落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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四章

原因は

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「とりあえず、これで解決…あーーッ!!」

その場を纏めようとしていたバルドが、何かに気付いたように、突然大きな声を上げた。

「ど、どうしたの!?」

「兄貴が抜け駆けしてる!!俺!ちょっと行って来る!!」

驚いている僕達にそれだけ言って駆けて行くその先には、お兄さん達に剣の指導して貰っているクリスさんの姿があった。

「こっちに来ないとは思ってたが、あっちに行っていたんだな」

「そういえば、夜も来ていませんでしたね?」

夜になっても一緒に部屋で遊んでたのに、あの日の夜から、僕達がいる部屋に来なかったから、何をしているのかなとは、僕も不思議に思っていた。

「でも、何で急に剣の稽古なんて始めたんだろう?」

「さぁな、何か思う所でもあったんじゃないか?」

気のない返事返している横で、バルド達の様子を見ていたら、今度は、コンラットが何かに気付いたような声を上げた。

「あっ!すみません!お2人の事で来たはずなのに、何だか最後は放置するような事をしてしまって…」

コンラットはそう言って謝っていたけれど、僕も言われるまでの少しの間、2人の事がいた事を忘れていた。その事に少し申し訳なく思っていると、最初よりも明るくなった顔で、何でもない事のように言った。

「気にするなって、首の皮一枚が繋がっただけで、俺等が付いて来た意味はあったからよ」

「皮一枚だけじゃなく…しっかりと繋がっていたいがな…」

「だから!お前はそう言う事言うなよ!そもそも!こうなったのは、お前がモタモタして、魔道具を落とすからだろ!!」

「そんな事言ったってなぁ!使い捨てのしょぼいのしか普段は使った事ねぇのに、あんな高そうな魔道具を急に渡されたって、俺が使えるわけねぇだろ!!そんな事を言うなら、最初からお前が使えよ!」

「あんな高そうなの壊して、弁償なんざ出来るかぁ!!」

「俺だって出来ねぇよ!!」

「えっと、使い方とか、教えて貰って貰ってなかったの?」

デリックさんの言葉に苛立ったような声を上げ、お互いに睨み合っている2人へと声を掛けると、2人は揃ってある人物の方へと視線を向けた。

「ポイって投げ渡されてた後、使えば分かるからって言われて、それっきりだ……」

「如何にも高そうな魔道具だったから、直ぐに使い方を聞こうとしたんだが、もういなくなっててな…」

「「「………」」」

「だ、だって!使い方なんて、説明しなくても何となく分かるものじゃない!?」

僕達の無言の視線も受けて、少したじろいだ様子で弁解の言葉を口にしたけれど、僕達の反応は薄い。

「魔道具に関しては、説明しなければ何とも……」

「でも!説明書とか読んだ事ないけど、私は感覚で使えてたわよ!!?」

「でも、使い方を間違うと危ないから、説明書はちゃんと読んだ方が良いって、父様が言ってたよ?」

暴発事故が起きたりしないよう、安全対策がなってはいても、万が一があるからって、未だに僕1人の時は、魔道具は使わせて貰っていない。

「それに、ただでさえ緊急時に道具を使うのは難しいのに、使い慣れてないうえに使い方も分からなければ、もう駄目だろ」

「うぅ…ッ…」

居たたまれなさそうにうめき声を上げるカレン様を他所に、ハリソンさん達の方へと視線を戻す。

「それで、落とした後はどうしたの?」

「何とか拾って起動させたから、合図は出せたんだが……道が完全に塞がれてな…」

「湖の方に行くしかなかったんだ……」

「それは…大変でしたね…」

「つまり、使い方を教えて貰ってたら、ああはならなかったんだな」

「じゃあ、責任の一端は、カレン様にもあるって事?」

「リュカ君!その言葉は絶対!アルの前だけでは言わないでね!!」

「どうして?」

「どうしてもよ!!」

「う、うん…」

何処か必死な様子で言う勢いに負けて、理由も分からず、戸惑いながらも頷いて返事を返していた。

その後、あまり帰りが遅くならないように、早めに休憩を切り上げた僕達は、馬車へと乗り込んだ。その残りの道中、剣の稽古の約束を取り付ける事が出来たバルドは、馬車の中でずっと機嫌が良さそうだった。

