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しおりを挟むきっと彼は日常的に暴力を振るう生活を送っていたのだろう。生前の経験を反復するというアンデットの特性を考えればそうとしか思えない。それも王都によくいる肩がぶつかっただけで因縁を付けてきて金を払わなければ暴力を奮うゴロツキなどの類ではなく、『魔王軍との戦いから逃げ出す筈がない』『故郷を魔王軍に奪われた』という女の言葉を信じればきっと彼はいつ死んでもおかしくない過酷な戦場で汚泥と血に塗れながら多くの敵を屠り「死ねぇえええ!薄汚い魔物共がーッ!」と叫びながら魔物を惨殺して回る復讐鬼ーー……
「おっ、お前!この御方に何をしたの!?」
そんな僕の思考を遮るように女の怒声が響き渡り、視線をそちらに向ければ顔を真っ赤にした女が怒りに震えながら僕を見ていた。もし僕の推測が正しければ彼の生前は魔王軍と最前線で戦っていた『神聖騎士団』の一員で、目の前にいる女は戦場で傷ついた彼を治したことをきっかけに神に仕える身でありながら『聖騎士』に惚れてしまった女神官……と考えた方が自然だろう。それしか考えられない。むしろそれしかなくない?だったら僕が取るべき行動は一つーー……
「ふ、ふふふ……」
「な、何ですか!?何がおかしいのですか!?」
「いや、失礼。ついここが王都じゃなくて良かったなあ……と思いまして」
「一体どういう意味で……ハッ!?ま、まさか……!」
「ええ、そのまさかですよ。ふふっ……」
「な、なんて馬鹿な事を考えて……あ、貴方達!武器を構えなさい!この男はワタクシ達を皆殺しにするつもりーー……」
「この度は誠に申し訳ありませんでしたーーッ!!!」
「へ?」
突然、地面に両膝を付き、勢い良く土下座した僕の姿に女は間の抜けた声を出す。が、僕は気にせず畳み掛ける様に言葉を続けた。
「いやまじで許してください!決して悪気があったわけじゃないんです!!だってまさか王都で勇者レオンハルトに次ぐ人気を誇っている神聖騎士団の一員があんな辺境の辺境の麦畑で惨たらしい死体になって死んでいるなんて思わなくて……てっきり金銭関係で殺された冒険者だと思ったから……だから別に神殿に喧嘩を売るつもりで聖騎士をアンデットにしたわけじゃないんです!どうかお願いします!まじで異端審問官にだけは突き出さないで下さい!」
そう言って懇願する僕の姿に女と兵士達は呆気に取られていたが、しばらくして我に返った兵士の一人がハッと何かに気付くと、顔面を蒼白させて震える声で呟いた。
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