだから、クライブ令嬢の事かしら?」


「はい、ディアと結婚を前提にお付き合いすることになりました。プロポーズは正式にしてと言われましたが」

「レイモンド、詳しく話しなさい」

 そこで、レストランの出来事や、お菓子はディアが作っていた事を話した。

「レイモンド、政略結婚ではなく、交際しているなら、指輪の一つもなく、結婚を前提の話が、よく言えましたね。
 私でしたらお断りよ。クライブ令嬢の寛大さに感謝するべきです。
 あの美味しいケーキを、令嬢がいつも作って振る舞ってくれていたのですよ。

 そして、必ずお土産まで渡してくれていた。それなのに、あなたはいつも何も持っていかなかったと聞いて、母は頭痛がします。

 ダンスの練習にしても、花束ぐらい持っていくべきでしょう。本当にダメダメです」

「レイモンド、私でさえ、お前の令嬢への態度は紳士としてダメだと思うぞ。
 私は、ローズと婚約前に、ダイヤの指輪、エメラルドのネックレス、ブレスレットをプレゼントしたぞ。クライブ令嬢は良く結婚してくれる気になったな」

「そんなに、ダメでしたか?高価な贈り物は、かえってディアの負担になると思い、しなかったのですが、では、今度のダンスの練習の時に渡せるプレゼントを用意します。

 母上、ディアのために専用の厨房を作りたいのですが、よろしいでしょうか?

 あと、身分あるものは厨房に入ってはダメだと言われているのを、正確な意味で伝わるようにするにはどうすればいいでしょうか?

 正しく意味が伝わらないとディアが堂々とお菓子作りができません」

「厨房を令嬢専用に作るのは問題ありません。

 グレイもたしか、そのような事を以前言っていましたね。グレイはお菓子は令嬢が作っているんじゃないかと最初から疑ってましたよ。

 確かに、正しい意味を伝えないと、令嬢が厨房に入るなんてって言われたら、あの美味しいお菓子が食べれなくなるわ。

 そうだわ、ディアに生クリームケーキとチーズケーキを作ってもらって、その日に、私が王妃様に届けます。

 ケーキは痛みやすいため、通常販売しないといわれているから、あのケーキの美味しさを知らないなよ。

 ケーキの美味しさを知ってもらい、王妃様のティーパーティーの時に、正しい意味を伝えて貰うのです。良い考えではなくて?」

「グレイは気づいていたんですか?周りの状況をよく見てますね。

 ケーキはディアに伝えておきます。王妃様が話してくださるのが一番だと思います。さすが母上です。

 あと婚約は、私としては早くしたいのですが、夜会もありますし、いつ頃が良いと思いますか?」


「レイモンド、夜会の時に婚約者と紹介したほうが、余計なちょっかいをかけられなくて済むぞ。

 そうだなあ、クライブ伯爵家には私達も今度一緒に行こう。違うな、晩餐に招待しよう。

 そして、その時に婚約の日を、決めよう。クライブ伯爵家のイベントにのって、ハッピーデーに婚約するのはどうだ」

「はい、ではそのようにクライブ伯爵家に連絡をお願いします。私は、ダンスの練習前にプレゼントを渡せるように準備しなければ。学院に帰る前に、宝石店に行ってきます。では失礼します」

 ディアの指輪のサイズを知らない、今回はネックレスを買いに行こう。

 公爵家が懇意にしている宝石店に行って色々見たが、ディアに似合うと思うものが見つからない。

 店員が、どういった感じの女性に贈るか聞いてくるので、どれだけ可愛いかを語って聞かせた。

 すると、奥から、別の店員が花をモチーフにしたダイヤのネックレスを出してきた。
 蝶が花にとまって感じのネックレスが一番シックリきた。クローバーの形をした模様が入ったブレスレットも出てきた。この店員はなかなかやるな。客のニーズを見抜いているな。
 
「このネックレスとブレスレットをプレゼントように包んで欲しい。ちなみに指輪のサイズを直すのに時間はどのぐらいかかるの目安を教えて欲しい」

「刻印を彫るのでした2週間ほどです。サイズ直しなら10日ほどかかります」

 ハッピーデーに指輪を送るなら来週には注文しないと間に合わない。

 次のダンスの練習の後にでも注文しにこよう。

 そろそろ学院に帰らなければならない時間だ、ネックレスとブレスレットの包を受け取り店を出た。
 
 店を出ると、目の前に馬車がとまった。窓をみると、殿下が手を振っている、方角的に殿下も学院に帰るようだ。馬車の扉が開き

「レイモンド、学院に帰るなら一緒の帰ろう。ハッピーデーの事で聞きたいのだ」

 殿下には昨日、説明したのだか何かあったのだろうか?

「はい、わかりました。では、一緒に帰りましょう。
ハッピーデーの何が聞きたいのですか?」

「リックのガラス工房とは、どこにあるのか聞きたい。トンボ玉ネックレスを買いたいのだが」

「まだ、販売前ですね、来週の日曜にでも、私と一緒に見に行きますか?
 私も買いに行きたいので。

 でも、トンボ玉ネックレスは気もちに応える時に贈るものですが、殿下の気になる女性がいたのですか? 

 こういっては何ですが、王妃様達は殿下の恋愛に賛成なのですが?」

「レイモンド、お前は私の友達だろ、ひとまずトンボ玉ネックレスを買うのは秘密にしてくれ。来週、いつ買いに行くか連絡が欲しい」

「わかりました。また連絡します」

 学院につき、殿下は教授に用があるというので別れ、私は部屋に戻った。

 ディアのプレゼントを机におき、このネックレスを受け取ったときの、ディアの顔を思い浮かべた。

 きっと、はにかむような笑顔をして、最後には顔を真っ赤にするに違いない。ディアを思うだけで、幸せな気もちになれる。

 
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