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「あっ」
「あっ」
絢爛豪華な王城の廊下で二つの声が重なり合った。その声の一つである高貴な礼装に身を包んだ青年は目の前にいる大勢の侍女達を引き連れた美しいドレスを身に纏った高貴な女性を舐める様に見ると馬鹿にしたようにハッと鼻で笑った。
「ハッ、また王室の金でそんな高いドレスを買ったのか。流石は元公爵令嬢らしい金の使い方だなぁ?」
「……フフッ、王妃たるもの身嗜みはきちんとしなければなりませんからね。そういう陛下こそまた宝飾品を買ったと聞きましたが、妻である私を差し置いて一体どなたに差し上げるおつもりなんでしょうか?」
「妻?今、妻と言ったか?夜の務めも果たさず離宮に引き篭もっている王妃がよく言う」
「うふふ、その言葉そのままお返ししますわ。……ねえ、裏切り者の陛下?」
「ははは、たかが他の女を抱いただけで裏切り者呼ばわりとは……王妃としての度量が知れるなあ?」
「おほほ、お褒めいただき光栄ですわ」
「ハハハッ」
「オホホホ」
お互いに顔をヒクヒクと引き攣らせながら嫌味の応酬を繰り返す国王夫妻に周りにいる臣下達や侍女達は「またか」と困った顔をする。そう。この嫌味の応酬は国王夫妻の城内別居が始まった一年前から続いているのだ。一年間も国王夫妻の嫌味の応酬に付き合わされている臣下達や侍女達がこんな顔をしてしまうのも無理はないだろう。
だが、何故誰も国王夫妻の嫌味の応酬を止めないかと言えばそれはひとえに国王夫妻が歩んできた道のりにある。
青年……国王シルバレットは齢十四歳にして流行り病により両親を失い若くして王座に着いた若き王であり、王座に着いたばかりの頃のシルバレットは両親を亡くした悲しみと突然降り掛かって来た王として責務により傍目から見ても荒れに荒れていた。そんなシルバレットの妻になるのを当時の王妃候補の令嬢達は誰もが嫌がったが、唯一、高貴な女性……公爵令嬢アンネロッタだけは自ら進んで妻になることを望み、そして王妃になった。
初めこそ王妃という地位を狙って自分の妻になったんだろうという疑心からアンネロッタに対してかなり酷い態度や言葉をぶつけていたシルバレットだったが、アンネロッタの三歳年上というアドバンテージを生かした気遣いや献身的な心遣いにより段々と態度が軟化して……それこそ一年前までは王国のどの夫婦よりも仲睦まじい夫婦だったのだ。だから、一番夫婦仲が最悪だった時期を知っている臣下達や侍女達は今回の城内別居はただ夫婦喧嘩が長引いているだけであり、夫婦仲に決定的な亀裂が入ったわけではないと、二人の様子から薄々察していた。
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