309 / 326
六章
気遣い
しおりを挟む
毎日オスカーさんの店に通うのも、さすがに迷惑だし、不自然じゃないかという話になった。それなら他国まで行かなくても、ティがいた森の中なら、ヒナノたちとも気軽に遊べるし、遊び相手もたくさんいて良いんじゃないかという話になったけど、それには一つ問題があった。
「ふぅー、なんとか見つからずにここまで来れたな!」
「警備が薄くて良かったな」
「……それって、褒めてますか?」
今日は町を散策してくるって言っておいて、実はこっそりコンラットの屋敷へやって来て、僕たちの秘密基地みたいな小屋に、こっそり入ったところだった。
「でも、こんなに警備が緩くて大丈夫なの?」
僕が首をかしげると、コンラットは苦笑しながら視線をそらした。
「盗まれて困るような物、ないですからね……」
コンラットが搬入する時間を知っていたから、やって来た荷台に忍び込むのもそこまで難しくなく、思ったよりも簡単に中に入れた。僕の屋敷やバルドの屋敷は常に警備が厳重で、使用人が使う勝手口からもそう簡単には侵入出来ないから、伯爵家なのにそれで良いのかと聞けば、本人も此処まで警備が薄いと思ってなかったのか、自分の言葉に落ち込んでいた。
「お前の所は良くても、コイツの屋敷に入られでもしたら不味いだろ?」
騎士団長を務めている屋敷なら、見られて困るような重要な書類も多くあるだろうとネアが聞けば、聞かれた当の本人は問題ないとばかりに答える。
「俺の家の警備兵を使って守る事も出来るけど、そんな事したら、ここに何かありますって宣伝してるようなもんだから、こっちからは何もしないんだって親父が言ってたぞ。あっ、でも向こうの小屋の周囲は、隠れて警備している奴らがいるから、出入りしてたら直ぐにバレるぞ。まぁ、命知らずな奴しか入って来ないだろうけどな」
伯爵であるコンラットの屋敷に、バルドの屋敷に侵入できる隠し通路があるなんて誰も思わないから、警備を厳重しない方が返って安全なようだった。それに、私兵だけど騎士団長が定期的に鍛えているだけあって、精鋭が守っている場所には誰も来ないと思っているようだけど、それで安全って言い切れるのが凄い。僕が感心してると、ティが頬を膨らませながら怒っていた。
「そんな話はどうでも良いのよ!此処に作るなら、最初からあんな店じゃなくてここにすれば良かったじゃない!こんな短時間の間に、また道を一つ作らされるなんて思ってもみなかったわよ!」
確かに、道の入口が僕の屋敷とオスカーさんの店だけじゃ不便だって話になって、だったらバルド達の近くにも道を作ろうという話になったけど、実際に作るのはティなこともあり、不満しかないようだった。
「だけど、昨日来るって言って来なかったよな?」
「ちょっと時間を忘れただけでしょう!それに、あの店で遊ぶつもりだったなら別に良いじゃない!?」
「約束は約束だろ?」
「あんな約束しなきゃ良かったわ!全部アイツ等のせいよ!」
慌てて帰って来た日、僕達を何とか屋敷に送り届けた後、まだ酔って気分悪いと言って森へと帰って行った。でも、次の日の夕方になっても、姿を現す事はなかった。
僕達はティがいないと道を使えない事もあって、ティに毎回迎えに来てもらうよう、お小遣いで買ったお菓子を賄賂にして、ちゃんと迎えに来てもらうように事前に頼んでいた。だからこそ、約束を破ったら変わりにお願い事を聞いてくれる事を約束してもらっていた。でも、今になってその約束を後悔しているのか、此処にいない存在へと怒りを露わにする。けれど、ティから聞いた事情だけど、どこまで本当か分からないから、曖昧な相槌を打ちながらもティをなだめ、出来たばかりの道を通っていれば、ティが僕の荷物に気づいた。
「それにしても、今日のアンタは荷物が多いのね?もしかして、私への手土産?」
「ううん。父様がくれた物なんだけど、お詫びだって言ってたよ?」
「お詫びって何のだ?それに、何で貰った本人が疑問系なんだよ?」
「僕も分かんないんだけど、兄様が貰えるなら貰っておけって」
「とりあえず開けて見ましょうよ!それで、中身がお菓子だったら私に寄こしなさい!」
「……図々しいなぁ…お前」
自分への感謝の気持ちで持ってきた物じゃないと知っても、箱の中身が気になるようで、自分の欲しい物だったら寄こすようにさりげなく要求を突きつけてくる。そんなティに、バルドが呆れながらも道を通り抜けていたら、森に出た途端に背後から低い声がした。
