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第一部

【19】吸血鬼ばぶちゃんととある番。

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注意報レベル:★★★★★
警報!警報!警報発動ー!

ーーーーーー

「と……とにかく……っ!もうやめてよ……。せっかく会えたんだから。父さん、死ぬなんて言わないで」
涙ながらに訴えれば、父さんはふいと視線を外す。

「一体どうしてこんなことになったのか、話してよ。お願い、だから……っ」
そんな悲しいこと、言わないで……っ。

「こんな辱しめを、息子の前で話せるか」
……っ、辱しめ?
ふと、ナナヤさんを見れば……。困ったような笑みを父さんに向けている。

「もし、ユユにしゃべったら、今度こそ俺は死ぬ」
そんな……っ。

「そう言って足掻いて、結局死ねなかったじゃないか」
ど、どう言うこと?

「貴様のせいだろう……っ」
そう言うと、父さんは忌々しげにナナヤさんを睨み付ける。
「当たり前だ。ばぶにとって、運命のままんは唯一無二の存在。自分のままんを喪うなんて、耐えられないことなんだよ。だからこそ、ままんはどうあっても守る。例え、ままん自身が命を断とうとしても、だ」
は……?今の、どう言うこと……?
ばぶは吸血鬼なのだから、ナナヤさん?今の話からしたら、まるで父さんがままんみたいな……。そしてあの銃声の中父さんが無事だったのも、まるでナナヤさんが吸血鬼の不思議な力で守っていたってこと?それならば説明がつく。吸血鬼の科学では証明できない力なら。

その時、父さんは俺と目も合わさずに懐に手を差し込んで……素早く取り出したのは……。

「ダメっ!!」
手を伸ばすよりも速く、父さんの手が懐から取り出したナイフでその胸を、突き刺した!!

バキンッ

しかしナイフの刃はなにかに守られるように折れて、……砕けた。

「どうして死ねない」
「君を死なせることはできないからだ、ユズリハ」

「貴様のためにかっ」
歯を食い縛る父さん。どうして、どうしてそこまで追い詰められて……。

「そうだよ、ユズリハ」
ナナヤさんの言葉は、無機質に響き渡る。どうして、どうしてこんなにも胸をえぐられるように悲しいんだ。

「お願い、父さん……俺は父さんに何があったって、父さんの息子だし、父さんは俺の父さんだよ……!――――――っ、だから!」

「……てもか」
……へ?

「俺が、吸血鬼の子を生んでいてもか」
は、い……?

「あの、えと……」

「あの王子と共にいるのなら、もうばぶとままんのことは知っているのだろう。自分が、ままんだと言うことも」
「……う、うん」
オージって……さっきも聞いたけどリクリで合っているよな……?何でリクリがオージって呼ばれてるのか、よく分からないけれど。

「俺はままんだ」
薄々そうは思っていたけれど、やっぱり……。

「そこのクソ吸血鬼が俺のばぶだ」
く……クソ吸血鬼って……。まぁ間違いなくナナヤさんのこと何だろうな。

「運命の……だ」
俺とリクリと同じだ……。

「そしてこの吸血鬼に孕まされた」
は……孕ま……っ。でも吸血鬼ばぶと人間のままんなら、産むのは……人間のままんのはずだ。

つまり、父さんは……っ。

「それでも、父さんが俺の父さんであることは変わらないよ」
父さんは、父さんだもの。誰にも代えがたい、たったひとりの……俺の父さんだ。

「……ユユ……」
「俺は真実がどうあれ、受け止めるから」

「……母さんを、思い出すな……」
俺の、母さん……?
父さんの秘密も、母さんは知っていたのだろうか。

「ね、父さん。俺は、父さんがままんであろうが、なかろうが……何であったって父さんの息子で、父さんは、父さんだよ。それに、俺……弟がいるなら、会いたいって、思うな」
「……」

「ほら、ユズリハ。ユユくんもこう言っているのだから」
「全ての元凶のお前が……っ!それを言うのか……っ!」
激昂する父さんを、ナナヤさんはやはり悲しそうに見つめている。

「でも、ぼくはね……愛しているんだよ。どんなに君に憎まれようが、怨まれようが。ねぇ、ユズリハ……君を……愛しているんだ」
「クソ食らえだ……っ!!」
父さんは床に拳を打ち付ける。
その拳には俺と同じような、血の契りの証があり……。

父さんの叫びの残響は虚しく、そしていつまでも鼓膜にこびりついて、――――――放れない。

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