【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました

成実

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 レイモンドからの返事の手紙を貰った次の日に、シェルエント公爵からお父様宛に手紙が届きました。

 内容を、要約すると、令嬢(私)と早く家族になりたくて、矢継早に進めようとしたことへの謝りでした。

 晩餐の招待も、日を改めて行いましょうと書かれていました。
 
 お父様も、ほっとした顔をしていました。お父様には、公爵閣下から何か言われましたら、必ず私に隠さず話してくれるように伝えました。

 ダンスの練習後に食べるケーキの仕上げをしているときに、慌てた様子でナタリーがレイモンドが来たことを伝えにきました。

 いつもより早いですね。でも、今ここを離れる気はありません。
「ナタリー、悪いのだけど応接室にご案内して、少しお待たせすると伝えて。もし、お急ぎなら、厨房にいることを話して来てもらってください」

「はい、お嬢様」
 
 レイモンドはたくさん食べますからね。お土産のケーキや王妃様にお渡しするケーキも作っている最中です。

 シェルエント公爵夫人には、王妃様に届けるケーキを作るので、今日の都合を伺ってあります。早く仕上げなければいけないのです。

 フル-ツの飾り付けも最新の注意を払ってます。生クリームのフル-ツケーキとチーズケーキをシェルエント公爵家にとどけてもらうよう指示します。

 後はお土産用と食べる用に飾り付けです。

 「お嬢様、令息がケーキ作りを、見学されたいというので、こちらに案内してもよろしいでしょうか?」

 「はい、どうぞ。レイモンド様、今仕上げの最中なので、もうしばらくお待ち下さい」

「はい、もちろんです。ディア、作りながらでいいので、聞いてください。
 こないだは、婚約を急がせるような事をしてしまい、すみませんでした。

 ディアからの返事で私は、嫌われたかもしれないと思うと眠れませんでした。

 フレディが大丈夫と言ってくれたのですが、不安で、いつもより、早い時間に来てしまいました。

 ディア、本当にすみませんでした。

 早く婚約してディアを誰にも渡したくなくて、気がせいてしまって、私を嫌わないで下さい」


「レイモンド様、確かに手紙では、慌てて婚約はしないと書きましたが、嫌いになったとは書いてなかったでしょう。

 婚約も結婚も私は、大切に思っています。だから、慌ててしようなんて考えてないのです。その事は理解して下さい。

 さあ、そんなに不安そうな顔をしないで下さい。まるで私のお父様みたいな顔をしていますよ。

 さあ、ケーキも出来ましたから、応接室で先生がみえるまで話をしましょうか。

 着替えたら、すぐに行きますので、先に応接室で、できたてのケーキでも食べてて下さい」

「ディア、許してくれてありがとう」
 
 汚れてもいいワンピースから、ダンス用のドレスに着替えます。
 着替えて応接室に行くと、レイモンドが美味しそうにケーキを食べていました。

「レイモンド様、お待たせしました。出来立てのケーキはふわふわで、美味しいでしょう」

「ああ、すごく美味しいよ。貴方を怒らせた後に渡すのは、なんだかお詫びの品物に思われるかもしれないけど、そんなのではなくてね。
 ディアにプレゼントしたくて選んだのだが、受け取ってくれるかい?」

 よほど私の書いた手紙が怖かったみたいですね、プレゼントを渡すのも不安にさせるほどですか。今度から書き方も注意しないといけませんね。

「ありがとうございます。開けてみても良いですか?」

 レイモンドが頷いているので、早速開けました。ネックレスが花と蝶のデザインで可愛らしいです。もう一つはブレスレットでクローバーがモチーフですね。レイモンドを見ると私が気に入るかじっと見ています。