「お前達、昨日はなぜ来なかった?」
「来なかったって言われても、ティがいないのに俺達が来れるわけないだろう?」
「ん?あんなもの、コイツがいなくても使えるだろう?」
「そうなの?」
「あぁ、魔力の流れを読める者ならば誰でも使える。だから、道を作らせたら、後はコイツがいなくても道を通れるから必要ない」
「必要ないって!?道案内も大事でしょう!?」
「それも、魔力の気配に敏感であれば、迷う事などないだろう。はぁ…それを知っていたならば、俺が迎えに行ったものを…」
「ちょっと!聞いてるの!?」
ティの声が森に響き、その大きな声が頭に響くとキールは露骨に眉をしかめた。でも、居座ったまま動かなかったというティの話とは、少し違うようだった。
「ティから聞いてたけど、本当に昨日から待ってたのか?」
「そうニャ。昨日から待ってたニャ」
「そうなのか。暇な奴らを相手にするのは大変だったな」
約束していたわけでもないから、こちらに非はないと答えていたバルドの横で静かに傍観していたのに、キールの側にいたウルが喋った途端、声だけじゃなく表情まで分かりやすいほどに豹変してしまった。
「コイツ…同一人物か…?人格が入れ替わる者など初めて見たぞ…?」
「長年生きてきましたが、私もこんな人間を見るのは初めてですね」
ネアの変わりようを初めて見たキールは、あまりの違いに別人に変わったと思ったようで、一緒にいたグレイも、それに同意の言葉をこぼす。ある意味で的を射ているとは思うけど、言われた本人は不快だったようだ。
「人の顔をさえ覚えられない奴が、よく言うな?」
「珍しい現象ですからね。忘れようにも忘れられませんよ」
覚えてられるのかと、ネアが皮肉を込めて言えば、グレイは飄々とした様子でそれに答える。どっちも譲らず、睨み合いみたいな殺伐とした空気が流れ出す中、この空気を変えられそうなウルへと、僕は慌てて話を振った。
「えっと……それで、なんでキール達と一緒にいたの?」
「お客様を放っておくわけにはいかニャいですニャ!それに、女王様に対応はムリですニャ……」
「ムリじゃなくて、コイツ等の相手をしたくないだけよ!」
ティは文句しか言わないからか、誰が相手でも出来ないような気がする。ウルもそれが分かっているから、自分から進んでキール達の相手を買ってでたんだと思う。だけど、そんなウルの優しさに気付こうとしないティは、不貞腐れたように不満をこぼしていた。
「それにしても、遅いと思うなら様子を見に行こうとは思わなかったのですか?」
「そうだよな。流石に日が暮れれば分かるだろう?」
日付が変わるまで僕達の存在に気付かなかった理由を尋ねれば、三者三様の答えが返ってきた。
「煩わしかったのでな。音を遮断して僅かに目を閉じていたら朝日が登っていた」
「待っていたら、そのうち来ると思っていたので気になりませんでした」
「ちょっとウトウトしていただけなのじゃが、日付が変わっておったのじゃ」
「あぁ…そんな感じなんですね…」
時間概念が違うからか、日付が変わっていた事にも気づいてなかったりもしていたようだった。でも、それについていけないコンラットは、深く考えるのを諦めたような遠い目で答えていた。
そんな事があり、説明にも時間を少し取られたけれど、今日もヒナノ達と遊ぼうとみんなで召喚すれば、ヒナノは遊んでくれそうな妖精達へと直ぐに駆けて行ったけれど、ルドは何故か遊ぼうとする気配はなく、何か伝えたそうにバルドの前に座り込んでいた。
「どうした?」
そんなルドの様子を窺うように立つグラニにも視線を向けながら、バルドが不思議そうな声を掛けながらしゃがみこめば、ルドはスッと立ち上がって後ろに回ると鼻先でバルドの背を押した。
「だから、どうしたんだ?」
「どうやら、自分のせいでお主が遊びに行くのを我慢するのは忍びないらしく、詫びは昨日で十分じゃと言っておるぞ」
お爺さんの言葉に、ルドが小さく鼻を鳴らして頷いたけど、バルドは半信半疑で素直に受け入れられないようだった。
「本当かぁ…?」
「こんな事でワシが嘘を付く理由がないじゃろう?」
「それもそうなんだけど…でもなぁ…」
