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エイプリルフール
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「エイプリルフールって知ってるか!!」
珍しく遅れてやって来たバルドが、教室に入ってくるなりそんな事を言い出した。クラスの注目を集める中、意味がわからなくて首を傾げている僕達のそばまでやって来ると、何があったのか話し始めた。
「学院に来る途中でよく会う下町の連中から聞いたんだけどよ!何でもその日は、嘘付いても許されるんだってよ!!」
「嘘なんて付いてもろくな事にならないので、私は止めといた方が良いと思いますよ」
「催しなんて楽しんだもん勝ちだろ!」
「どんなウソを付くつもりなの?」
催し物とかが好きな僕は、バルドの話に興味を引かれて、何を言うつもりなのか試しに聞いてみた。
「出来れば、みんなをびっくりさせるような事がいいな!」
「例えばどんなのだよ?」
「え?う~ん?」
具体的な事はまだ考えていなかったようで、ネアから聞かれた質問に、バルドは腕組みをしながら首を傾げていた。しばらく考えた後、何か閃いたような顔を浮かべて言った。
「数学で100点取ったとか!悪党を華麗に倒したとかかな!」
「怒られるやつだな」
「怒られますね」
「怒られると思うよ」
「何でだよ!」
僕達の言葉に、悔しげに顔をしかめながら声を荒げるけど、嘘だって分かったら怒られそうだし、言っただけでも怒られそうだ。
「普通に怒られるよ」
「危ない事をするなと怒られるだけですよ」
「そもそも、相手がその催し物を知らなければ成立しないだろ」
「うぅ…っ…」
僕達からの度重なる否定の言葉に、苦虫を噛み潰したような顔で呻き声を上げる。
「それに、良い事したって嘘付くよりも、悪い事をしたっていう嘘の方がまだマシだろ」
「まあ、がっかりはさせませんし、安堵はするでしょうね」
「最後に安心させれば良いのか?」
「そんな事言ってません」
いつもながら、コンラットは浮上しかけたバルドの事を綺麗に切り捨てるな。そう思っていたら、珍しく別の所から助け舟がやって来た。
「別に良いんじゃないか?どうせ、イタズラでもして普段みないような反応を見て楽しむのと似たようなもんだろうしな」
「そうだよな!?ちょっとの嘘なら許されるよな!」
ネアの言葉で調子を取り戻したバルドは、どんな嘘を付いたら相手を驚かせられるのかを考えては、どんなのが良いかの意見を僕達に聞いてきた。
「イタズラかぁ…」
僕もちょっとやってみたくて、バルドと話しながらも、どんなウソを付いたら驚いてくれるのかなと考えていた。
父様が帰って来たと知らせを受けた僕は、父様達の部屋へと行ってみたけれど、そこに父様はいなかった。何処に行ったのか尋ねたら、今日は珍しく、執務室で仕事をしているようだった。
「父様?」
執務室に顔を出したら、兄様も一緒に部屋にいて、何とも入りづらくなって扉の影から父様に声を掛けた。一向に部屋に入ろうとしない僕を見て、父様は何かを感じ取ったのか、仕事の手を止めて僕の方へとやって来てくれた。
「どうかしたかい?」
扉の影に隠れるようにしてチラチラと視線を向けていた僕に、父様は視線を合わせるようにしてかがむと、優しく笑いながら僕に尋ねる。だけど、いざ兄様もいる前でウソを付くとなると、どうしても気後れして言葉がなかなか出てこない。
「え、えっーとね、今日、学院で遊んでたらね。壺…割っちゃった…」
色々と考えてみたけれど、僕が思いつきそうな悪い事なんて、これくらいしかなかった。
「怪我はしていないか?」
「け、怪我なんかしてないよ!!」
「そうか、それなら良かった」
僕の言葉に特に慌てるような事もなく、笑顔で僕の心配だけをして終わる父様に、僕は焦れたように言葉を続ける。
「壺割っちゃったんだよ!?」
「ん?それは聞いたが?」
「大変でしょ!」
「怪我をしていないなら良い」
「高い奴だよ!!」
「高い?どれくらいだ?」
「えっ!う、うーん……大…白金貨くらい…?」
何気なく言った言葉に思ってもみなかった質問をされ、言葉に詰まった僕は、とりあえず僕が知っている一番高い金額を言ってみた。そうしたら、父様は分かったと笑顔でうなずくと、そのまま本棚の方へと歩いて行った。
本棚の前に辿り着いた父様が、本棚に置いてあった一冊の本に触ると、本棚が横に動いて、壁の真ん中に小さな金属の扉みたいなのが現れた。驚いている僕をよそに、父様はその扉を開けて何か取り出すと、普段と変わらない様子で戻って来た。
「リュカ。手を出してごらん」
父様に言われた通り手を出すと、父様は持って来た物を僕の手にそっと乗せた。何だろ?と思って自分の手に視線を向けると、大きく輝く白金色の光に、僕は目を大きく見開きながら大きな声を上げる。
「と、とうさま!!」
「それで足りるだろ?持っていきなさい」
「ウソ!ウソですから!こんなの要らないです!!仕事の邪魔してごめんなさい!!」
満面の笑顔を浮かべて渡そうとして来る父様の手に、僕は慌てて硬貨を押し返すと、僕は飛び出すように急いで部屋へと駆け戻った。
「父上…最初から嘘だって分かっていましたよね…」
「何とも分かりやすいリュカの反応が可愛くてね」
「……嫌われますよ」
「それは困るな。リュカには、後で謝っておくことにしよう」
