落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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六章

気遣い

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毎日オスカーさんの店に通うのも、さすがに迷惑だし、不自然じゃないかという話になった。それなら他国まで行かなくても、ティがいた森の中なら、ヒナノたちとも気軽に遊べるし、遊び相手もたくさんいて良いんじゃないかという話になったけど、それには一つ問題があった。

「ふぅー、なんとか見つからずにここまで来れたな!」

「警備が薄くて良かったな」

「……それって、褒めてますか?」

今日は町を散策してくるって言っておいて、実はこっそりコンラットの屋敷へやって来て、僕たちの秘密基地みたいな小屋に、こっそり入ったところだった。

「でも、こんなに警備が緩くて大丈夫なの?」

僕が首をかしげると、コンラットは苦笑しながら視線をそらした。

「盗まれて困るような物、ないですからね……」

コンラットが搬入する時間を知っていたから、やって来た荷台に忍び込むのもそこまで難しくなく、思ったよりも簡単に中に入れた。僕の屋敷やバルドの屋敷は常に警備が厳重で、使用人が使う勝手口からもそう簡単には侵入出来ないから、伯爵家なのにそれで良いのかと聞けば、本人も此処まで警備が薄いと思ってなかったのか、自分の言葉に落ち込んでいた。

「お前の所は良くても、コイツの屋敷に入られでもしたら不味いだろ?」

騎士団長を務めている屋敷なら、見られて困るような重要な書類も多くあるだろうとネアが聞けば、聞かれた当の本人は問題ないとばかりに答える。

「俺の家の警備兵を使って守る事も出来るけど、そんな事したら、ここに何かありますって宣伝してるようなもんだから、こっちからは何もしないんだって親父が言ってたぞ。あっ、でも向こうの小屋の周囲は、隠れて警備している奴らがいるから、出入りしてたら直ぐにバレるぞ。まぁ、命知らずな奴しか入って来ないだろうけどな」

伯爵であるコンラットの屋敷に、バルドの屋敷に侵入できる隠し通路があるなんて誰も思わないから、警備を厳重しない方が返って安全なようだった。それに、私兵だけど騎士団長が定期的に鍛えているだけあって、精鋭が守っている場所には誰も来ないと思っているようだけど、それで安全って言い切れるのが凄い。僕が感心してると、ティが頬を膨らませながら怒っていた。

「そんな話はどうでも良いのよ!此処に作るなら、最初からあんな店じゃなくてここにすれば良かったじゃない!こんな短時間の間に、また道を一つ作らされるなんて思ってもみなかったわよ!」

確かに、道の入口が僕の屋敷とオスカーさんの店だけじゃ不便だって話になって、だったらバルド達の近くにも道を作ろうという話になったけど、実際に作るのはティなこともあり、不満しかないようだった。

「だけど、昨日来るって言って来なかったよな?」

「ちょっと時間を忘れただけでしょう!それに、あの店で遊ぶつもりだったなら別に良いじゃない!?」

「約束は約束だろ?」

「あんな約束しなきゃ良かったわ!全部アイツ等のせいよ!」

慌てて帰って来た日、僕達を何とか屋敷に送り届けた後、まだ酔って気分悪いと言って森へと帰って行った。でも、次の日の夕方になっても、姿を現す事はなかった。

僕達はティがいないと道を使えない事もあって、ティに毎回迎えに来てもらうよう、お小遣いで買ったお菓子を賄賂にして、ちゃんと迎えに来てもらうように事前に頼んでいた。だからこそ、約束を破ったら変わりにお願い事を聞いてくれる事を約束してもらっていた。でも、今になってその約束を後悔しているのか、此処にいない存在へと怒りを露わにする。けれど、ティから聞いた事情だけど、どこまで本当か分からないから、曖昧な相槌を打ちながらもティをなだめ、出来たばかりの道を通っていれば、ティが僕の荷物に気づいた。

「それにしても、今日のアンタは荷物が多いのね?もしかして、私への手土産?」

「ううん。父様がくれた物なんだけど、お詫びだって言ってたよ?」

「お詫びって何のだ?それに、何で貰った本人が疑問系なんだよ?」

「僕も分かんないんだけど、兄様が貰えるなら貰っておけって」

「とりあえず開けて見ましょうよ!それで、中身がお菓子だったら私に寄こしなさい!」

「……図々しいなぁ…お前」

自分への感謝の気持ちで持ってきた物じゃないと知っても、箱の中身が気になるようで、自分の欲しい物だったら寄こすようにさりげなく要求を突きつけてくる。そんなティに、バルドが呆れながらも道を通り抜けていたら、森に出た途端に背後から低い声がした。

「お前達、昨日はなぜ来なかった?」

「来なかったって言われても、ティがいないのに俺達が来れるわけないだろう?」

「ん?あんなもの、コイツがいなくても使えるだろう?」

「そうなの?」

「あぁ、魔力の流れを読める者ならば誰でも使える。だから、道を作らせたら、後はコイツがいなくても道を通れるから必要ない」

「必要ないって!?道案内も大事でしょう!?」

「それも、魔力の気配に敏感であれば、迷う事などないだろう。はぁ…それを知っていたならば、俺が迎えに行ったものを…」

「ちょっと!聞いてるの!?」

ティの声が森に響き、その大きな声が頭に響くとキールは露骨に眉をしかめた。でも、居座ったまま動かなかったというティの話とは、少し違うようだった。

「ティから聞いてたけど、本当に昨日から待ってたのか?」

「そうニャ。昨日から待ってたニャ」

「そうなのか。暇な奴らを相手にするのは大変だったな」

約束していたわけでもないから、こちらに非はないと答えていたバルドの横で静かに傍観していたのに、キールの側にいたウルが喋った途端、声だけじゃなく表情まで分かりやすいほどに豹変してしまった。

「コイツ…同一人物か…?人格が入れ替わる者など初めて見たぞ…?」

「長年生きてきましたが、私もこんな人間を見るのは初めてですね」

ネアの変わりようを初めて見たキールは、あまりの違いに別人に変わったと思ったようで、一緒にいたグレイも、それに同意の言葉をこぼす。ある意味で的を射ているとは思うけど、言われた本人は不快だったようだ。

「人の顔をさえ覚えられない奴が、よく言うな?」

「珍しい現象ですからね。忘れようにも忘れられませんよ」

覚えてられるのかと、ネアが皮肉を込めて言えば、グレイは飄々とした様子でそれに答える。どっちも譲らず、睨み合いみたいな殺伐とした空気が流れ出す中、この空気を変えられそうなウルへと、僕は慌てて話を振った。

「えっと……それで、なんでキール達と一緒にいたの?」

「お客様を放っておくわけにはいかニャいですニャ!それに、女王様に対応はムリですニャ……」

「ムリじゃなくて、コイツ等の相手をしたくないだけよ!」

ティは文句しか言わないからか、誰が相手でも出来ないような気がする。ウルもそれが分かっているから、自分から進んでキール達の相手を買ってでたんだと思う。だけど、そんなウルの優しさに気付こうとしないティは、不貞腐れたように不満をこぼしていた。

「それにしても、遅いと思うなら様子を見に行こうとは思わなかったのですか?」

「そうだよな。流石に日が暮れれば分かるだろう?」

日付が変わるまで僕達の存在に気付かなかった理由を尋ねれば、三者三様の答えが返ってきた。

「煩わしかったのでな。音を遮断して僅かに目を閉じていたら朝日が登っていた」

「待っていたら、そのうち来ると思っていたので気になりませんでした」

「ちょっとウトウトしていただけなのじゃが、日付が変わっておったのじゃ」

「あぁ…そんな感じなんですね…」

時間概念が違うからか、日付が変わっていた事にも気づいてなかったりもしていたようだった。でも、それについていけないコンラットは、深く考えるのを諦めたような遠い目で答えていた。

そんな事があり、説明にも時間を少し取られたけれど、今日もヒナノ達と遊ぼうとみんなで召喚すれば、ヒナノは遊んでくれそうな妖精達へと直ぐに駆けて行ったけれど、ルドは何故か遊ぼうとする気配はなく、何か伝えたそうにバルドの前に座り込んでいた。

「どうした?」

そんなルドの様子を窺うように立つグラニにも視線を向けながら、バルドが不思議そうな声を掛けながらしゃがみこめば、ルドはスッと立ち上がって後ろに回ると鼻先でバルドの背を押した。

「だから、どうしたんだ?」

「どうやら、自分のせいでお主が遊びに行くのを我慢するのは忍びないらしく、詫びは昨日で十分じゃと言っておるぞ」

お爺さんの言葉に、ルドが小さく鼻を鳴らして頷いたけど、バルドは半信半疑で素直に受け入れられないようだった。

「本当かぁ…?」

「こんな事でワシが嘘を付く理由がないじゃろう?」

「それもそうなんだけど…でもなぁ…」

感謝と罪悪感の狭間で揺れているようなその声に、優しさと不器用さが滲んでいた。そんな背を押すように、グラニもコンラットをバルドの方へと押す。だけど、ヒナノはその事に少し不満なようで、僕の側まで走って戻って来ると、引き止めるように僕のズボンの裾を噛んで引き止めようとする。だけど、それを止めるようにルドとグラニに挟まれれば、両脇から説得するようかのように顔を近づけられ、仕方なさそうにその場に伏せていた。

「本当に良いのかなぁ…」

「あの方が言っている事は本当ですよ。無駄に精霊王ではないですので」

「無駄とは酷いんじゃないかのぅ…」

「貫禄もないんだから仕方がないだろう」

「うーん…でもなぁ…」

「良いんじゃないのか。本人達が良いと言っているんだから」

「おまえ…それは少し薄情じゃ…」

「俺はウルと残るから、お前らだけで行って来い」

「何でお前だけが残る前提なんだよ!?お前も行くんだよ!!」

召喚獣がいないにしても態度が少し冷たすぎると言いかけると、まるで僕達の保護者気取りをしていたのに、ウルが絡んだ途端に手のひらを返すように僕達の事を一人見送ろうとする。いつものように軽口を叩き合う二人のやり取りの中で、売り言葉に買い言葉のように行く事を決めれば、ルドは嬉しそうに尻尾を振りだした。そんな姿を見たからか、唸り声を上げながらも腹を決めたかのように声を張り上げる。

「今度はちゃんと土産買って来るからな!それと、お前も来いよ!」

「……仕方ないな」

急いで帰ってきたため、お土産さえも買って来れなかった悔いるように言い、。ネアへと声を掛ければ、小さな舌打ちをしながらも答えており、きっとバルドの背中を押すために言った気遣いなのだと思うことにした。
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