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五章
盗難容疑 (アルノルド視点)
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「お前、召喚獣の違法売買の容疑も掛けられているのに、随分と落ち着いているな?」
「慌てる理由がないからな」
城の一室へと連行された私は、既に部屋で待っていただろうレクスへと軽口に似た会話を交わしながら席へと座れば、私を此処まで連れて来た張本人からは、嫌味に似た小言が飛んで来た。
「残念ながら、コイツには容疑を掛けられている自覚すらありません。此処に着くまでの間も終始このような態度でした」
「容疑と言うが、私はやってもいない罪を反省するつもりは最初からない」
「軽率な行動はしたようだが?」
「あれは必要な措置であって、考えなしの行動ではない」
「君達、こんな時まで喧嘩するのは止めて貰えるかな?」
未だに立ったままで煩い奴と話していれば、それに警告でもするかのような口調で、時間を無駄に浪費している事に苛立ちを滲ませたような事を言って来た。だからこそ、私達は口論に終止符を打つ。
「申し訳ありません」
「ふん、私は売られた喧嘩を買ったまでだ」
奴は素直に謝罪するが、特にこちらに非があると思えなかった私は、鼻で笑いながらそれに悪態で返すせば、殺意とため息がそれぞれから返って来た。
「はぁ…君だって何時までも此処にいたいわけではないだろう…?」
私の後ろにいる奴を視線で宥めながら、まるで今の状況を本当に分かっているのかとでもいうような視線を向けてきた。だが、今の状況を一番理解しているのは私だ。
「私はあまり困りはしないがな」
素直に教えてやる理由がなかった私が、奴の言葉に皮肉で返せば、どうしようもないような奴を見る目で見て来た。しかし、本当にそれ程困る事がない。
容疑者として此処にいる以上、自由に外に出る事は出来ないが、要人を収容するために用意されている一室なため、それなりの家具は一通り揃っており、此処で過ごすうえでは何の不自由もない。ただ一つ不満があるとすれば、家族にさえも会えないという事だけだ。
「あまり悠長に話している時間がないのは、君も理解しているだろうから単刀直入で聞くが、今日になってベルの所に届いた物がなんだか知っているな?」
「匿名の告発文書だな?」
知っていて当然のような様子で聞いてくる問い掛けに答えれば、奴の方もそれに頷きながら返事を返す。
「そうだ。ベル。差出人は分かったのか?」
「いえ、未だ捜索中です」
ベルンハルトへと捜査状況を尋ねるが、相手方もそれなりの準備をしているため、流石のコイツでも今日明日中に見つける事は不可能だろう。
「そうか。だが、君に喧嘩を売るような奴等なら、そう簡単に尻尾も出さないか」
「そんな使い捨ての駒を探した所で、大した情報など持ってないだろう」
「だとしても、君に濡れ衣を着せた者の一味を見つけなければ、君の汚名は晴れないままだ」
「似たような真似をしている時点で、濡れ衣でもないような気もするがな」
実際、魔力保持者の子供がいる家庭の中で、家計が困窮している者達を数人見繕い、召喚獣引き渡しの商談を持ち掛けた事がある時点で、私は黒と言っても良いだろう。
「アルノルド。それは言葉が過ぎるぞ」
「だが、事実だろう?」
私が皮肉混じりに返せば、不愉快極まりないとでも言うように顔を歪ませるが、此処まで感情を露にする事が珍しい。それもあり、少しばかり遊び心が沸く。
「まぁ、幸いな事にそれは証言だけだ。最悪の場合、全て私が独断でやった事にすれば良い」
「貴様、私が責任を押し付けて逃げるとでも思っているのか?」
「そうだぞ。この件は、私を含めて此処にいる者達は共犯者のようなものなのだから」
「……ふん。ただの冗談だ」
「はぁ…君の冗談は全くと言っていい程に笑えないよ…」
冗談にもならない返答に、私が煙に巻くようにして返せば、奴からはため息混じりのその言葉が返って来たが、それは奴にしては力ない声だった。そのせいだろうか、その事を責めるような声が響く。
「貴様は、冗談の分別が分からぬ程に愚かなのか?」
「お前達が勝手に深刻に捉えただけだ」
「そんなのは同然だろう。君だけを切り捨てる選択肢などないのだから」
