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②
しおりを挟む俺たちは、会社の先輩と後輩。
俺が先輩で、君が後輩。
俺は高卒で、君は大学院を出ている。
5歳も年上の君だけど、顔つきは幼く、年下と言われても疑わない。
でも色気がないわけではなく、ルックスは非の打ち所のないくらい完璧で、正直みんながかわいいと言っているアイドルやモデルよりよっぽどかわいいと思う。
性格、その他はどうか?
それが、これ以上ないくらい最高なのである。
普段はサバサバしている風だが、時おり、末っ子の君らしい甘えキャラや、反対に母性全開の包容力を発揮してくることもある。
また、高学歴らしく知性を感じさせる言動。
俺は君の虜になっていた。
かくいう俺はというと、田舎の工業高校卒の低学歴で、なんと20歳にして彼女ができたことがない(童貞ではない)。
顔はいい方だと思うが(そう言われて育ったのだ)、どこか垢抜けない感じ。
どう考えても君と恋人になんてなれるはずがない。
でも、だからこそ、俺は君を好きになったのだろう。
恋愛は、追う方が楽しいのだ。
君と出会ってしばらくは、一緒に仕事をする機会も少なく、まともに話をすることもなかった。
意識はしていたから、俺はただの片思いをしているキモい非モテになってしまっていた。
ところが、半年ほど経ったある日から、なんと同じチームになり毎日一緒に仕事をするようになってしまった。
俺は、これは神の導きに違いないと舞い上がっていた(キモい)。
しかも俺は1年早く入社している先輩。
高い専門性の求められる職場。
俺は仕事が好きで頑張っていたから、まだ入社して1年半ほどとはいえ、チーム内でもそこそこの信頼を獲得していた。
そうなると必然的に君に仕事を教えるのは俺ということになる。
これはすごいことだ。
これから毎日君に会えて、こんなに近い距離で過ごすことができるなんて。
俺たちはすぐに仲良くなれた。
仕事中は、必要もないのにほぼ一緒に行動しているほどに。
言葉では表現しにくいが、波長が合うというか、お互い一緒にいるときの心地良さみたいなものは感じていたのだろう。
俺は毎日が楽しかったし、これが続けばどんなに幸せな人生なのだろうとかアホなことも考えていた。
だが問題もあった。
休日の寂寥感がハンパないのである。
そう、あんなに仲良くやっていたのにもかかわらず、俺は食事に誘うこともできなかったのだ。
いや、仲良くなってしまったから、それが壊れるのを恐れていたのかもしれない。
というか、連絡先も知らない。
俺の頭の中はもう君でいっぱいで、これまでは待ち焦がれていた休日も、もはや苦痛でしかなかった。
今頃、君は俺の知らない誰かと笑っているのだろう。
頼むから女であってくれ。
今思うと実にキモい話である。
ナンパ師界隈では、このような状態を非モテコミットと呼ぶらしい。
恋愛強者たちの間では、複数の女性に手を出して、同時並行で関係をつくるのはもはや当たり前らしい。
複数の女性から求められている男がモテる。
もっと簡単にいうと、モテるやつはもっとモテる。
モテないやつはもっとモテなくなるということだ。
なんて残酷な世の中なんだ。
さらに追い打ちをかけるように、驚愕の事実が発覚する。
「休み何しとったん?」
仲のいい先輩が俺に話しかける。
「めっちゃゴロゴロしてました笑」
「もったいなー。その歳やったら、もっと遊んでるもんじゃない?」
「そうっすかねー笑」
「あの子なんか、浜松に旅行してたらしいで。」
俺は察した。
それ以上言わないでくれ、と思った。
君には彼氏がいるらしい。
しかも3年も付き合っていると。
いや、いるとは思っていたけど、動揺がハンパない。
それでも、君にキモいところは見せられない。
ポーカーフェイスをキメこみ、なんら変わらず君と接し続けた。
ずっと君のことを考えていたけど、この気持ちは封印しよう。
君が好きだからこそ、迷惑はかけたくない。
やすい恋愛ドラマのようなありきたりな話。
でもまさか、自分に降りかかるとは。
しかも、こんなに辛いとは。
俺は耐えて耐えて、耐え続けた。
だが、そんな俺のことも、神は見捨てなかったらしい。
それからさらに半年ほど経ったある日、転機が訪れる。
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