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海の日 後日
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「父様には、怖い物や苦手な物はある?」
兄様の苦手な物を偶然知った僕は、父様にも苦手な物があるのかと疑問に思って聞いてみた。
「そうだね。怖い物は特にないかな?苦手な物だと、私は、人の感情を理解するのが苦手だね」
「人の感情?」
「そうだよ。だから、知る努力はしているんだけど、未だに分からない部分が多いね。最近、一番大変だったのは、エレナだね…」
私が、仕事から帰って来ると、エレナからこんな一言を言われた。
「アル。私が、何に怒っているか分かる?」
部屋に入るなり言われた言葉に、私はここ最近の出来事を思い出してみたが、何も思い当たる事がない。
「えっと…。私は、何か怒らせるような事をしただろうか…?」
「アル。私は、それを聞いているのよ?」
思い当たる事がないので、エレナに尋ねたのだが、逆に笑顔で尋ねられてしまった。私の背に嫌な冷や汗が出る。
「はぁ…。もう良いわ…」
エレナが部屋を出て行った後も、必死で思考を巡らせてみるが何も浮かばない。その日の夕食は、少し上の空になってしまった。
「すまないが、少し時間を貰ってもかまわないだろうか?」
次の日、休憩時間を終えて、仕事に戻って来た部下達に私は尋ねた。
「また、何かあったんですか?」
部下も、これが初めてではないからか、慣れたように私に話の先を促す。
「エレナ。妻から、何について怒っているのか分かるかと尋ねられたが、私には全く身に覚えがない。この場合、考えられる理由は何だと思う」
そうして、部下達から忌憚ない意見を出してもらった。
・何か約束事を破った
・知らないうちに何か大切な物を壊した
・何か怒らせるような事をした
約束を破った事はないし、物を壊した記憶もない。そうすると、やはり何か怒らせるような事をしたんだろうか…。
「贈り物を送って謝るという手段もありますが、逆効果の場合もあるので注意が必要です」
「この場合、どちらが正解だ?」
「そ、それは、何とも…」
しかし、今の状況を打開するためには、まずは打って出るしかない。贈り物についても協議を行い、花を贈る事にした。花ならば、エレナも好きだし、贈り物としても外すことはないだろうとの意見も参考にした。
「エレナ。昨日はすまなかった」
花を贈りながら、エレナに謝罪するも、表情が冷え切っているような気がする…。
「それは、何に対しての謝罪なの?とりあえず、謝ればいいと思っていない?」
「そ、そんな事はない」
「じゃあ、何に対しての謝罪なの?」
「………」
その後、エレナの機嫌がさらに悪くなった。それでも、皆と食べる夕食の席では、普通にしている様子に、私は終始、嫌な汗が出ていた。
「はぁ…」
私は、休憩時間に城の廊下を歩きながら、口からはため息が溢れていた。怒っている原因が判明しなければ、対処の方法も分からない。この後にでも、再度部下達から意見を募ってみるか…。
「あら?アルノルドじゃない?ちょっといいかしら?」
「これはルーナ王妃、何かありましたか?」
振り返れば、数人の共を連れたルーナ王妃がいた。私のそばへ来ると、少し目尻を下げた様子で話し始めた。
「何かあったわけじゃないんだけれど…。一昨日、余計な事を言ったんじゃないかと、心配になって…」
「一昨日、ですか?」
「エレナとお茶会をした時に、夫が夜遅くまで仕事をしていると、お互い心配になるわねって話をしたの。そうしたら、エレナは、そんな事知らないって…」
そうだ…。あの日は、お茶会があった日だ…。
「私…やっぱり、余計な事を言ったかしら…?」
「大丈夫です。原因が、分かったのなら、まだ対処の方法はありますから。それでは、御前失礼します」
私は、対処方法を協議するため、足早に部屋へと戻った。
「アルが、夜遅くまで仕事をしていて大変な事を、私だけが知らないで、人から知らされる気持ちが分かる?」
私は、屋敷に戻ると、王妃様から話を聞いた事を説明して、隠し事をしていた事をエレナに謝罪した。
「これからは、私に隠し事はやめてね?」
「なるべく、隠し事をしないように気を付けるよ」
「なるべく…?」
「え…?い、いや…。しないです…」
「あの時は、本当に生きている心地がしなかったよ…。良かれと思って隠していただけなのだが、なかなか人の心は分からないね。そういう意味で言えば、エレナの「何に怒っているか分かる?」という言葉が、私の怖い物になるかな…」
