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第一部
【29】吸血鬼ばぶちゃんと静かな夜会。
しおりを挟む「ユユ、大丈夫か」
「……うん、リクリたん」
俺のことを心配してくれるリクリたんの表情は無表情ながらも柔らかくなっている。よかった……いつものリクリたんだ。
「ユユちゃん、リクリちゃん、大変だったわね」
そして現れたのは、お義母さんとお義父さん。
お義父さんは吸血鬼マントに、貴族のような装い。まさに吸血鬼といった風貌で美しい顔に冷たいほどの無表情。
何と言うか貴族と言うか、住む世界の違うひとみたいな……。いや、王さまなのだけど。
対するお義母さんの黒いスーツには、所々薔薇の装飾が施されていて、アクセサリーなんかも薔薇を基調としたものが多い。
「先程はお騒がせしました」
そう淡々と告げるリクリたん。しかしお義父さんは静かにこちらを見つめるだけだ。やっぱり……怒っている……?俺のせいで騒ぎを起こしたからかな。
「いいのよ~~!リクリちゃんの見せ場だものねぇ」
お義母さん……、分かってる!スパダリ攻めさまの極意……分かってるうぅっ!やはりお義母さんも腐を極めていなすった……!!
「ユユちゃんにいいとこ見せられたかしら~~」
そうお義母さんが問えば。
「……はい」
ぱあぁぁぁぁぁぁぁ――――――――っ!!!相変わらずの無表情ながら、めっちゃ眩し~~~~っ!背景トーンが輝いちゃってるよ!むしろフルカラー背景――――――っ!!!
「それじゃ、ちょっとあっちで休みましょう?いきなりで気を張ったでしょう?」
「はい、それもそうですね。ユユ、行こうか」
「あ……うん」
素直にお義母さんお義父さんやリクリたんに連れられてくてくてく。
パーティーホールの中にはソファー席もあり、そこでちょっとした休憩もできるようになっていた。
俺はリクリたんと並んで腰掛け、お義母さんとお義父さんがその正面に並んで腰掛ける。ボーイが持ってきてくれたグラスに手なをつけながら、お義父さんを見やる。やっぱり先程から無言だ。お義母さんはそれほどでもないようだが、お義父さんは……怒ってる?
「あらなぁに?ユユちゃんったら」
「へ……っ!?」
お義父さんをじっと見つめていたからか、お義母さんがまるでからかうように微笑んでくる。
「いや、あの……っ」
「やっぱり分かる?気になるわよね」
いや、何が……!?俺、何も分かってないけど!?
「んもう、これもままんの性かしら。やっぱりばぶちゃんはかわいいわよねぇ」
え、ばぶちゃん……!?ま、まさか……っ!!
「ばぶ」
お義父さんばぶ化してるやんけ~~~~つ!!!
え、何!?さっきまで無言で何もしゃべらなかったのは、それか!?ばぶ語しかしゃべらないからぁ――――――っ!?
「でも、あんまりよそ見しちゃダメよ?ユユちゃんのばぶちゃんが嫉妬しちゃうわっ!」
へ?嫉妬……!?慌てて隣のリクリたんを見やれば。
「むぅ……」
めっちゃ頬膨らませていらした――――――っ!もう、ぷくー。華麗なる、ぷく――――――っ、だよこれぇっ!!
「あんっ、リクリたんったら、そんな不機嫌にならないでって」
「ユユのばぶは私だ」
「分かってるから……!お義父さんがちょっと気になっただけで……っ」
「何故私ではなく父上っ」
終始無言でばぶ隠してたからだよ……!優秀なばぶも、ままんの前ではポンコツ化するのだろうか。さっきまでのバリバリスパダリ王子はどこに……っ!?いや、素はこちらか。素はどこまでもばぶちゃんなのである。
「ごめんてば~~っ!」
俺が必死であたふたする中で。
「あら、んもぅラブラブねぇ。ねぇ?リクヤば~ぶちゃんっ」
「ばぶばーぶっ」
正面の席では、相変わらずお義母さんとお義父さんがイチャイチャしてたけどねー。
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