感謝と罪悪感の狭間で揺れているようなその声に、優しさと不器用さが滲んでいた。そんな背を押すように、グラニもコンラットをバルドの方へと押す。だけど、ヒナノはその事に少し不満なようで、僕の側まで走って戻って来ると、引き止めるように僕のズボンの裾を噛んで引き止めようとする。だけど、それを止めるようにルドとグラニに挟まれれば、両脇から説得するようかのように顔を近づけられ、仕方なさそうにその場に伏せていた。
「本当に良いのかなぁ…」
「あの方が言っている事は本当ですよ。無駄に精霊王ではないですので」
「無駄とは酷いんじゃないかのぅ…」
「貫禄もないんだから仕方がないだろう」
「うーん…でもなぁ…」
「良いんじゃないのか。本人達が良いと言っているんだから」
「おまえ…それは少し薄情じゃ…」
「俺はウルと残るから、お前らだけで行って来い」
「何でお前だけが残る前提なんだよ!?お前も行くんだよ!!」
召喚獣がいないにしても態度が少し冷たすぎると言いかけると、まるで僕達の保護者気取りをしていたのに、ウルが絡んだ途端に手のひらを返すように僕達の事を一人見送ろうとする。いつものように軽口を叩き合う二人のやり取りの中で、売り言葉に買い言葉のように行く事を決めれば、ルドは嬉しそうに尻尾を振りだした。そんな姿を見たからか、唸り声を上げながらも腹を決めたかのように声を張り上げる。
「今度はちゃんと土産買って来るからな!それと、お前も来いよ!」
「……仕方ないな」
急いで帰ってきたため、お土産さえも買って来れなかった悔いるように言い、。ネアへと声を掛ければ、小さな舌打ちをしながらも答えており、きっとバルドの背中を押すために言った気遣いなのだと思うことにした。
「ふぅー、なんとか見つからずにここまで来れたな!」
「警備が薄くて良かったな」
「……それって、褒めてますか?」
今日は町を散策してくるって言っておいて、実はこっそりコンラットの屋敷へやって来て、僕たちの秘密基地みたいな小屋に、こっそり入ったところだった。
「でも、こんなに警備が緩くて大丈夫なの?」
僕が首をかしげると、コンラットは苦笑しながら視線をそらした。
「盗まれて困るような物、ないですからね……」
コンラットが搬入する時間を知っていたから、やって来た荷台に忍び込むのもそこまで難しくなく、思ったよりも簡単に中に入れた。僕の屋敷やバルドの屋敷は常に警備が厳重で、使用人が使う勝手口からもそう簡単には侵入出来ないから、伯爵家なのにそれで良いのかと聞けば、本人も此処まで警備が薄いと思ってなかったのか、自分の言葉に落ち込んでいた。
「お前の所は良くても、コイツの屋敷に入られでもしたら不味いだろ?」
騎士団長を務めている屋敷なら、見られて困るような重要な書類も多くあるだろうとネアが聞けば、聞かれた当の本人は問題ないとばかりに答える。
「俺の家の警備兵を使って守る事も出来るけど、そんな事したら、ここに何かありますって宣伝してるようなもんだから、こっちからは何もしないんだって親父が言ってたぞ。あっ、でも向こうの小屋の周囲は、隠れて警備している奴らがいるから、出入りしてたら直ぐにバレるぞ。まぁ、命知らずな奴しか入って来ないだろうけどな」
伯爵であるコンラットの屋敷に、バルドの屋敷に侵入できる隠し通路があるなんて誰も思わないから、警備を厳重しない方が返って安全なようだった。それに、私兵だけど騎士団長が定期的に鍛えているだけあって、精鋭が守っている場所には誰も来ないと思っているようだけど、それで安全って言い切れるのが凄い。僕が感心してると、ティが頬を膨らませながら怒っていた。
「そんな話はどうでも良いのよ!此処に作るなら、最初からあんな店じゃなくてここにすれば良かったじゃない!こんな短時間の間に、また道を一つ作らされるなんて思ってもみなかったわよ!」
確かに、道の入口が僕の屋敷とオスカーさんの店だけじゃ不便だって話になって、だったらバルド達の近くにも道を作ろうという話になったけど、実際に作るのはティなこともあり、不満しかないようだった。
「だけど、昨日来るって言って来なかったよな?」
「ちょっと時間を忘れただけでしょう!それに、あの店で遊ぶつもりだったなら別に良いじゃない!?」
「約束は約束だろ?」
「あんな約束しなきゃ良かったわ!全部アイツ等のせいよ!」
慌てて帰って来た日、僕達を何とか屋敷に送り届けた後、まだ酔って気分悪いと言って森へと帰って行った。でも、次の日の夕方になっても、姿を現す事はなかった。
