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番外編②異国の王。

【60】【番外編】異国からの手紙。

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※ユユ視点に戻ります※

※※※

その日、俺とリクリたんは客人を迎えていた。腐友だちのミヤコ嬢とそのお母さん、そしてミヤコ嬢を介して紹介されてやってきたのは……聞き覚えのある苗字の夫婦であった。

「サイオウジ家……って、斎王寺、ですか?」
リクリたんの隣で首を傾げる俺を、夫婦は驚いたように見る。

「ご存知、でしたか」
「あー、いや、昔仲がよかった友だちと同じ苗字で……」
中学までは一緒で、その後は高校が別々になって……俺は高校もやめたし、スマホも盗られたから連絡をとってない。新しいスマホはリクリたんにはもらったが、アドレスや番号を覚えているわけがなく、気になっていたのだ。

「そう、なのですか」
「はい。珍しい苗字ですよね。斎王寺昴って言うんですけど……いや、単に苗字が同じってだけですよね。忘れてください」

「昴!息子をご存知で!?」
「え、えぇ、まぁ」
え、スバルのご両親?思えば、ご夫人はきれいなシルバーブロンドの髪の、外国出身と見られる女性だ。確かに、スバルの珍しい髪の色と似ている。顔立ちも……少し。スバルのあの髪は大人の都合ではなく遺伝だったのか。

「スバル、元気にしてますか?スマホ買い替えちゃって、連絡がとれなかったんですけど」

「その、息子の件なのです!」
ご主人が焦ったように口を開く。

「ミヤコ嬢のつてを辿り、どうにか王族の方に謁見をできないかとお願いしていたのです!」
んーと、夜会とかもあるのだが、そう言う場ではできない話と言うことかな。あと王族に話し掛けられるほどの立場ではなく、でしゃばったりしない礼儀をわきまえているご両親と言うことだ。友だちの両親なので、ちょっと安心したかも。

「息子は……息子は異国の吸血鬼の王に、ままんとして迎え入れられ、契約を交わしてしまったのです」
「え、それは愛でたいことなのでは?あ、そっか!もしかしてばぶちゃんの独占欲!?義理のご両親にも会わせないとか、んもぅっ!スバルままんに叱ってもらわないとね!リクリたん!」
と、リクリたんに告げれば。

「……そう言う王でもないのだ、そいつは」
「リクリたん?」
リクリたんはスバルのご両親から差し出された、スバルからの手紙を受け取りながら、眉をひそめる。手紙は、ご両親宛に事情を説明する手紙と、中に入っている手紙を俺に渡して欲しいと書かれている。

「ユユ宛だ。開けてみるといい」
「うんっ!」
早速封を開けてみる。

手紙には、異国でオリヴァーと言う男性と結婚したことが書かれていた。
俺がリクリたんのままんと言うことは言っていないから、吸血鬼の事情は書かれていないけれど。

俺からリクリたんのままんになったよって手紙を書いて、びっくりさせちゃおっかな。差出先は王のもとならリクリたんも知ってそうだし。

「その手紙に書いてあるオリヴァー王は、吸血鬼の王として、数々の非人道行為も行ってきた王だ。母上も何と言うか分からん」
「うぇ、マジで!?でも、ままんのスバルがいるんでしょ?なら、いけないことをしたら、スバルが叱ってくれるはずだよ!ね、お義母さんにも話してみよう?」
「……ユユが望むのなら。だが、父上にもな」
そうして一旦スバルのご両親たちとは別れ、お義母さんとお義父さんの元へ向かったのだ。

「まぁ、ユズちゃんは荒れそうだけど」
え、父さんが?何でだろう。

「別に我は挨拶に来るなら構わぬ。我は特に来るなとは言っていない。あちらが我の怒りを恐れているだけだ」
「そうねぇ。私も恨み辛みはあるけれど」
え、あるんですか、お義母さん。

「ままんと一緒なら、悪いことをしても叱ってもらえるし、安心よ!」
「うん、お義母さん!」
お義母さんの援護射撃もあり、俺はスバルに手紙を書いた。不満げなリクリたんにはちゅっちゅをねだっておいた。

――――――そうして、1ヶ月後。夜会にて。
半世紀以上、始祖の王と呼ばれるお義父さんに目通りすらしに来なかったオリヴァー王がスバルと共に訪れた。お義母さん、お義父さん、リクリたんと一緒に俺もお出迎え。スバルとは久々の再会を喜びあい、スバルのご両親も、スバルに会えて嬉しそうにしていた。

父さんとナナヤさんは睨んでいたけれど……何故かは分からなかった。ぶっちゃけ、あのふたりがあそこまで息が合っているのも珍しいよなぁ。

そしてなんとこの国の血清の精製方法を、スバルのところでも取り入れるそうで。スバルが従者のひとと共に喜んでいた。

まぁ、あちらの狩人とはまだまだ和解は先のようだけど、異国でも、吸血鬼の血を引くひとびとが助かるのなら。
ついでに、俺も愛読したお義母さん著の、吸血鬼ばぶちゃんとの献血シリーズもプレゼントした!

そして夜会の最中、オリヴァー王がスバルに怒られてうれしゅんっとなっているのを、とても和やかに見守らせていただいた。
※うれしゅん=ままんに叱られるのも嬉しいがしゅーんともしちゃうばぶちゃんのかわいい反応

「やっぱりばぶちゃんだなぁ」
「ユユ……っ、ユユのばぶは私だぞ?」
「分かってる」
不満げなリクリばぶちゃんの頬に口付けを贈ってあげるのも、忘れない。



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