「私はこの辺で失礼させて貰うわね。それと、暫くは王都にも戻らないけど、手紙は送るから」

バルドの屋敷には到着したのは、夕方になる前くらいだった。けれど、馬車を下りたカレン様は、早々に王都を立つような言葉を口にした。

「今からだと、次の街に付くのは夜になるけれど、もう行くの?せめて、一晩だけでも泊まって行ったら?」

「私の感が、今直ぐに王都を離れた方が良いと言っているのよ」

「だが、立つ前に、陛下に今回の件の報告義務があるだろう」

「それは、ベルがやっといてよ。城は…何か嫌な予感がするのよ…」

引き止めるラザリア様や、怪訝な顔をするベルンハルト様を前にしても、王都から出たそうだった。

「あの…せめて、私の屋敷でお茶でも飲んで行かれませんか?今回は、色々とリュカがご迷惑をおかけしたのに、私だけ何も返せていませんので…」

「迷惑なんて、掛けらてはないんだけど……うーん……何となく…アルはいなさそうだし、ベルと一緒なら、少しだけよって行こうかしら…?」

懇願するような母様の視線に、悩むような仕草をみせた後、ベルンハルト様の方へと視線を向けた。

「何故、私が付き合う必要がある」

「ベルは、もしもの時の保険よ」

怪訝そうに寄せていた見権のシワが、濃くなったような気がするけれど、カレン様は全く気にした様子すらない。

「その後、逃げずに城に行くと言うのなら、付いて行くのは構わない」

「えー…行かなきゃ…ダメ…?」

「………」

「はぁ…分かったわ…」

無言の圧力を受けて、渋々といった様子で、取引に応じていた。

「また、みんなでどっか行こうな!!」

手を振るバルド達に、僕も馬車の窓から手を振り返しながらその場を後にする。話しながら進んでいれば、そう離れてもいない事もあって、段々と屋敷が見えて来た。馬車が屋敷の門を潜ると、その先では、兄様とドミニク達が、屋敷の前で待っていてくれるのが見えた。

