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しおりを挟む伝説級冒険者アイザック。冒険者の中でこの名を知らぬものはいないだろう。依頼達成率100パーセントいう驚異の達成率を叩き出し、冒険者協会設立以来誰も手にしたことがなかった伝説級冒険者の称号を手にし、冒険者たちの羨望の眼差しを一心に浴びる男である。そんな冒険者の頂点に立ち、まさに人生の絶頂期と言って過言ではない男は今現在……
「なんじゃこりゃあああーーッ!!」
高難易度ダンジョンの中で叫んでいた。いや、だって仕方ないだろう!?オークキングの腎力と素手で渡りあえたゴツい腕が大剣すら握れないぷにぷにの柔らかい短い腕に変わり、ゴーレムの装甲さえも砕いた自慢の強靭な足が人食植物の触手に掴まれただけでぽっきり折れてしまいそうな細い足に変わり、まばらに髭が生えて眼光が鋭く視線だけで人が殺せそうだと称された顔はぬいぐるみが似合いそうな幼い少年の顔に変わり、そして男の象徴である『アレ』が小さくなっていれば誰でも叫ぶだろう。それが例え強敵に分類される魔物たちを全部倒し切って気が抜けてクシャミをした拍子に罠を踏んでしまったという馬鹿みたいな理由が原因とは言え……だ。
「あ、ああ……俺の自慢の息子がぁああ…………くっ!しっかりしろ俺!と、とにかく高難易度ダンジョンの中でいつ魔物が襲ってくるかわからない状況でこんな戦えない状態でいるのは危険だ!早くここから脱出しなければ……!ええっと、帰還石……帰還石は……あっ、あった!よし、転移魔法!」
魔物の体液が染み込み異臭を放つ薄汚れたブカブカの服の中から帰還石を取り出した俺は帰還石を握り締め、呪文を唱えた。途端、石から目が眩む様な強い光が放たれて俺を浮遊感が襲い、俺の視界は白に染まっていく。ちなみにこの後、なぜか転移先が所属ギルドのギルド長の部屋に設定されており、突然現れた全裸の少年の姿を見たギルド長が悲鳴と困惑の雄叫びを上げるとは知らずに……。
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「まさか、あの温厚なギルド長があんなに怒るとは……」
あの後、混乱が落ち着いたギルド長に俺がアイザックだと伝えてもなかなか信じて貰えなくて信じて貰えるまでアイザックしか知らないギルド長の恥ずかしい話を話してようやく信じて貰ってから事情を説明したら普段の温厚さが嘘のように凄い剣幕で怒られて……などと紆余曲折あってギルド長から暫くの間、自宅から出ないように言い渡された俺は一か月振りに帰ってきた自宅のベットに寝そべりながら呟いた。
ギルド長曰く、俺がこんな姿……幼い少年になった原因はおそらく俺が『踏んだ罠に呪いがかかっていたせい』だと言う事と、俺が探索していたあのダンジョンは古代に作られたダンジョンだから『解呪方法を見つけるのは時間がかかる』こと、あとはギルドのエースである俺がこんな姿になったことは『ギルドの威厳に関わる事態だから他言無用。なので絶対に他の者にバレてはいけません。もしこんなことがほかの者にバレたりでもしたら……ああ、くそっ!せっかくこの国の武門の名家であるゴリアテ家のご息女にお前を婿入りさせてそこから王室との縁を育み、我がギルドを王室公認の一流ギルドにしようとしていたというのに……!』……とかなんとかぶつぶつわけのわからないことを言っていたが、つまるところ解呪方法が見つかるまで冒険者業は休業、自宅待機というわけだ。
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