【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました

成実

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 ミュージカルのデートから帰ってきました。

 やはり、お父様達に、結婚を前提にしたお付き合いに変わったことを話しておきましょう。

 なんとなく、レイモンドに似ている、公爵閣下が速攻で連絡をしてくる予感がします。

 執事にお父様とお母様の居場所を尋ねると、二人でショッピングに出かけ、もうそろそろ帰られるとのこと、話があるので帰って来たら教えて欲しいと執事に伝えておきました。

「お嬢様、旦那様達が帰られました。食事の前にお茶をしながら、話を聞かれるそうです。サロンにお越し下さい」

 さあ、レイモンドとのことを話しましょう。お父様は今度はどんな顔をされるのかしら。

「お父様、お母様、おかえりなさい。何か良いものは買えましたか?」

「ただいま。カウスボタンが欲しかったのだが、気に入るものがなかったよ。ディアもミュージカルは楽しかったかい?所で話とはなんだい?」

「はい、レイモンド様との交際の事は、以前も話してると思いますが、正式に結婚を前提とした交際になりました。

 きちんとお父様達に話しておかないと、もし公爵閣下に言われた時にお父様が困ると思いまして。

 レイモンド様は、割と気が早いと思うのです。その親ですので、もしかしたら、速攻で何か手紙が来そうで……」


「本当に結婚をしても大丈夫と思ったのかい?家のこととか考えなくてもいいんだよ」


「はい大丈夫です。私はレイモンド様が好きです。

 私の為に専用の厨房を作ってくれるそうです。

 フレディも言っていましたが、身分あるものが厨房に入ってはいけないという意味ではなかったです。

 きちんとした意味で伝わっている公爵家の方が、自由にお菓子が作れます。

 お父様、レイモンド様と結婚しても良いですか?」

 お父様が少し寂しそうな顔で私を見つめます。

「もちろんだとも。ディアがシェルエント公爵令息を好きなら問題ない。

 幸せになれると思うなら大丈夫。ディアはしっかりしているからな。

 ディアのアイディアで色々領地が潤ってきた。領民の生活を考えた副業を、何かあったらこれからもディアに聞いてもいいだろうか?

 今回のクローバーデーやハッピーデーの反響が凄い事になっている。

 ディアのアイディアなのに、私が褒められると、申し訳ない気もちになる。

 ほんとは、うちの娘が考えましたと言いたいんだ。

 でも、そうすると、ディアが大変な事になるから。私はディアに助けられてばかりだなあ」


「お父様、そのお気持ちだけで私は嬉しいです。

 私は結婚しても、クライブ伯爵家の仕事を手伝いますよ。私はクライブ伯爵家の領民が大好きですから」

 トントンとノックの音が聞こえる。

「旦那様にシェルエント公爵様から、お嬢様にシェルエント公爵令息様から手紙が届いてます」

 お父様の入れと言う返事で執事が手紙を運んできました。やはり、速攻ですね。宰相閣下は仕事が早いです。

 私宛の手紙は、身分あるものは厨房に入ってはいけないと言う間違った解釈を正したい。そのため、私の作ったケーキを王妃様に渡して、訂正してもらうと、シェルエント公爵夫人が言っている。そのために、生クリームケーキとチーズケーキを作って下さいですか。

 あと、私の指輪は何号か知りたいと書いてあります。もし、私自身で選びたかったら、ダンスの練習が終わったあとに宝石店に行きましょうですか。

 やはり、レイモンドも速攻ですね。お父様宛の手紙は何て書いてあるんでしょう?お父様を見ると、少し顔色が悪いですね。

「お父様、どうされました?何か嫌な事でも書いてありましたか?顔色が悪いです」

「あいかわらず仕事が早いと言うか、何と言っていいのか……。まずは、今度の土曜日に晩餐に招待された。

 令息とディアの婚約をハッピーデーにするのはどうかと。ディアが社交界デビューする日に、令息のエスコートで婚約したことを発表したいと書いてある」


 公爵閣下の血をレイモンドはしっかり受け継いでますね。思いついたら、そく実行、見習いたいとこですが、少し早すぎですね。


「お父様、さすがに少し早すぎですね。婚約の日取りが早すぎて、私が困惑していると書いてください。

 晩餐も予定があるから難しいとお断りしてください

。私からも、レイモンド様に、こんなにも慌てる必要はないと手紙に書きますので。お父様も、速攻で書いてください。私も書いてきます」

 困りましたね。流石に私も、ここまで慌てて婚約したくありませんから。  
 レイモンドにも、このことはビシっと言うつもりです。言わなければ今後何度でも同じことが繰り返されますからね。

 書いた手紙を確実に最速にレイモンドに届けるため、学院に出しました。 
 
 ケーキを作ることは了承ですが、婚約の日取りが早すぎる、こんなふうに慌てる必要はないのではと、抗議の手紙をかきました。
 私の気持ちを無視した婚約はしないと、はっきり意思表示をしました。

 手紙を見たレイモンドが慌てて返事を送ってきました。

 私の嫌がる事はしないと。ただ早く私と婚約したかっただけだから、怒らないで欲しいと書いてあります。

 公爵閣下にも、レイモンドから、婚約の話はゆっくりするように手紙を送っておくので、お父様に心配はいらないと伝えておいて欲しいと書いてあります。

 婚約や結婚は女性にとって大切なことですから、しっかり嫌な事は言います。

 こういってはなんですが、レイモンドの手綱はしっかり握りますよ。
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