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第五章 牙を剥く世界
第二十八話 蠢くものたち
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学園地下の入り口で、生徒たちは緊張した面持ちで装備を確認していた。
総勢四十人、十パーティを、さらに三つのグループに分け、それぞれ別のエリアを割り当てる段取りになっている。
アルヴィナの仲良しグループ含めた三パーティは集まり、探索の打ち合わせをしていた。
『みんな〈ステラソナ〉持ってる?』
エリスの質問に、ユスティナが小さな水晶のような小型端末をポーチから取り出す。
「〈ネコノメ通信〉……エリスの発明が早速役に立つね」
エリスがえっへんと胸を張る。
『全員が使えるように、まだ持ってない子にも学園から貸出をしてもらってるよ。これで離れたパーティとも情報交換しながら攻略できるはず。あ、うちら四人のプロトタイプは特別製ね☆』
レティシアが杖を構え直す。
「よし、準備万端ね。行きましょう」
一行は、湿気を孕む地下へと足を踏み入れた。古代の魔法遣い達が築いた下水道は、想像以上に広大だった。
「すごい……こんな場所があったなんて」
アルヴィナが呟く。天井に這う管から滴る水音が、洞窟内に響いている。
「《蠢くもの》はどこにでもはりつくことができる。壁や天井にも注意して」
最後尾のユスティナが警告する。
〈ステラソナ〉から声が聞こえてきた。
『オリオン2、第二区画で待機中』
『オリオン3。第三区画に到着しました』
「了解。オリオン1は第一区画を担当する」
ユスティナが応答する。各パーティの情報共有は滞り無く、出だしは順調にみえた。
『あ……あれ。きもきも』
エリスが震え声で指差す。通路の向こうに、ぬめぬめとした半透明の塊がぶるぶる震えていた。《蠢くもの》だ。
大きさは小麦や雑穀を保存しておく大袋ほど。表面には緑色の粘液が滲んでいる。
「来るわよ」
レティシアが杖を構える。《蠢くもの》のがゆっくりと近づいてくる。動きは鈍重だが、不気味な存在感があった。
先頭に立つアルヴィナが〈運命流〉を起動。しかし目視している時と情報は変わらず、特に危険な予感はしない。
レティシアが、得意の〈弧炎〉を、粘液の魔物に巻き付けて締め上げる。ジュウッという音とともに蒸発した。
「やったね」
アルヴィナがほっとする。
「思ったより弱いかも」
「おかしい。資料では《蠢くもの》は群れで行動するはずだが……」
ユスティナは眉をひそめた。
その後の討伐も順調に進んだ。なぜか対象は一体ずつ現れ、四人の連携で次々と撃破していく。
前衛二人が通過した後で、背後を取られた時はユスティナの〈水分を気化させて凍結する魔法〉で、粘液の体を気化冷却で凍らせ動きを封じる。その後、アルヴィナかレティシアの炎が粉砕する。
戦闘に参加するユスティナに変わって、エリスは真ん中で通信を担当することになった。
完璧なチームワークだった。
『こちらオリオン3、第三区画の掃討完了』
『オリオン2も順調です』
〈ステラソナ〉から朗報が続く。
「みんな無事そうね」
「このペースなら、予定より早く終わるかもな」
レティシアが安堵の笑みを浮かべる。ユスティナも珍しく楽観的だった。
しかし、エリスだけは不安そうな表情を浮かべていた。
「どうしたの、エリス?」
『なんか変なんだよねー。通話中に時々妙なノイズが……』
その時、遠くから地響きのような音が聞こえてきた。
ドドドドド……
四人が身を寄せ合う。
「何の音?」
「分からない……でも、嫌な予感がする」
『全パーティにほーこく。異常事態発生の可能性あり。巨大な何かが動き回ってる!』
地響きが次第に大きくなってくる。そして、通路の向こうから巨大な影がゆらりと現れた。
それは今まで見た《蠢くもの》とは比較にならない大きさだった。
建物ほどもある緑色の塊。そしてその表面から、人間の顔のような形が浮き出しては沈むを繰り返している。
「嘘……」
「《蠢くもの》が……集合してる?」
四人とも息を呑む。
「エリス! 皆に撤退の指示だ! アル、レッチ!炎で動きを止めながら逃げ――」
ユスティナがそう叫んだ瞬間、〈ステラソナ〉から悲鳴じみた声が聞こえてくる。
『助けて! こちらに向かって……』
『オリオン2、こちらにも巨大な何かが……』
『みんな逃げて!』
〈ステラソナ〉を握るエリスの手が震えている。
「なによあれ……」
レティシアが指さした先、巨大な《蠢くもの》から浮き出てきた顔の部分が、本体から分離し人型のシルエットへと形を変えていく。
そのまま二本の脚(のようなもの)で立ち上がると、顔があるあたりをこちらを向けた。まるでそこに目があって、見つめているように。
アルヴィナは杖を握り直す。順調だった討伐が、一瞬で悪夢に変わろうとしていた。
◆用語説明
〈水分を気化させる魔法〉