僕達はティがいないと道を使えない事もあって、ティに毎回迎えに来てもらうよう、お小遣いで買ったお菓子を賄賂にして、ちゃんと迎えに来てもらうように事前に頼んでいた。だからこそ、約束を破ったら変わりにお願い事を聞いてくれる事を約束してもらっていた。でも、今になってその約束を後悔しているのか、此処にいない存在へと怒りを露わにする。けれど、ティから聞いた事情だけど、どこまで本当か分からないから、曖昧な相槌を打ちながらもティをなだめ、出来たばかりの道を通っていれば、ティが僕の荷物に気づいた。
「それにしても、今日のアンタは荷物が多いのね?もしかして、私への手土産?」
「ううん。父様がくれた物なんだけど、お詫びだって言ってたよ?」
「お詫びって何のだ?それに、何で貰った本人が疑問系なんだよ?」
「僕も分かんないんだけど、兄様が貰えるなら貰っておけって」
「とりあえず開けて見ましょうよ!それで、中身がお菓子だったら私に寄こしなさい!」
「……図々しいなぁ…お前」
自分への感謝の気持ちで持ってきた物じゃないと知っても、箱の中身が気になるようで、自分の欲しい物だったら寄こすようにさりげなく要求を突きつけてくる。そんなティに、バルドが呆れながらも道を通り抜けていたら、森に出た途端に背後から低い声がした。
「お前達、昨日はなぜ来なかった?」
「来なかったって言われても、ティがいないのに俺達が来れるわけないだろう?」
「ん?あんなもの、コイツがいなくても使えるだろう?」
「そうなの?」
「あぁ、魔力の流れを読める者ならば誰でも使える。だから、道を作らせたら、後はコイツがいなくても道を通れるから必要ない」
「必要ないって!?道案内も大事でしょう!?」
「それも、魔力の気配に敏感であれば、迷う事などないだろう。はぁ…それを知っていたならば、俺が迎えに行ったものを…」
「ちょっと!聞いてるの!?」
ティの声が森に響き、その大きな声が頭に響くとキールは露骨に眉をしかめた。でも、居座ったまま動かなかったというティの話とは、少し違うようだった。
「ティから聞いてたけど、本当に昨日から待ってたのか?」
「そうニャ。昨日から待ってたニャ」
「そうなのか。暇な奴らを相手にするのは大変だったな」
約束していたわけでもないから、こちらに非はないと答えていたバルドの横で静かに傍観していたのに、キールの側にいたウルが喋った途端、声だけじゃなく表情まで分かりやすいほどに豹変してしまった。
「コイツ…同一人物か…?人格が入れ替わる者など初めて見たぞ…?」
「長年生きてきましたが、私もこんな人間を見るのは初めてですね」
ネアの変わりようを初めて見たキールは、あまりの違いに別人に変わったと思ったようで、一緒にいたグレイも、それに同意の言葉をこぼす。ある意味で的を射ているとは思うけど、言われた本人は不快だったようだ。
「人の顔をさえ覚えられない奴が、よく言うな?」
「珍しい現象ですからね。忘れようにも忘れられませんよ」
覚えてられるのかと、ネアが皮肉を込めて言えば、グレイは飄々とした様子でそれに答える。どっちも譲らず、睨み合いみたいな殺伐とした空気が流れ出す中、この空気を変えられそうなウルへと、僕は慌てて話を振った。
「えっと……それで、なんでキール達と一緒にいたの?」
「お客様を放っておくわけにはいかニャいですニャ!それに、女王様に対応はムリですニャ……」
「ムリじゃなくて、コイツ等の相手をしたくないだけよ!」
ティは文句しか言わないからか、誰が相手でも出来ないような気がする。ウルもそれが分かっているから、自分から進んでキール達の相手を買ってでたんだと思う。だけど、そんなウルの優しさに気付こうとしないティは、不貞腐れたように不満をこぼしていた。
「それにしても、遅いと思うなら様子を見に行こうとは思わなかったのですか?」
「そうだよな。流石に日が暮れれば分かるだろう?」
日付が変わるまで僕達の存在に気付かなかった理由を尋ねれば、三者三様の答えが返ってきた。
「煩わしかったのでな。音を遮断して僅かに目を閉じていたら朝日が登っていた」
「待っていたら、そのうち来ると思っていたので気になりませんでした」
「ちょっとウトウトしていただけなのじゃが、日付が変わっておったのじゃ」
「あぁ…そんな感じなんですね…」
時間概念が違うからか、日付が変わっていた事にも気づいてなかったりもしていたようだった。でも、それについていけないコンラットは、深く考えるのを諦めたような遠い目で答えていた。
