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しおりを挟む幸い、それなりの蓄えはある。だから当面冒険者業ができなくも生活していけるし、ギルド長も呪いの解析がうまくいけば一か月もかからず元の姿に戻れると言っていた。だから今回の自宅待機はちょっと長い休暇だと思うことにした俺は久々の固い地面ではない柔らかいベッドの感触に微睡ながら明日からの休暇をどうやって過ごそうかと考えながら瞼を閉じた。
……の、だったが……
「うわああああ!退屈だあああっーー!」
自宅待機を命じられて七日目。俺は完全に暇を持て余していた。いや、最初の数日こそ今まで忙しすぎて全然出来てなかった家の掃除とか使わなくなった防具、武器、道具の整理をしながら過ごしていたのだが、それも集中的にやれば三日も立たずに終わってしまい、完全にやることがなくなったここ数日間は自宅にあった本を読んだり、手の込んだ料理を作ったり、屋根の上に泊まっている小鳥を観察したり……と、時間をつぶしていたがそれも限界を迎えていた。まあ、元々小さい時から家でじっと本を読んでいるより外で遊ぶ方が好きだったしな……
「かと言って、この姿じゃ酒場にも賭博場にも娼館にもいけねえし……はあ、泥棒でもいいから誰か来てくれないかなあ……」
などと、あまりにも暇過ぎてそんなくだらないことを口にしながらベッドの上でゴロゴロしていた……そんな時。
ガンガン!ガンガンガン!!
「うわっ!?な、なんだ!?」
突如鳴り響いた激しいノックの音に俺はベッドから飛び起きる。
ドンドン!ガンガンガン!
「な、なんなんだ一体……?ああもう五月蝿いな!そんなガンガン扉叩くなって!今開けるから!」
尚も響く激しいノック音に若干怒りつつ玄関の扉に近付いた俺は急いで扉を開ける。すると、そこには……眼鏡を掛けた温厚そうな茶髪の青年が立っており、青年は俺を見るなり嬉しそうにニコリと笑みを浮かべて挨拶してきた。
「こんにちわ!ここ、アイザックさんの家であっていますか?」
「は?あ、ああ……そうだが……お前は?」
突然現れた見知らぬ青年に警戒する俺に、青年は笑みを崩さず言葉を続ける。
「あっ、すみません!自己紹介がまだでしたね!ボクの名前はザザ!伝説級冒険者アイザックの大、大、大ファンなんです!あの、アイザックさんはご在宅ですか?もしいたら冒険の話とか色々聞かせて頂きたくて……いや最悪サインを頂くだけでも構いません!……あれ?もしもし?あの、聞いていますか?」
「…………」
ファン?俺の…ファン!?あまりにも言われ慣れない言葉だったせいで理解するのに時間がかかってしまったが、つまり目の前の青年は伝説級冒険者である俺に憧れてる奴で俺に憧れるあまり俺に会いに自宅まで来てしまったということか!?
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