何処までも生真面目過ぎる反応に、こちらの方が調子を狂わされそうになる。しかし、私の罪を問うと言う事は、それは王族が抱える闇を暴く事になるため、他人事ではいられないのもあるのだろう。だが、それ以外の物が含まれているのも分かってしまうため、どうにも居心地が悪い。何度経験しても慣れないこの感情に蓋をしつつ、これ以上この不確かな感情に振り回されてします前に、私はある程度の情報を渡す事にした。
「お前達が聞きたいのは、その件に関する書類がどうなっているのかだろう?」
「素直に話す気になったのか?」
「言わなければ、ずっと此処に居座りそうだからな。それに関する全ての書類は、必要がなくなったその日に処分している。だから、証拠が出るような事はまずない」
「相手方には、契約内容を書いた物は渡していなかったのか?」
「渡してはいたが、その契約書には複製防止の処置も施し、それと同時に私の魔力を纏わせていた。だから、何処に保管してようと容易に場所を特定し奪う事が出来た」
「貴様。よく私の前で、堂々と盗みを働いていたと言えるな?」
「ふん、それは元々は私が渡した物であり、必要がなくなったのならば後はゴミも同然。私は処分するのを手伝っただけだ」
「お前達、その議論は全てが終わってからにしてくれ。全く、お前等は少しは成長しないのか?」
再び口論へと発展しそうになっている私達を呆れ顔で止める奴にも腹立つが、コイツと一緒にされるのは更に腹が立つ。
「成長していないのはコイツだけだ」
「私には、どちらも同じように見えるけどね。まぁ、要するに私達がそちらを心配する必要はないと言う事だな?」
「……そうだ」
まるで子供でもあしらうような態度に不快感が募るが、何も言わずに大人の対応をしている振りをしている奴の手前、これ以上は醜態を晒すまいと短く返事を返す。すると、奴の方からもサラリと流された。
「それならば、問題はもう一つの容疑の方だな。こっちは、お前がサインした書類という証拠がある。そのうえ、お前の共犯者である冒険者2名を捕らえて聞き込みをしたが、最近になって、街でも噂になっていたようだったな」
「……何処から噂が流れているか分かったのか?」
「それはまだだ」
尋問した際に違和感でも感じていたのか、ベルンハルトが返答しながら私にも探るような視線を向けて来るが、その程度で私が同様する訳がない。屋敷を捜索されても良いよう、見られても問題ない資料だけを残し、とある場所に今回の資料を隠して来たが、オルフェ達がそれを見つけ行動を開始するまでは、あの2人には多少は時間を稼いで貰わなけれが困る。だが、このような時のため、高い金と優遇措置を行っていたのだから、私の期待を裏切る事はしないだろう。
私が物思いにふけっていれば、そんな私の沈黙をどうとったのか、少し皮肉るような言葉が向こうから飛んで来た。
「しかし、君にしては随分と後手に回ったな。情報収集は得意分野だっただろう?」
「カルロが不在だからな」
私が事実だけを語れば、当然の疑問が返って来た。
「呼び戻す事は出来ないのか?」
「出来るがする気はない」
「貴様、今はそのような事を言っている場合ではないだろう」
私が拒否の姿勢を見せれば、口を閉じていた者がそれに対して苛立ちを滲ませる。だが、こちらも既にある程度の情報は話したのだから、これ以上は素直に応じてやる理由がない。
私とて、いくら森の主の代役を任せているとはいえ、多少の時間ならば不在でも問題はないとは思う。だが、不足の事態が起きて街に被害が出ようものなら、リュカが気に病む事を考えれば、そこで手を抜く事は考えられない。私が目を閉じ、無言のまま応じる気がないと態度で示していると、それに業を煮やしたかのような声を上げる。
「……貴様」
「ベル。私達が何を言った所でどうせ無駄だ。この様子を見る限り、また家族絡みなんだろう。こちらとしては、もう少し君自身の事も考慮に入れて欲しい所だが、こうなったら梃子でも動かないのは嫌でも分かっているからな」
諦めにも似たような声を上げるが、それと同時に諦める気がないといった様子も見せる。
「君の無実を晴らすため、こちらは出来る限りの事をする心積りである。だが、あまり君を擁護すれば公平性が疑われ、無実である事が判明した後も禍根を残す。だから、私達は表だって君の味方にはなれない事も多く、出来る事も少ない」