対象に含まれる水分を気化させた時に熱を奪い、凍りつかせる魔法。不定形の《蠢くもの》には水分を多く含むという考察のもとにユスティナが考えついた。
総勢四十人、十パーティを、さらに三つのグループに分け、それぞれ別のエリアを割り当てる段取りになっている。
アルヴィナの仲良しグループ含めた三パーティは集まり、探索の打ち合わせをしていた。
『みんな〈ステラソナ〉持ってる?』
エリスの質問に、ユスティナが小さな水晶のような小型端末をポーチから取り出す。
「〈ネコノメ通信〉……エリスの発明が早速役に立つね」
エリスがえっへんと胸を張る。
『全員が使えるように、まだ持ってない子にも学園から貸出をしてもらってるよ。これで離れたパーティとも情報交換しながら攻略できるはず。あ、うちら四人のプロトタイプは特別製ね☆』
レティシアが杖を構え直す。
「よし、準備万端ね。行きましょう」
一行は、湿気を孕む地下へと足を踏み入れた。古代の魔法遣い達が築いた下水道は、想像以上に広大だった。
「すごい……こんな場所があったなんて」
アルヴィナが呟く。天井に這う管から滴る水音が、洞窟内に響いている。
「《蠢くもの》はどこにでもはりつくことができる。壁や天井にも注意して」
最後尾のユスティナが警告する。
〈ステラソナ〉から声が聞こえてきた。
『オリオン2、第二区画で待機中』
『オリオン3。第三区画に到着しました』
「了解。オリオン1は第一区画を担当する」
ユスティナが応答する。各パーティの情報共有は滞り無く、出だしは順調にみえた。
『あ……あれ。きもきも』
エリスが震え声で指差す。通路の向こうに、ぬめぬめとした半透明の塊がぶるぶる震えていた。《蠢くもの》だ。
大きさは小麦や雑穀を保存しておく大袋ほど。表面には緑色の粘液が滲んでいる。
「来るわよ」
レティシアが杖を構える。《蠢くもの》のがゆっくりと近づいてくる。動きは鈍重だが、不気味な存在感があった。
先頭に立つアルヴィナが〈運命流〉を起動。しかし目視している時と情報は変わらず、特に危険な予感はしない。
レティシアが、得意の〈弧炎〉を、粘液の魔物に巻き付けて締め上げる。ジュウッという音とともに蒸発した。
「やったね」
アルヴィナがほっとする。
「思ったより弱いかも」
「おかしい。資料では《蠢くもの》は群れで行動するはずだが……」
ユスティナは眉をひそめた。
その後の討伐も順調に進んだ。なぜか対象は一体ずつ現れ、四人の連携で次々と撃破していく。
前衛二人が通過した後で、背後を取られた時はユスティナの〈水分を気化させて凍結する魔法〉で、粘液の体を気化冷却で凍らせ動きを封じる。その後、アルヴィナかレティシアの炎が粉砕する。
戦闘に参加するユスティナに変わって、エリスは真ん中で通信を担当することになった。
完璧なチームワークだった。
『こちらオリオン3、第三区画の掃討完了』
『オリオン2も順調です』
〈ステラソナ〉から朗報が続く。
「みんな無事そうね」
「このペースなら、予定より早く終わるかもな」
レティシアが安堵の笑みを浮かべる。ユスティナも珍しく楽観的だった。
しかし、エリスだけは不安そうな表情を浮かべていた。
「どうしたの、エリス?」
『なんか変なんだよねー。通話中に時々妙なノイズが……』
その時、遠くから地響きのような音が聞こえてきた。
ドドドドド……
四人が身を寄せ合う。
「何の音?」
「分からない……でも、嫌な予感がする」
『全パーティにほーこく。異常事態発生の可能性あり。巨大な何かが動き回ってる!』
地響きが次第に大きくなってくる。そして、通路の向こうから巨大な影がゆらりと現れた。
それは今まで見た《蠢くもの》とは比較にならない大きさだった。
建物ほどもある緑色の塊。そしてその表面から、人間の顔のような形が浮き出しては沈むを繰り返している。
「嘘……」
「《蠢くもの》が……集合してる?」
四人とも息を呑む。
「エリス! 皆に撤退の指示だ! アル、レッチ!炎で動きを止めながら逃げ――」
ユスティナがそう叫んだ瞬間、〈ステラソナ〉から悲鳴じみた声が聞こえてくる。
『助けて! こちらに向かって……』
『オリオン2、こちらにも巨大な何かが……』
『みんな逃げて!』
〈ステラソナ〉を握るエリスの手が震えている。
「なによあれ……」
レティシアが指さした先、巨大な《蠢くもの》から浮き出てきた顔の部分が、本体から分離し人型のシルエットへと形を変えていく。
そのまま二本の脚(のようなもの)で立ち上がると、顔があるあたりをこちらを向けた。まるでそこに目があって、見つめているように。
アルヴィナは杖を握り直す。順調だった討伐が、一瞬で悪夢に変わろうとしていた。
◆用語説明
〈水分を気化させる魔法〉
対象に含まれる水分を気化させた時に熱を奪い、凍りつかせる魔法。不定形の《蠢くもの》には水分を多く含むという考察のもとにユスティナが考えついた。
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