父様…。それは、人の気持ちと言うよりも、女心なんじゃないかな?僕は、父様の話を聞きながらそう思った。
兄様の苦手な物を偶然知った僕は、父様にも苦手な物があるのかと疑問に思って聞いてみた。
「そうだね。怖い物は特にないかな?苦手な物だと、私は、人の感情を理解するのが苦手だね」
「人の感情?」
「そうだよ。だから、知る努力はしているんだけど、未だに分からない部分が多いね。最近、一番大変だったのは、エレナだね…」
私が、仕事から帰って来ると、エレナからこんな一言を言われた。
「アル。私が、何に怒っているか分かる?」
部屋に入るなり言われた言葉に、私はここ最近の出来事を思い出してみたが、何も思い当たる事がない。
「えっと…。私は、何か怒らせるような事をしただろうか…?」
「アル。私は、それを聞いているのよ?」
思い当たる事がないので、エレナに尋ねたのだが、逆に笑顔で尋ねられてしまった。私の背に嫌な冷や汗が出る。
「はぁ…。もう良いわ…」
エレナが部屋を出て行った後も、必死で思考を巡らせてみるが何も浮かばない。その日の夕食は、少し上の空になってしまった。
「すまないが、少し時間を貰ってもかまわないだろうか?」
次の日、休憩時間を終えて、仕事に戻って来た部下達に私は尋ねた。
「また、何かあったんですか?」
部下も、これが初めてではないからか、慣れたように私に話の先を促す。
「エレナ。妻から、何について怒っているのか分かるかと尋ねられたが、私には全く身に覚えがない。この場合、考えられる理由は何だと思う」
そうして、部下達から忌憚ない意見を出してもらった。
・何か約束事を破った
・知らないうちに何か大切な物を壊した
・何か怒らせるような事をした
約束を破った事はないし、物を壊した記憶もない。そうすると、やはり何か怒らせるような事をしたんだろうか…。
「贈り物を送って謝るという手段もありますが、逆効果の場合もあるので注意が必要です」
「この場合、どちらが正解だ?」
「そ、それは、何とも…」
しかし、今の状況を打開するためには、まずは打って出るしかない。贈り物についても協議を行い、花を贈る事にした。花ならば、エレナも好きだし、贈り物としても外すことはないだろうとの意見も参考にした。
「エレナ。昨日はすまなかった」
花を贈りながら、エレナに謝罪するも、表情が冷え切っているような気がする…。
「それは、何に対しての謝罪なの?とりあえず、謝ればいいと思っていない?」
「そ、そんな事はない」
「じゃあ、何に対しての謝罪なの?」
「………」
その後、エレナの機嫌がさらに悪くなった。それでも、皆と食べる夕食の席では、普通にしている様子に、私は終始、嫌な汗が出ていた。
「はぁ…」
私は、休憩時間に城の廊下を歩きながら、口からはため息が溢れていた。怒っている原因が判明しなければ、対処の方法も分からない。この後にでも、再度部下達から意見を募ってみるか…。
「あら?アルノルドじゃない?ちょっといいかしら?」
「これはルーナ王妃、何かありましたか?」
振り返れば、数人の共を連れたルーナ王妃がいた。私のそばへ来ると、少し目尻を下げた様子で話し始めた。
「何かあったわけじゃないんだけれど…。一昨日、余計な事を言ったんじゃないかと、心配になって…」
「一昨日、ですか?」
「エレナとお茶会をした時に、夫が夜遅くまで仕事をしていると、お互い心配になるわねって話をしたの。そうしたら、エレナは、そんな事知らないって…」
そうだ…。あの日は、お茶会があった日だ…。
「私…やっぱり、余計な事を言ったかしら…?」
「大丈夫です。原因が、分かったのなら、まだ対処の方法はありますから。それでは、御前失礼します」
私は、対処方法を協議するため、足早に部屋へと戻った。
「アルが、夜遅くまで仕事をしていて大変な事を、私だけが知らないで、人から知らされる気持ちが分かる?」
私は、屋敷に戻ると、王妃様から話を聞いた事を説明して、隠し事をしていた事をエレナに謝罪した。
「これからは、私に隠し事はやめてね?」
「なるべく、隠し事をしないように気を付けるよ」
「なるべく…?」
「え…?い、いや…。しないです…」
「あの時は、本当に生きている心地がしなかったよ…。良かれと思って隠していただけなのだが、なかなか人の心は分からないね。そういう意味で言えば、エレナの「何に怒っているか分かる?」という言葉が、私の怖い物になるかな…」
父様…。それは、人の気持ちと言うよりも、女心なんじゃないかな?僕は、父様の話を聞きながらそう思った。
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