自分自身の今の行動が望ましくない事だと理解しながらも、こうして此処に来ているだけで私としては十分なのだが、それでもきっぱりとした口調の中に何故か申し訳なさを滲ませていた。だからこそ、私もこちらとしての立場を明確にしておく。
「分かっている。お前達の立場が悪くなる事は私も望んではない」
「それで、これから君はどう動くつもりだ?」
「期待している所悪いが、私は今回は何もしない。子供等が私の容疑を晴らすと張り切っているからな」
「君の息子がいくら優秀だと言われていても、まだ経験不足の子供だぞ?」
「例えそうだとしても、私の無実を晴らそうとしてくれている息子達の言動を無駄にする気はない。むしろ、私にこのような機会をくれた相手方には感謝したいくらいだ」
例え力不足であろうとも、誰かに守って貰うなど経験した事がなかった私としては、どんな理由でもあろうともその事実だけで、何とも心をくすぐるものがる。私が満足げな笑みを浮かべていれば、それとは真逆に満ちた声が返って来た。
「茶化さないでくれ。それに、君からの礼は相手も受け取りたくはないと思うけどね」
「それは残念だ。そんな訳で、私は何を言われても何もする気はない。此処で紅茶でも飲みながら、息子達の活躍を観戦させて貰うよ」
「……罪人として裁かれる事になってもか?」
「その時はその時だ」
影で私が何かするかと思っていたのだろうが、私が何の迷いもなく何もしないと言い切れば、今にも泣くんじゃないかと思えるような悲しげな表情を浮かべ、奴は絞り出すような声で言った。
「本当に…何もしないつもりか…?」
「何度聞かれても、私の答えは同じだ」
私の事を心配しているのもあるのだろうが、感じる必要などない責任を感じているようだった。そんな様子に、つくづく甘い男だと笑えてしまう。だが、そんな感情の機敏にさえ気付けるようになった自分こそが、一番滑稽な存在かもしれない。
「……分かった。アルノルド・レグリウス。容疑が晴れるまで、この部屋で謹慎処分を命じる」
「かしこまりました。レクス陛下のご命令に従います」
王として下した命令に、私は恭しく臣下の礼を取りながら答える。私が顔を上げるよりも速く、ベルを引き連れ無言で部屋を出て行こうとするレクスに、私は普段と変わらない態度で声を掛けた。
「せいぜい私のために頑張るんだな」
「……偉そうに」
鍵が閉まる音がした扉を暫く見つめると、側にあったソファーへと身を沈める。
「さて、どのような結末になるか…」
鉄格子で区切られた青空を見上げながら、私はリュカ達が望む結末になる事を願った。
「慌てる理由がないからな」
城の一室へと連行された私は、既に部屋で待っていただろうレクスへと軽口に似た会話を交わしながら席へと座れば、私を此処まで連れて来た張本人からは、嫌味に似た小言が飛んで来た。
「残念ながら、コイツには容疑を掛けられている自覚すらありません。此処に着くまでの間も終始このような態度でした」
「容疑と言うが、私はやってもいない罪を反省するつもりは最初からない」
「軽率な行動はしたようだが?」
「あれは必要な措置であって、考えなしの行動ではない」
「君達、こんな時まで喧嘩するのは止めて貰えるかな?」
未だに立ったままで煩い奴と話していれば、それに警告でもするかのような口調で、時間を無駄に浪費している事に苛立ちを滲ませたような事を言って来た。だからこそ、私達は口論に終止符を打つ。
「申し訳ありません」
「ふん、私は売られた喧嘩を買ったまでだ」
奴は素直に謝罪するが、特にこちらに非があると思えなかった私は、鼻で笑いながらそれに悪態で返すせば、殺意とため息がそれぞれから返って来た。
「はぁ…君だって何時までも此処にいたいわけではないだろう…?」
私の後ろにいる奴を視線で宥めながら、まるで今の状況を本当に分かっているのかとでもいうような視線を向けてきた。だが、今の状況を一番理解しているのは私だ。
「私はあまり困りはしないがな」
素直に教えてやる理由がなかった私が、奴の言葉に皮肉で返せば、どうしようもないような奴を見る目で見て来た。しかし、本当にそれ程困る事がない。
容疑者として此処にいる以上、自由に外に出る事は出来ないが、要人を収容するために用意されている一室なため、それなりの家具は一通り揃っており、此処で過ごすうえでは何の不自由もない。ただ一つ不満があるとすれば、家族にさえも会えないという事だけだ。