「兄様!ただいまー!!」

「リュカ、何処も怪我をしていないか?」

馬車から降りて駆け寄ると、何故か兄様は、真っ先に僕の怪我の心配をし始めた。

「?してないよ?」

「そうか、それならば良い。おかえり、リュカ」

僕が不思議に思いながら答えると、兄様は安堵したかのように、口元を微かに緩ませて笑い返してくれた。その後、少し遅れてやって来た母様の方へと視線を向けた。

「母上も、無事に戻られて良かったです」

「ただいま、オルフェ。出かけている間、何か変わった事はなかった?」

「その事で少しお話ししたい事がありますが、その前に、後ろの方々は、何故、いらっしゃるのでしょうか…?」

何故か、兄様は何処か怒ったように、カレン様達に冷たい視線を向けていた。

「今回、色々とご迷惑をお掛けしたから、私がお茶だけでもどうかと誘ったのよ」

「……そうですか」

母様の言葉に、納得したような返事を返しながらも、不機嫌そうに目を細めながら、ジロリと睨むような視線を2人に向けていた。

「アルは帰っているかしら?それとも、まだお城?」

「父上ですが、しばらく屋敷を不在にするそうです」

「えっ…?何か…あったの…?」

「いえ、野暮用で少し出掛け来るそうです。母上に、直ぐに戻るから心配しないで欲しいと、言伝も預かっています」

「そう…せっかく、お土産とかも買って来たのに…」

不安そうな顔から、少し寂しげな表情になった母様に寄り添うように、ドミニクが、少し前へと足を踏み出した。

「皆様、長旅でお疲れでしょう。紅茶をお入れ致しますので、皆様、一度お部屋へと上がられては如何ですか?」

「そうね!アルがいないなら、のんびりお茶していけるわ!これなら、ベルに付いて来て貰わなくても平気だったかも!」

「残念ですが、お二人には書状をお預かりしておりますので、その時間はないかと思います」

「書状…?」

「はい。陛下からです」

怪訝そうに問い返すカレン様に、兄様は楽しげな表情を浮かべながら答えると、懐から2枚の封筒を取り出して、カレン様達の方へと差し出した。

「私の屋敷に最初に寄るだろうからと、私が陛下よりお預かりしていました。何でも、急ぎの仕事を頼みたいそうです」

兄様からの封筒を見て、2人は嫌そうな表情を浮かべはしたけど、ベルンハルト様は小さなため息を一つ溢すと、兄様が差し出す封筒に手を伸ばす。

「……分かった。急ぎ、陛下に確認しよう」

「ちょっと!引き受けるの!!?これ!絶対お兄さまからの依頼じゃないわよ!?」

「陛下の名で下される命令ならば、それを断る理由はない。それに、失態を犯したのも事実。この程度の報復で済むのならば、軽いものだ」

封筒を素直に受け取るベルンハルト様の姿を見て、兄様は何処か面白くなさそうな顔をしていた。

「まあ…アルにしては、軽い方だとは思うけど…そもそもの原因はアルでしょ!!?」

「城で父上が仕事をしているのは、多くの者が目撃しています。なのに、何の責任があると?」

冷ややかな笑みを浮かべる兄様に、何処か挑発するような、苦々しい笑みを浮かべる。

「貴方だって、分かってて言ってるんでしょう?」

「さて、何の事でしょうか?私には分かりかねます」

「顔だけじゃなくて、嫌な所もしっかり似てるわね…」

「ありがとうございます。褒め言葉として受け取っておきます」

「何も、褒めてはいないわよ…。言う事は似ているのに、こっちは憎たらしさしかないわね…」

「………」

「…何だか申し訳ありません。オルフェには、後でちゃんと言っておきます…」

兄様達のやり取りをハラハラしたように見ていた母様が、申し訳なさそうに謝罪すると、兄様は気不味そうにしながら、ドミニクの方へと視線を逸らす。

「気にしないで、アルの方がもっと酷いから。それよりも、急に城に行かなきゃいけなくなったから、お茶はまた今度にするわね」

「はい。今回は、本当にありがとうございました。お茶を飲みに、また屋敷にいらして下さいね。アルと一緒にお待ちしています」

「お茶は良いけど、アルは…いらないわ…」

「奥様、紅茶をお入れしますので、どうぞこちらへ」

馬車の方へと去って行くカレン様を見送っていた母様に話し掛けると、ドミニクは、その場から母様を連れて去るように屋敷に入って行った。そんな2人の後を追っていた僕だったけど、途中でその足を止めた。

「兄様、行かないの?」

途中まで一緒に来ていた兄様が、扉の前で急に立ち止まった。不思議に思って僕が声を掛けても、馬車の方へと戻る2人の背中へと視線を向けたまま、その場から動こうとはしない。兄様が立ち止まっている場所まで戻ると、僕も一緒になって同じ方向を見ていると、2人が馬車へと到着した所で、兄様はその口を開いた。

「父上からの伝言を伝え忘れていました。弟に余計な事を言った報復は、王都に報告で戻って来た時するとの事です」

「「………」」

「リュカ。行くぞ」

「えっ?う、うん…」

それだけ言うと、無言で振り返り佇む2人に背を向けると、兄様は僕の手を掴んで屋敷の扉を潜った。

「リュカ君!ちょっと私と一緒に来て貰えるかしら!?」

「えッ?」

兄様が後ろ手で扉を閉じる間際、カレン様が僕を呼んでいる声が聞こえたけれど、兄様は構う事もなく屋敷の扉の鍵を掛けた。

「僕の事呼んでたけど…?」

「私には何も聞こえなかった」

そのまま手を引いて歩く後ろで、扉を叩くような音がしたけれど、兄様は振り返る様子がない。

「良いの…?」

「我が家の私兵は優秀だから問題ない」

僕がもう一度振り返る頃には、扉を叩く音はしなくなっていた。
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