「レイモンド様が選んでくれたのですか?可愛いです。さっそく、つけてみますね」

 レイモンドが素早く立ち上がり、ネックレスをつけるために私の後ろにまわりました。

 ネックレスをつけるときに、レイモンドの息が首筋にかかり、ドキドキします。

「とても似合います。ディアをイメージして選びました。今日のダンスの練習の後に、良かったら指輪を見に行きませんか?」

「はい、行きましょう。でもレイモンド様、約束です。デザインの強要はしないでくださいね。私にも好みがありますから」

「お嬢様、先生が見えられました」

「さあ、レイモンド様、ダンスの練習がんばりましょう」

 早くから練習しただけはありますね。最初の頃は心配でしたが、今は息もピッタリです。靴も、あれから慣らして痛みを感じなくなりました。

 レスリー子爵夫人からも、褒められ、このままの調子を維持しましょうと言われました。

 練習の後のお茶をして、今は宝石店に向かうために馬車で移動中です。

 エスコートで馬車に乗るときに手を借りてから、自然に手を繋いだまま馬車に乗っています。

 レイモンドの私が好きと言う気持ちが伝わってきます。なぜなら、ずっと私を見つめてくるからです。

 さすがに恋愛経験がなくても、こうまでわかりやすいと私でも気づきます。

 宝石店の店員が私のネックレスとブレスレットをみて、とても似合ってますと褒めてくれました。

 このネックレスを選ぶときに、私のイメージではないと、ずっと見て回り、やっと決まったネックレスなんですって。レイモンドには隠れて、コソッと教えてくれました。

 今日は、婚約指輪選びだと私は認識していたのですが、どうやら違ったようです。

 交際しているから、指輪をプレゼントしたいと言われました。

 婚約指輪は、シェルエント公爵で代々受け継がれてきた指輪を私の指のサイズに直すそうです。

 結婚指輪は、結婚の日取りが決まってから選ぶので、今日は私の欲しい物を選んで欲しいと言われました。

 婚約指輪が代々使われきた指輪だとしらなかったので、デザインを強要しないでと言ってしまった事を後悔しました。

 あの言い方では、レイモンドの選んだプレゼントのデザインが気に入らなかったと考えても仕方がないからです。

「レイモンド様なら、私にどれが似合うと思いますか?」

「ディアの好きなデザインを選んで。私が選んだものは、貴方の好みとあわないといけないからね」

 やはり、自分が選んだものが気に入って貰えなかったと思ってますね。

「私はレイモンド様に選んで欲しいのです。でも、私にも好みがありますので、意見は言いますけど。

 そして、私の好みを知っていって下さい。どれが良いと思いますか?」

 少しレイモンドが困った表情を見せました。

「レイモンド様、実は今日は、婚約指輪を選ぶ為だと思ったのです。

 婚約指輪となるとゴージャスな指輪だと思い、私はあまりゴージャスな指輪はしません。

 たから、デザインの強要はしないでくださいと言いました。
 でも、普段使う指輪だからこそ、レイモンド様に選んでほしいのです。このネックレスみたいに、私に似合うのを選んで下さい」

 レイモンドの表情がぱぁーと輝きました。

 ダンスの練習前の会話を思い出すと、可愛いと思ったけど、婚約指輪に気をとられて、気に入ったデザインでなかったと思われるような会話をしていたかも。

 せっかく、レイモンドが私を思って選んでくれた気持ちを、大切にしたいです。

「ディアは、どの石が好きですか?」

「私は、レイモンド様の瞳の色が好きです。ダイヤも、どの色の服にも合わせやすいですし」

「これなんてどうですか?サファイアとダイヤで花があしらってます。私のディアに対するイメージが花なのです」

「まあ、可愛いです。普段にはめれて、ずっとレイモンド様と一緒にいる気分です」

 え、レイモンドの顔が真っ赤になりました。

 私の言葉で何か想像したのですか?その様子をみた私も恥ずかしくなってきました。

「この指輪はサイズはどうですか?もし直す必要がなければ、そのままつけて、少し街を歩きませんか?

 よければ、リックのガラス工房の場所を教えて欲しいのです」

「はい、天気がいいので、散歩日和ですね。ここからですと、少し距離があるので馬車で移動して、街の中心部に来たら歩きましょう」

 宝石店をでて、リックさんのガラス工房の話をしました。明日ガラス工房に行くから道を覚えたいそうです。

「では、今から一緒に行きませんか?」


「ありがとうございます。でも明日、殿下と行く約束がありまして、今日は場所だけで」


「そうなんですね。ご友人の殿下と行かれるのですね。え、殿下ですか?待ってください。殿下というのは王族の殿下ですか?」

「ディアは面白いことを言いますね。殿下は第二王子です」

「ちょっとお待ち下さい。殿下をガラス工房に連れて行ってもいいのですか?
 護衛とかたくさんいますと、そんなに大きくない場所ですから」

「大丈夫ですよ。私がついていますから、一応腕がたつ侍従も連れてますし、こないだの祭りみたいに目立たないようにしますから」
 
 祭りで目立ってないと本気で思っているのですか?

 どう見ても貴族が、お忍びで街に遊びに来ましたかんで満載でしたよ。
 
「レイモンド様、クライブ伯爵家の事業でもありますし、私も明日はガラス工房に行きます。

 店員になってアドバイスします。殿下には、私が店員でいることだけお知らせ下さい。

 あくまで平民のイベントですので、言葉使いはご容赦くださいと伝えてください」


「殿下は、言葉とか全然気にされないから大丈夫です。ディアの店員スタイル楽しみです。

 でも、私達だけにですよね?他の男性のアドバイスはしませんよね?」

「はい、レイモンド様達だけです。午前、午後どちらに見えられますか?」

「お昼近い午前になると思います。こないだランチした店でお昼をとる予定ですので」

「わかりました。では、明日ガラス工房でお待ちしています。もし、時間が変わりましたら連絡をお願いしますね」

 リックさんのガラス工房の場所を近くまで散歩がてら歩き、お金は銀貨を持っていくことを説明しました。

 馬車を降りるときに、お別れの際に、額にチュッとするのは、もはや当たり前になりました。

 耳元で囁かれる好きと言う言葉には、まだ赤面してしまいます。

 さあ、明日の為に、早く寝ましょう。
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