「あまり悠長に話している時間がないのは、君も理解しているだろうから単刀直入で聞くが、今日になってベルの所に届いた物がなんだか知っているな?」
「匿名の告発文書だな?」
知っていて当然のような様子で聞いてくる問い掛けに答えれば、奴の方もそれに頷きながら返事を返す。
「そうだ。ベル。差出人は分かったのか?」
「いえ、未だ捜索中です」
ベルンハルトへと捜査状況を尋ねるが、相手方もそれなりの準備をしているため、流石のコイツでも今日明日中に見つける事は不可能だろう。
「そうか。だが、君に喧嘩を売るような奴等なら、そう簡単に尻尾も出さないか」
「そんな使い捨ての駒を探した所で、大した情報など持ってないだろう」
「だとしても、君に濡れ衣を着せた者の一味を見つけなければ、君の汚名は晴れないままだ」
「似たような真似をしている時点で、濡れ衣でもないような気もするがな」
実際、魔力保持者の子供がいる家庭の中で、家計が困窮している者達を数人見繕い、召喚獣引き渡しの商談を持ち掛けた事がある時点で、私は黒と言っても良いだろう。
「アルノルド。それは言葉が過ぎるぞ」
「だが、事実だろう?」
私が皮肉混じりに返せば、不愉快極まりないとでも言うように顔を歪ませるが、此処まで感情を露にする事が珍しい。それもあり、少しばかり遊び心が沸く。
「まぁ、幸いな事にそれは証言だけだ。最悪の場合、全て私が独断でやった事にすれば良い」
「貴様、私が責任を押し付けて逃げるとでも思っているのか?」
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「お前達が勝手に深刻に捉えただけだ」
「そんなのは同然だろう。君だけを切り捨てる選択肢などないのだから」
何処までも生真面目過ぎる反応に、こちらの方が調子を狂わされそうになる。しかし、私の罪を問うと言う事は、それは王族が抱える闇を暴く事になるため、他人事ではいられないのもあるのだろう。だが、それ以外の物が含まれているのも分かってしまうため、どうにも居心地が悪い。何度経験しても慣れないこの感情に蓋をしつつ、これ以上この不確かな感情に振り回されてします前に、私はある程度の情報を渡す事にした。
「お前達が聞きたいのは、その件に関する書類がどうなっているのかだろう?」
「素直に話す気になったのか?」
「言わなければ、ずっと此処に居座りそうだからな。それに関する全ての書類は、必要がなくなったその日に処分している。だから、証拠が出るような事はまずない」
「相手方には、契約内容を書いた物は渡していなかったのか?」
「渡してはいたが、その契約書には複製防止の処置も施し、それと同時に私の魔力を纏わせていた。だから、何処に保管してようと容易に場所を特定し奪う事が出来た」
「貴様。よく私の前で、堂々と盗みを働いていたと言えるな?」
「ふん、それは元々は私が渡した物であり、必要がなくなったのならば後はゴミも同然。私は処分するのを手伝っただけだ」
「お前達、その議論は全てが終わってからにしてくれ。全く、お前等は少しは成長しないのか?」
再び口論へと発展しそうになっている私達を呆れ顔で止める奴にも腹立つが、コイツと一緒にされるのは更に腹が立つ。
「成長していないのはコイツだけだ」
「私には、どちらも同じように見えるけどね。まぁ、要するに私達がそちらを心配する必要はないと言う事だな?」
「……そうだ」
まるで子供でもあしらうような態度に不快感が募るが、何も言わずに大人の対応をしている振りをしている奴の手前、これ以上は醜態を晒すまいと短く返事を返す。すると、奴の方からもサラリと流された。
「それならば、問題はもう一つの容疑の方だな。こっちは、お前がサインした書類という証拠がある。そのうえ、お前の共犯者である冒険者2名を捕らえて聞き込みをしたが、最近になって、街でも噂になっていたようだったな」
「……何処から噂が流れているか分かったのか?」
「それはまだだ」
尋問した際に違和感でも感じていたのか、ベルンハルトが返答しながら私にも探るような視線を向けて来るが、その程度で私が同様する訳がない。屋敷を捜索されても良いよう、見られても問題ない資料だけを残し、とある場所に今回の資料を隠して来たが、オルフェ達がそれを見つけ行動を開始するまでは、あの2人には多少は時間を稼いで貰わなけれが困る。だが、このような時のため、高い金と優遇措置を行っていたのだから、私の期待を裏切る事はしないだろう。