そんな事があり、説明にも時間を少し取られたけれど、今日もヒナノ達と遊ぼうとみんなで召喚すれば、ヒナノは遊んでくれそうな妖精達へと直ぐに駆けて行ったけれど、ルドは何故か遊ぼうとする気配はなく、何か伝えたそうにバルドの前に座り込んでいた。
「どうした?」
そんなルドの様子を窺うように立つグラニにも視線を向けながら、バルドが不思議そうな声を掛けながらしゃがみこめば、ルドはスッと立ち上がって後ろに回ると鼻先でバルドの背を押した。
「だから、どうしたんだ?」
「どうやら、自分のせいでお主が遊びに行くのを我慢するのは忍びないらしく、詫びは昨日で十分じゃと言っておるぞ」
お爺さんの言葉に、ルドが小さく鼻を鳴らして頷いたけど、バルドは半信半疑で素直に受け入れられないようだった。
「本当かぁ…?」
「こんな事でワシが嘘を付く理由がないじゃろう?」
「それもそうなんだけど…でもなぁ…」
感謝と罪悪感の狭間で揺れているようなその声に、優しさと不器用さが滲んでいた。そんな背を押すように、グラニもコンラットをバルドの方へと押す。だけど、ヒナノはその事に少し不満なようで、僕の側まで走って戻って来ると、引き止めるように僕のズボンの裾を噛んで引き止めようとする。だけど、それを止めるようにルドとグラニに挟まれれば、両脇から説得するようかのように顔を近づけられ、仕方なさそうにその場に伏せていた。
「本当に良いのかなぁ…」
「あの方が言っている事は本当ですよ。無駄に精霊王ではないですので」
「無駄とは酷いんじゃないかのぅ…」
「貫禄もないんだから仕方がないだろう」
「うーん…でもなぁ…」
「良いんじゃないのか。本人達が良いと言っているんだから」
「おまえ…それは少し薄情じゃ…」
「俺はウルと残るから、お前らだけで行って来い」
「何でお前だけが残る前提なんだよ!?お前も行くんだよ!!」
召喚獣がいないにしても態度が少し冷たすぎると言いかけると、まるで僕達の保護者気取りをしていたのに、ウルが絡んだ途端に手のひらを返すように僕達の事を一人見送ろうとする。いつものように軽口を叩き合う二人のやり取りの中で、売り言葉に買い言葉のように行く事を決めれば、ルドは嬉しそうに尻尾を振りだした。そんな姿を見たからか、唸り声を上げながらも腹を決めたかのように声を張り上げる。
「今度はちゃんと土産買って来るからな!それと、お前も来いよ!」
「……仕方ないな」
急いで帰ってきたため、お土産さえも買って来れなかった悔いるように言い、。ネアへと声を掛ければ、小さな舌打ちをしながらも答えており、きっとバルドの背中を押すために言った気遣いなのだと思うことにした。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収
ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。
彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。
だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。
自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。
「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」
契約解除。返還されたレベルは9999。
一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。
対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。
静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。
「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」
これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。
(本作品はAIを活用して構成・執筆しています)
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる