落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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二章

寄り道

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王都の門の前まで来ると、戦闘を走っていた父様達の僕達が馬車がふいに止まり、僕達の馬車も止まる。門番の人達と何か話しているみたいだけど、特に揉めている様子もない。

(事情の説明とか……そんな感じなのかな?)

今まで素通りで通っていた事もあり、ぼんやり外を眺めながら様子を見ていると、父様がこちらの馬車へ歩いてきた。

「私達は少し寄りたい場所があるから、そこに寄ってから帰るよ。リュカ達は先に屋敷へ戻っていて構わない」

「どこに行くの?」

「冒険者ギルドまでね……」

「それなら、僕も一緒に行く!」

どこへ行くのかと思って聞いてみたら、父様は少しだけ声を低くしながら冒険者ギルドだと答えた。王都に来てもまだ行ったことがない場所だけに、それを聞いた僕は、思わず大きな声で返事をしていた。そんな僕のはしゃいだ様子に、父様は困ったような顔をしながらも、僕が喜んでいるだけに反対できなかったのか、最後は微笑んで頷き、自分の馬車へと戻っていった。

冒険者ギルドに到着すると、入口には剣が交差した看板が掲げられていて、まさに「冒険者ギルド」といった雰囲気を漂わせていた。それに、外観は僕が想像していたものよりずっと綺麗で大きい。それに、出入りする人の雰囲気も様々で、荒っぽい見た目の人もいたけれど、ちゃんと身なりを整えた人が多く、中には女性冒険者もいて驚いた。

(すごい……!)

そんな人達を見ながら、ワクワクしながら中に入るのを楽しみにしていたけれど、その期待はすぐに裏切られた。

「すぐ終わらせて戻ってくるから、ここで待っていて貰えるかな?

「え……中に入っちゃ駄目なの……?」

僕が目尻を下げながら言えば、父様は少し申し訳なさそうに言った。

「ごめんね。中には怖い人もいて危ないから。中に入るのは、もう少し大きくなってからにしよう。だから、中に入っては、絶対に駄目だよ…」

父様にしては珍しく、有無を言わさないなにそう言うと、僕の返事も聞かずに行ってしまった。

(父様と一緒なら大丈夫な気がするのに……でも、なんで父様はここに来たんだろう…?)

「兄様は、父様がここに何しに来たか分かりますか?」

父様の言動に少し不満を感じつつも、理由が気になって、知っていそうな兄様に聞いてみた。

「だいたいはな。おそらくだが、依頼不履行についてだろう」

「不履行?」

「頼んだことが実行されていなかったということだ。父上は、旅に出る時には必ず魔物討伐と盗賊討伐を依頼している。だが、ラクス周辺に盗賊がいた。ということは、冒険者ギルドが仕事をしていなかったということになる」

「そうなの?それで、実行できてないとどうなるの?」

「普通なら依頼金の返還で済むが、まず無理だろうな」

「なんで?」

「前金として払っている金額が桁違いだからだ。返せるはずがない」

兄様はいつも通り淡々としていたけど、どれくらいの金額か想像できない僕は、それに黙って頷いていた。

しばらくすると、ギルド前に集まっていた冒険者達が左右に道を作り、父様がゆっくりと出てきた。

表情は酷く冷えていて、いつも浮かべている笑みすら浮かべておらず、背筋がぞくっとするような空気をまとっている。でも、僕達の姿を見ると、そんな空気も霧散し、普段と変わらない笑みを浮かべながら、僕達の方へと戻ってきた。

「おかえりなさい!用事もう終わったの?」

「ああ、伝えるべきことはもう話してきたよ。あとは、ギルドマスターがどう動くかを見て、それから対応を決めようかな……」

そう言う父様の目は、先ほどと同じく冷え切っていた。普段とは違いすぎる父様の様子に、僕のわずかな怯えを見せていると、それに気づいたのか、父様はすぐに柔らかい笑みを浮かべる。

「それより屋敷に戻ろうか。私の用事で待たせてしまったし、ここでは落ち着けないだろう? それに、お腹も空いただろうから、こんな不快な場所から速く帰ろう」

僕達に気遣うような言葉を言って、父様が自分の馬車へ向かおうとしたその時、冒険者ギルドの扉が勢いよく開き、中から一人の男性が飛び出してきた。

「お待ちください!!」

声を張り上げて走ってきたその男性は、五十代ほどだろうか。顎には短い髭があり、がっしりした体格で、服の上からでも筋肉がはっきりと分かる大柄な男性だった。
額には古傷みたいな傷があり、深く刻まれた皺は年齢のせいだけではなく、幾度も危機に身を投じてきた者の覚悟と経験を物語っているようだった。まるで、いくつもの修羅場をくぐり抜けてきた歴戦の戦士のような男が、青ざめた顔でこちらへ駆け寄ってくる様子に、周囲の空気も一瞬で張りつめた。

「何のようだ」

だけど、それでも父様は物怖じすることなく、雪の上に落ちる氷のように冷たく静かな声で問いかける。すると、そんな父様に深く頭を下げながら、懇願するように言った。

「ご家族の方々にも謝罪をさせて頂きたく……どうか、お時間を……!」

「……いいだろう。ただし、手短に済ませろ」

父様は、今まで聞いたこともないほどの威圧感を帯びた声で告げると、道を譲るように少しだけ脇にそれた。だけど、油断なく、その男の動向を見るような視線を向けていた。

普段の父様からは想像できない気迫に、僕が思わず息をのんだけれど、そんな僕の驚きなど意にも介さない様子で、許可が出た瞬間、その男は勢いよく僕達の前に進み出て、深々と頭を下げてきた。

「私はこの冒険者ギルドのマスター、べナルトだ!この度は我らの不手際で多大なるご迷惑を……まことに申し訳なかった!!」

「えっ……あ、その……だ、大丈夫だったので、頭を上げてください!」

「そんなわけには行きません!この度は本当に申し訳ない!!」

僕よりずっと年上で強そうな人が、地面に届きそうなほど頭を下げているのに、馬車の中から見下ろしている自分が、なんだかすごく申し訳なく感じる。でも、僕がお願いしても、べナルトさんは頭を上げようとしなかった。そんな様子に困っていると、兄様の低い声がした。

「……リュカが困っている。頭を上げろ」

兄様の言葉には絶対逆らえない。そんな空気が場に満ちていて、男の方もゆっくりと頭を持ち上げた。

「オルフェ様にも、ご迷惑を……本当に……!」

「二度目はない」

だけど、遮るように兄様が淡々と言うと、べナルトさんの肩がびくっと震え、言葉を噛んでいた。でも、そんな兄様に声を掛けるよりも、顔色がひどく悪いべナルトさんを見て、僕は思わず声をかけてしまった。すると、なぜか彼は涙ぐみそうな顔になった。

「どうか……そのままでいてくれ……!」

(えっ……な、なに……!?僕、変なこと言った!?)

何処か感動したような瞳でこちらを見上げてくるものだから、なぜそんな顔をされているのか分からず、思わず戸惑ってしまう。僕が困っているのが分かったからか、父様が冷えた声で言う。

「いつまで謝罪を続けるつもりだ?家族を休ませたいのだが」

「し、失礼しました!!」

その言葉に、べナルトさんは慌てて父様にも頭を下げていた。でも、荒事なんて出来なさそうな父様や兄様が、一歩も引かない、そんな姿を見て、僕はふと思った。

(僕だって頑張れば、誰に対しても物怖じしない強い人になれないかな!?)

そう思ったら、気づいた時には、それを口に出して叫んでいた。

「父様!僕も、父様や兄様を守れるような強い人になる!!」

父様は少し毒気を抜かれたような顔で驚いた後、穏やかに笑った。

「なら、私はもっと強くなろうかな?」

その言葉を聞いて、べナルトさんの顔色が青から白に変わった。

(え……急に…どうしたの…?)

僕の何気ない一言で、まるで寿命でも縮まったとでもいうような様子で見てくる。それでも、べナルトさんは母様にまで謝罪しに行き、僕は「冒険者も大変だな……」と、心の中で人知れず呟いていた。
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