私が物思いにふけっていれば、そんな私の沈黙をどうとったのか、少し皮肉るような言葉が向こうから飛んで来た。
「しかし、君にしては随分と後手に回ったな。情報収集は得意分野だっただろう?」
「カルロが不在だからな」
私が事実だけを語れば、当然の疑問が返って来た。
「呼び戻す事は出来ないのか?」
「出来るがする気はない」
「貴様、今はそのような事を言っている場合ではないだろう」
私が拒否の姿勢を見せれば、口を閉じていた者がそれに対して苛立ちを滲ませる。だが、こちらも既にある程度の情報は話したのだから、これ以上は素直に応じてやる理由がない。
私とて、いくら森の主の代役を任せているとはいえ、多少の時間ならば不在でも問題はないとは思う。だが、不足の事態が起きて街に被害が出ようものなら、リュカが気に病む事を考えれば、そこで手を抜く事は考えられない。私が目を閉じ、無言のまま応じる気がないと態度で示していると、それに業を煮やしたかのような声を上げる。
「……貴様」
「ベル。私達が何を言った所でどうせ無駄だ。この様子を見る限り、また家族絡みなんだろう。こちらとしては、もう少し君自身の事も考慮に入れて欲しい所だが、こうなったら梃子でも動かないのは嫌でも分かっているからな」
諦めにも似たような声を上げるが、それと同時に諦める気がないといった様子も見せる。
「君の無実を晴らすため、こちらは出来る限りの事をする心積りである。だが、あまり君を擁護すれば公平性が疑われ、無実である事が判明した後も禍根を残す。だから、私達は表だって君の味方にはなれない事も多く、出来る事も少ない」
自分自身の今の行動が望ましくない事だと理解しながらも、こうして此処に来ているだけで私としては十分なのだが、それでもきっぱりとした口調の中に何故か申し訳なさを滲ませていた。だからこそ、私もこちらとしての立場を明確にしておく。
「分かっている。お前達の立場が悪くなる事は私も望んではない」
「それで、これから君はどう動くつもりだ?」
「期待している所悪いが、私は今回は何もしない。子供等が私の容疑を晴らすと張り切っているからな」
「君の息子がいくら優秀だと言われていても、まだ経験不足の子供だぞ?」
「例えそうだとしても、私の無実を晴らそうとしてくれている息子達の言動を無駄にする気はない。むしろ、私にこのような機会をくれた相手方には感謝したいくらいだ」
例え力不足であろうとも、誰かに守って貰うなど経験した事がなかった私としては、どんな理由でもあろうともその事実だけで、何とも心をくすぐるものがる。私が満足げな笑みを浮かべていれば、それとは真逆に満ちた声が返って来た。
「茶化さないでくれ。それに、君からの礼は相手も受け取りたくはないと思うけどね」
「それは残念だ。そんな訳で、私は何を言われても何もする気はない。此処で紅茶でも飲みながら、息子達の活躍を観戦させて貰うよ」
「……罪人として裁かれる事になってもか?」
「その時はその時だ」
影で私が何かするかと思っていたのだろうが、私が何の迷いもなく何もしないと言い切れば、今にも泣くんじゃないかと思えるような悲しげな表情を浮かべ、奴は絞り出すような声で言った。
「本当に…何もしないつもりか…?」
「何度聞かれても、私の答えは同じだ」
私の事を心配しているのもあるのだろうが、感じる必要などない責任を感じているようだった。そんな様子に、つくづく甘い男だと笑えてしまう。だが、そんな感情の機敏にさえ気付けるようになった自分こそが、一番滑稽な存在かもしれない。
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「かしこまりました。レクス陛下のご命令に従います」
王として下した命令に、私は恭しく臣下の礼を取りながら答える。私が顔を上げるよりも速く、ベルを引き連れ無言で部屋を出て行こうとするレクスに、私は普段と変わらない態度で声を掛けた。
「せいぜい私のために頑張るんだな」
「……偉そうに」
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