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第四章 星綾祭
第二十五話 幕間「エリちゃ」
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星綾祭が終わってから数日経った日。開催期間中は準備に明け暮れてお祭りムードだった学園内も平常営業に戻り、いつもの学び舎へと戻った。
アルヴィナ、レティシア、そして寮の違うユスティナが途中で合流し、三人揃って学園へと登校していた。講義室に入ると、見慣れない姿がちょこんと席に座っている。
「あれ、エリスじゃん」
「そういえば、エリスって授業に出ているとこ見たことがなかったよね……」
年齢にしては背の低い、髪がぼさぼさになった紫色の頭が反応した。
『いやあ~研究が忙しすぎて授業とか出てらんなかったんだよね~☆』
耳慣れない喋り方に三人はギョッとした。発せられた声はエリスのものに間違いないのに、まるで口調が違う。
「今喋ったのエリス?」
『そだよ~エリちゃんです』
そう言うとエリスが振り返る。表情は相変わらずおどおどして視線を合わせない彼女だったが…。
『びっくりした? ねえねえびっくりした?』
「ちょっと、どうしちゃったのよ。あんた顔と喋り口調が一致しなさすぎよ」
レティシアがもっともなツッコミを入れる。
「……さっきから口が動いていないが。もしかして通信機を使ってるのか?」
『するどーい! さすがはマイ・フレンド』
するとエリスは、デスクの下に隠していたらしいぬいぐるみを取り出した。
「あ、モルモットちゃんだ」
「アルヴィナ、そこは今触れないでくれ。話が進まない」
『この中に受信機が仕込まれていてね、私の代わりに喋ってくれるの。エリスとチャットできるから「エリちゃ」って呼んでね☆』
エリスがモルモットのぬいぐるみ「エリちゃ」を両手で持ち、前足をぱたぱたと動かす。
「通話は発話した音を『離れた場所で声を発声させる魔法』をネコノメ通信に乗せている筈だ。だがお前は口でひと言も喋っていない。仕様と違うじゃないか」
『うん、それなんだけどね、エリちゃん……喋るの苦手すぎて口を使うとどうしても吃っちゃうんだよね。だから、喋りたいなと頭で思ったことをスペクトラムにエンコードかけてやれば魔法を再現できないかなって……』
ユスティナが呆れた表情で、こめかみを押さえる。
「……で、やったのかお前」
『できちゃった>< これで皆とも思う存分おしゃべりできるよー』
「わあ、お話しやすくなって良かったね、エリス」
アルヴィナは内容を少しも理解できなかったが、エリスが苦手を克服できたらしいという点だけは察して、緩い感想を述べた。
『ありがとう>< エリちゃん嬉しい』
「エリス、キャラ変わりすぎ。あんた素直な頑張り屋さんかと思ってたけど、頭の中はこんな感じなのね」
『口での会話って一度頭で考えるから言葉を選んじゃうんだよ。〈エリちゃ〉はそのへんダダ漏れしちゃう仕様なんで許してね、めんごめんご』
「あはは、わたしはどちらも素直なエリスで好きだよ」
『アルって本当に優しいから、好都合だわー』
「え……」
聞き捨てならないひと言が混ざった気がして、アルヴィナは固まった。
『でさあ、前から気になってるんだけど、アルってユスティナのこと〝ユスティナさん〟って今も呼んでるよね』
「そういえばそうかも。あたしもユスティナって呼んでるし」
『だめだよぉー、アルとレッチが愛称で呼び合ってるのに、一人だけ仲間外れにしたら可愛そうじゃん。いつも寂しがってるんだからね』
「おい」
ユスティナが顔を真赤にして、エリスの口を塞ぐ。
『ダメダメ、口で喋っていないから無駄だよー。でさー、呼称なんだけど〝ユス〟も〝ティナ〟もなんか微妙じゃん。だから音を変えて〝ジャス〟ってどう?』
「じゃす」「ジャス?」
アルヴィナとレティシアが同時に聞く。
『そうそう、ジャスティス。あんた真面目だからぴったりでしょ』
「い、嫌だ! 人生ではじめてつけられる愛称がそれは嫌だ!」
ユスティナにしては珍しく激しく狼狽する。
『ちぇー、まあいいや。じゃあ自分で何か代わりを考えてくるまでは、とりあえずジャスって呼ぶね』
「じゃ、そういうことで。よろしくねジャス」
