【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました

成実

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 さあ、朝からレイモンドと出かける準備をします。

 夜会ではないので、そこまでの準備はしませんが、髪型とお化粧をしないといけませんからね。

 出来たら、このような時は、アンにいてほしいです。

 以前はアンが私の専属でしたか、イブで働いているので、私の専属はナタリーなのです。

 もちろん髪型やお化粧など綺麗にしてくれますが、アンみたいに相談がし辛いのです。
 
「ナタリー、ミュージカルを観に行くの。このドレスに合わせて、髪型とお化粧をお願い。この小鳥の髪飾りをつけてほしいの」

「はい、お嬢様。髪は少し巻いて自然な感じにしましょう。この小鳥の髪飾りが映えますよ。

 今日は、デートですから、リップは少し大人っぽい色にするのは、どうですか?
 
「ナタリーに任せるわ」
 
 わあ、大人っぽい私が、鏡の中にいます。恋の相談は出来ないけど、私を変身させてくれる技術が凄いです。
 
「ありがとう。大人っぽくて、私じゃないみたい」

「とても、素敵です。シェルエント公爵令息もお嬢様に見惚れますよ」

 レイモンドの隣に立っても、自身が持てる自分でいたい。もうそろそろ時間ですね。レイモンドの事を考えたら、レイモンドが現れました。

「ディア、お待たせしました。今日は、いつもと雰囲気が違いますね。大人っぽいディアもステキです。さあ、行きましょう。
 レストランを予約してあります」

「はい、レイモンド様」

 レイモンドのエスコートで馬車に乗り込みます。

「ディアは特に好き嫌いはないですか?」
「はい、大丈夫ですよ」

「今日行くレストランは肉が美味しいです。いっぱい食べてくださいね」

「はい、レイモンド様はお肉が大好きだとフレディが言ってましたよ」

 レイモンドが連れてきてくれたお店は、とてもおしゃれな白を基調とした建物でした。

 私は初めて行くので、少しキョロキョロしてしまいました。

 通された部屋は個室で、窓からみえる景色が庭の花を見下ろす感じでした。
 メニューを渡されましたが、彼の好みの味を知りたいと思いレイモンドと同じ物を頼みました。

 野菜を綺麗に除けて美味しそうにお肉を食べている姿が可愛いです。

「レイモンド様、昨日私が、話があると言っていた事を話しても良いですか?」

「もちろんです。改まって何ですか?」

「フレディから、よく言われている❨身分高きものは厨房に入らず❩と言われている言葉は間違って伝わっていると聞きました。
 私達は、身分ある貴族は、厨房に入ってはいけないと教えられてきました。

 でも、本来の意味は、身分あるものは、他にやることがあるから、やれなければ入らなくても良いということが、徐々に意味が変わっていったと聞きました。
 だから、別に貴族でも厨房に入って食べ物を作ってもよいと思ってもいいですか?」

「そうです。身分高き者は他に色々やることがあるので、女性でも厨房に入らなくても良いと言うことだと聞いてます。ディア達は入ってはいけないと聞いているのですか?」

「はい。だから、うちでは私が厨房に入ることを隠していました。
 実は、イブのクッキーやケーキは、私が作っていたのです。やっと打ち明けることが出来ました」

「え、あの美味しい生クリームケーキやチーズケーキ、マカロン、クッキーをディアが作っていたんですか?
じゃあ、クローバーデーの、あのクッキーの小鳥の絵も?」

「はい、そうです。あの小鳥の模様は、この髪飾りがモチーフです。イブで売ってるお菓子のレシピは私の手作りが元です。今は、イブで働いているシェフが作っていますが。
 レイモンド様に渡すお土産のケーキは、全て私の手作りです」

 レイモンドがいきなり、私の手を握りながら

「ディア、私は絶対に貴方と結婚したいです。
 こんな事を言うのは、どうかと思いますが、正直に言います。

 最初、イブのお菓子を食べたときから貴方と結婚したいと思っていました。
 私は偏食で美味しいと思った食べ物が、肉とイブのお菓子で、イブのお菓子を食べる前は肉だけでした。
 政略結婚するならクライブ伯爵令嬢としたいと思い、グレイと一緒に伯爵家に行ったのです。

 私は、フレディが弟のように可愛くて、政略結婚したら、フレディが弟になるのだとまで考えてました。

 でも、ディア、貴方を一目見たときから、心が惹かれました。一目惚れと言うのか、貴方の側にいたくて、最初から私なりのアピールしたのですが、貴方には警戒され、グレイからは、節度を守らないと嫌われると叱られました。
 昔飼っていた、ウサギのポポちゃんの例をあげられ、クライブ伯爵家に近寄り禁止まで言われたんです。

 でも、やはりディアの側にいきたくて、ダンスのパートナーになりたいと言ったのです。

 社交界デビューのエスコートは絶対に譲れないと思いました。
 ダンスも得意ではなかったのですが、ディアとなら練習を頑張りたいと思いました。
 貴方に恥をかかせれないと思ったからです。

 結婚前提は良い返事はいただけませんでしたが、ディアとお付き合い出来て、私は幸せです。

 でも、お菓子を貴方が作ってると聞いて、もう誰にも貴方を渡したくないのです。どうか、私と結婚を前提に付き合って下さい」

「ウサギのポポちゃんって、なんですか?」

「昔飼っていたウサギです。ケガをしていて、治療が終わってても飼っていたんです。
 薄茶のふわふわして、とっても可愛くて、いつも私は側にいました。
 あまりに構いすぎたのか、私を見ると逃げるようになったのです。たから、もといた場所に返しました。

 だから、ディアに私が急接近したときの行動が、好きすぎてポポちゃんに構いすぎた昔の私を彷彿させたみたいで、グレイに注意されたのです」

「そうだったんですね。私もレイモンド様の事が好きです。だから、結婚を前提で付き合いましょう。
 でも、日を、改めて、プロポーズしていただけますか?」

「はい、ディア嬉しいです」

 レイモンドはよほど嬉しいのか、私の手を離してくれません。料理が食べれないです。ずっと私を見つめて微笑んでます。照れますぬ。

「レイモンド様、さあ食べましょう。ミュージカルの開演時間もありますし」

「そうですね、食べましょう」

 料理を食べながら、レイモンドが、結婚する前に公爵家に私専用の厨房を作らせるので、要望等を色々聞いてきます。
 多分、グレイが注意するのが、こういう気が早い事なのでしょう。それだけ、私の事が好きと言うことですね。

 劇場では、レイモンドはやはり目立っていたので、シェルエント公爵令息が連れている令嬢は誰なんだと、噂されています。

 更にレイモンドが私にだけ、優しく微笑むので、女性達の視線を、ビシバシ感じます。
 レイモンドは視線に慣れているのか、気にした様子もなく私をエスコートしてボックス席に連れて行ってくれました。
 席についても、私の側から離れません。

 ミュージカルは、簡単に言うと親に反対された恋人同士が、友達の助けで駆け落ちして結ばれ、愛を貫いた話でした。

 私はミュージカルよりも、レイモンドが手をずっと握りしめて、私を見つめているのが気になりました。

 もしかしたら、うさぎのポポちゃんの気持ちがわかったかもです。
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