僕が去った後で、父様達がそんな会話をしていたのは、後になってから知った。そうして、何を言ったかまでは知らないけれど、バルドはやっぱり大目玉を食らったそうだ。
珍しく遅れてやって来たバルドが、教室に入ってくるなりそんな事を言い出した。クラスの注目を集める中、意味がわからなくて首を傾げている僕達のそばまでやって来ると、何があったのか話し始めた。
「学院に来る途中でよく会う下町の連中から聞いたんだけどよ!何でもその日は、嘘付いても許されるんだってよ!!」
「嘘なんて付いてもろくな事にならないので、私は止めといた方が良いと思いますよ」
「催しなんて楽しんだもん勝ちだろ!」
「どんなウソを付くつもりなの?」
催し物とかが好きな僕は、バルドの話に興味を引かれて、何を言うつもりなのか試しに聞いてみた。
「出来れば、みんなをびっくりさせるような事がいいな!」
「例えばどんなのだよ?」
「え?う~ん?」
具体的な事はまだ考えていなかったようで、ネアから聞かれた質問に、バルドは腕組みをしながら首を傾げていた。しばらく考えた後、何か閃いたような顔を浮かべて言った。
「数学で100点取ったとか!悪党を華麗に倒したとかかな!」
「怒られるやつだな」
「怒られますね」
「怒られると思うよ」
「何でだよ!」
僕達の言葉に、悔しげに顔をしかめながら声を荒げるけど、嘘だって分かったら怒られそうだし、言っただけでも怒られそうだ。
「普通に怒られるよ」
「危ない事をするなと怒られるだけですよ」
「そもそも、相手がその催し物を知らなければ成立しないだろ」
「うぅ…っ…」
僕達からの度重なる否定の言葉に、苦虫を噛み潰したような顔で呻き声を上げる。
「それに、良い事したって嘘付くよりも、悪い事をしたっていう嘘の方がまだマシだろ」
「まあ、がっかりはさせませんし、安堵はするでしょうね」
「最後に安心させれば良いのか?」
「そんな事言ってません」
いつもながら、コンラットは浮上しかけたバルドの事を綺麗に切り捨てるな。そう思っていたら、珍しく別の所から助け舟がやって来た。
「別に良いんじゃないか?どうせ、イタズラでもして普段みないような反応を見て楽しむのと似たようなもんだろうしな」
「そうだよな!?ちょっとの嘘なら許されるよな!」
ネアの言葉で調子を取り戻したバルドは、どんな嘘を付いたら相手を驚かせられるのかを考えては、どんなのが良いかの意見を僕達に聞いてきた。
「イタズラかぁ…」
僕もちょっとやってみたくて、バルドと話しながらも、どんなウソを付いたら驚いてくれるのかなと考えていた。
父様が帰って来たと知らせを受けた僕は、父様達の部屋へと行ってみたけれど、そこに父様はいなかった。何処に行ったのか尋ねたら、今日は珍しく、執務室で仕事をしているようだった。
「父様?」
執務室に顔を出したら、兄様も一緒に部屋にいて、何とも入りづらくなって扉の影から父様に声を掛けた。一向に部屋に入ろうとしない僕を見て、父様は何かを感じ取ったのか、仕事の手を止めて僕の方へとやって来てくれた。
「どうかしたかい?」
扉の影に隠れるようにしてチラチラと視線を向けていた僕に、父様は視線を合わせるようにしてかがむと、優しく笑いながら僕に尋ねる。だけど、いざ兄様もいる前でウソを付くとなると、どうしても気後れして言葉がなかなか出てこない。
「え、えっーとね、今日、学院で遊んでたらね。壺…割っちゃった…」
色々と考えてみたけれど、僕が思いつきそうな悪い事なんて、これくらいしかなかった。
「怪我はしていないか?」
「け、怪我なんかしてないよ!!」
「そうか、それなら良かった」
僕の言葉に特に慌てるような事もなく、笑顔で僕の心配だけをして終わる父様に、僕は焦れたように言葉を続ける。
「壺割っちゃったんだよ!?」
「ん?それは聞いたが?」
「大変でしょ!」
「怪我をしていないなら良い」
「高い奴だよ!!」
「高い?どれくらいだ?」
「えっ!う、うーん……大…白金貨くらい…?」
何気なく言った言葉に思ってもみなかった質問をされ、言葉に詰まった僕は、とりあえず僕が知っている一番高い金額を言ってみた。そうしたら、父様は分かったと笑顔でうなずくと、そのまま本棚の方へと歩いて行った。
本棚の前に辿り着いた父様が、本棚に置いてあった一冊の本に触ると、本棚が横に動いて、壁の真ん中に小さな金属の扉みたいなのが現れた。驚いている僕をよそに、父様はその扉を開けて何か取り出すと、普段と変わらない様子で戻って来た。
「リュカ。手を出してごらん」
父様に言われた通り手を出すと、父様は持って来た物を僕の手にそっと乗せた。何だろ?と思って自分の手に視線を向けると、大きく輝く白金色の光に、僕は目を大きく見開きながら大きな声を上げる。
「と、とうさま!!」
「それで足りるだろ?持っていきなさい」
「ウソ!ウソですから!こんなの要らないです!!仕事の邪魔してごめんなさい!!」
満面の笑顔を浮かべて渡そうとして来る父様の手に、僕は慌てて硬貨を押し返すと、僕は飛び出すように急いで部屋へと駆け戻った。
「父上…最初から嘘だって分かっていましたよね…」
「何とも分かりやすいリュカの反応が可愛くてね」
「……嫌われますよ」
「それは困るな。リュカには、後で謝っておくことにしよう」
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