「ジャスか~、頼れるユスティナさんにぴったりだと思うよ。改めましてよろしくね」
「う、嘘でしょ……」
変わり者の四人組ではあったが、内面はまともだと思っていたエリスにとんでもない隠し玉が用意されていたことに、頭が痛くなるユスティナであった。
アルヴィナ、レティシア、そして寮の違うユスティナが途中で合流し、三人揃って学園へと登校していた。講義室に入ると、見慣れない姿がちょこんと席に座っている。
「あれ、エリスじゃん」
「そういえば、エリスって授業に出ているとこ見たことがなかったよね……」
年齢にしては背の低い、髪がぼさぼさになった紫色の頭が反応した。
『いやあ~研究が忙しすぎて授業とか出てらんなかったんだよね~☆』
耳慣れない喋り方に三人はギョッとした。発せられた声はエリスのものに間違いないのに、まるで口調が違う。
「今喋ったのエリス?」
『そだよ~エリちゃんです』
そう言うとエリスが振り返る。表情は相変わらずおどおどして視線を合わせない彼女だったが…。
『びっくりした? ねえねえびっくりした?』
「ちょっと、どうしちゃったのよ。あんた顔と喋り口調が一致しなさすぎよ」
レティシアがもっともなツッコミを入れる。
「……さっきから口が動いていないが。もしかして通信機を使ってるのか?」
『するどーい! さすがはマイ・フレンド』
するとエリスは、デスクの下に隠していたらしいぬいぐるみを取り出した。
「あ、モルモットちゃんだ」
「アルヴィナ、そこは今触れないでくれ。話が進まない」
『この中に受信機が仕込まれていてね、私の代わりに喋ってくれるの。エリスとチャットできるから「エリちゃ」って呼んでね☆』
エリスがモルモットのぬいぐるみ「エリちゃ」を両手で持ち、前足をぱたぱたと動かす。
「通話は発話した音を『離れた場所で声を発声させる魔法』をネコノメ通信に乗せている筈だ。だがお前は口でひと言も喋っていない。仕様と違うじゃないか」
『うん、それなんだけどね、エリちゃん……喋るの苦手すぎて口を使うとどうしても吃っちゃうんだよね。だから、喋りたいなと頭で思ったことをスペクトラムにエンコードかけてやれば魔法を再現できないかなって……』
ユスティナが呆れた表情で、こめかみを押さえる。
「……で、やったのかお前」
『できちゃった>< これで皆とも思う存分おしゃべりできるよー』
「わあ、お話しやすくなって良かったね、エリス」
アルヴィナは内容を少しも理解できなかったが、エリスが苦手を克服できたらしいという点だけは察して、緩い感想を述べた。
『ありがとう>< エリちゃん嬉しい』
「エリス、キャラ変わりすぎ。あんた素直な頑張り屋さんかと思ってたけど、頭の中はこんな感じなのね」
『口での会話って一度頭で考えるから言葉を選んじゃうんだよ。〈エリちゃ〉はそのへんダダ漏れしちゃう仕様なんで許してね、めんごめんご』
「あはは、わたしはどちらも素直なエリスで好きだよ」
『アルって本当に優しいから、好都合だわー』
「え……」
聞き捨てならないひと言が混ざった気がして、アルヴィナは固まった。
『でさあ、前から気になってるんだけど、アルってユスティナのこと〝ユスティナさん〟って今も呼んでるよね』
「そういえばそうかも。あたしもユスティナって呼んでるし」
『だめだよぉー、アルとレッチが愛称で呼び合ってるのに、一人だけ仲間外れにしたら可愛そうじゃん。いつも寂しがってるんだからね』
「おい」
ユスティナが顔を真赤にして、エリスの口を塞ぐ。
『ダメダメ、口で喋っていないから無駄だよー。でさー、呼称なんだけど〝ユス〟も〝ティナ〟もなんか微妙じゃん。だから音を変えて〝ジャス〟ってどう?』
「じゃす」「ジャス?」
アルヴィナとレティシアが同時に聞く。
『そうそう、ジャスティス。あんた真面目だからぴったりでしょ』
「い、嫌だ! 人生ではじめてつけられる愛称がそれは嫌だ!」
ユスティナにしては珍しく激しく狼狽する。
『ちぇー、まあいいや。じゃあ自分で何か代わりを考えてくるまでは、とりあえずジャスって呼ぶね』
「じゃ、そういうことで。よろしくねジャス」
「ジャスか~、頼れるユスティナさんにぴったりだと思うよ。改めましてよろしくね」
「う、嘘でしょ……」
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