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第一部

【30】吸血鬼ばぶちゃんとままんと腐女子の友。

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「ご機嫌麗しゅう、我らが王」
挨拶に来た美麗な吸血鬼に……。

「……」
間を置いてうむ、と頷き手元のワインをごくんと飲むお義父さん。

そしてお義父さんの秘書が何かの書類を渡し、それに礼を述べて吸血鬼が去っていく。

――――――さらには。

「ご機嫌麗しゅう、我らが王」
あ、また来た。次は恰幅のいい……人間かな?きれいなお嬢さんが一緒だ。

「王、いかがでしょうか。我が娘を王子殿下の妃へ」
は……?はあぁぁぁぁ――――――っ!?え、何それ、何なの?王子殿下ってリクリたんのことだよね!?俺とリクリたんは先日結婚して、俺はつまになったのだが……。まさか吸血鬼、重婚できるのか……!?

うわーん。どうしよう。俺てっきりばぶちゃんとままんの溺愛特化型BLだと思ってたのに違うのおぉぉっ!?

お義父さんは……無言で恰幅の良い男性を見つめている。まぁそうだ。だってばぶしかしゃべれないし、多分お義母さん以外ともしゃべりたくないんだろうな。そのばぶは、お義母さんにしか捧げたくないのだろうな。

そしてお義母さんは、なんかかわいそうなものを見る目で……おっさんの頭皮を見つめていた。あんまり見ないであげて、そこっ!!

そして……。

「ほう?」
声をあげたのはうちのスパダリリクリたあぁぁぁ――――――んっ!!そうだよね!そうだよねぇ――――――っ!!それでこそスパダリ!ままん溺愛型、ままんもばぶちゃん溺愛しちゃうよバブみバースBLだよね……!?うぐ……、俺、リクリたんのこと信じてたぁ~~~~っ!

「私は既に夫帯者さいたいしゃなのだが?貴殿はたかが人間の身で、私のつまであり、運命のままんであるユユに文句があるのか?」
冒頭の騒ぎを聞いていなかったのだろうか。まぁ広いパーティーホールだもんな。お義父さんはばぶ期だし、お義母さんはリクリたんを信じて任せてたからそっと見守ってくれたとはいえ……。実際にあの騒ぎを見ていないひともいるだろうし、遅れて来た参加者もいるだろうしな。それは仕方がない。

しかし俺とリクリたんはお揃いのばぶちゃんマーク☆を手の甲に刻んでいるほか、さらにはお互いのスーツやアクセサリーを身に付けている。しかもリクリたんは俺を片時も放したくないと言うように腰をぎゅっと抱き寄せているのだ。その状況でよくも言えるな。

「そ……そんな、まさかそのガキが……!?」
ガキとは失礼な。このおっさん。

「それよりも私の娘の方が見目麗しく……」
はいぃぃぃ――――――っ!?いくのか!?そこでまだいくのか、頑張るなぁおっさん!!

この場にいるってことはばぶとままんのことも知っているだろうに……。ばぶちゃんからままんを取り上げる気かあぁぁっ!?それとも愛人枠狙ってる!?むしろ俺が愛人か……!?金と権力を使って愛人におしやる気かああぁぁぁっ!!そうなのか!?そうなのならその薄くなってきた頭の毛ぇむしっていいかな!?おしゃれに浮き輪模様にしてあげてもいいかな!?

腐の民のみんな~~、いいと思うひと、は~くしゅっ!

バチンッ!!

え?今、おとなしそうなきれいなお嬢さんが、おっさん=もとい彼女のお父さんの頭を……叩いた~~っ!お父さんの寂しくなってきた頭で拍手しちゃったよ~~っ!!

「お父さま!!」
「み……みやこ……!?」
いきなりのお嬢さんーーみやこさんの頭拍手に、おっさん呆然。

「目の前にこんな素晴らしいVLがあるのに、それを汚そうとするなんてなんてことを……っ!!」
おぅ……。みやこさん、そなたも腐の民であったか。

「後でお母さまに言い付けるから!!」
「ひぃっ!?」
やっぱおかんは最強。おっさんの頭皮も寂しくなるほど、最強だね。

「この度は、大変失礼いたしました」
おっさんをどけて、深々と頭を下げるみやこさんを、リクリたんは不機嫌そうに睨む。

「まぁまぁ、リクリたん。それくらいに。あと、みやこさんとはいいお友だちになれると思うんだ」
「ゆ、ユユ……っ」
リクリたんがハッとして俺を振り返る。

「だからみやこさん。これからも仲良くしようね」
「御意に」
ん……?何かものっそい礼されてしまった気がするのだが……。みやこさんがおっさんを回収してくれたので、まぁよしとしよう。

しかし……お義父さん、会話しなくても来客すごい捌いてんなぁ。秘書の吸血鬼もいるし、リクリたんもたまに口を開くってのもあるのだけど。

「ばぶ、まんま、ちゅーちゅ!」
その時、お義母さんのスーツの袖をちょいちょいと引っ張りながら、そう告げた。

「あら」
ふふふと微笑んだお義母さんは……お義父さんのちゅーちゅタイムーーつまり授乳タイムのため、ホールを一時離脱することになった。
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