失われた世界

いぬ

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俺が1人で仕事をしていたとき、上司がやってきた。

「お疲れさん。今週の金曜、仕事終わってから予定ある?」

「いや、特には。」

「土曜の朝早くは?」

「何もないっすよ笑」

「金曜18時、寮のロビーな。」

上司はなにか企んでいる様子で、ずっとニヤニヤしている。

「なんかあるんすか?」

「まあ、楽しみにしとけって!」

なんだろうか。

俺が考えたのは、

①ちょっとヤバめの変な店に俺を連れていき、いじって楽しむ

②普通に飲み会をするのを、変な伝え方をして楽しんでいる

③仕事の話。なにか良い知らせでもあるのだろうか

といったところ。

正直めちゃめちゃビビっていた。

悪い予感しかしなかった。

先の予定に嫌なものがあると、時間が経つのが早い。

あっという間に金曜日を迎えた。

「覚えてるやろな?笑」

相変わらずニヤニヤしている。

「覚えてますよ。18時ですね。」

「おう、ちゃんと風呂入っとけよ!笑」

なんなんだ。

風呂入っとけ??

やっぱ変な店に連れていかれるのか。

こんなことは初めてだ。

緊張が止まらない。

仕事が終わると、ソッコーで帰宅し、言われた通り風呂に入っておく。

いろいろ準備し、17時50分にはロビーにいた。

なんだろう。

どうしよう。

色んな不安が俺の脳内を駆け巡る。

18時になった。

来ないではないか。

上司だからか?

不安と、少し怒りも出てきた。

なんとか気持ちを落ち着かせようと、深呼吸をする。

「お、ほんまにおる!」

「は??」

現れたのは、君だった。

いや、上司は?

理解が追いつかない。

どうなっているんだ。

「飲みに行こっ!」

なにを言っているのか理解できない。

みんなして、俺をハメようとしているのか。

「嫌なら、このまま買い物行くけど。」

「いや、嫌とかじゃなくて。」

どうやら、上司にチームで飲みに行きたい、と言ったところ、

忙しくて予定が合わせられない。あいつたぶん暇やから、2人で行ってこい。

ということになったらしい。

いやそれでも、普通に誘ってくれればいいのに。

俺はまだ信用していない。

そのうち上司その他が登場するだろうと。

とりあえず駅周辺の飲み屋街へ向かって歩く。

君と2人で。

仕事以外で。

まだ疑ってはいるが、今はこの幸せを噛み締めようと、俺は不思議な感覚だった。

君はよく同期の友達と飲みに行くと言っていた。

俺はあまり酒は好きではなく、飲み屋なんて全然知らない。

君がおすすめだと言った店に入る。

ビールで乾杯する。

おかしい。

上司その他は現れない。

君はリラックスした様子で、楽しそうに俺と話す。

もしかして普通に楽しんでいいのか?

すぐに酔いが回ってきた。

俺は酒に弱いのだ。

君も明らかにテンションが上がっている様子だ。

ほとんど他愛もない、しょーもない話で、俺たちは盛り上がっていた。

楽しかった。

生きててよかったとすら思った。

20時を過ぎた頃、そろそろ出ようとなった。

俺は帰りたくなかったから、2軒目に行こうと言った。

君もノリノリでついてきた。

2軒目はこじんまりとした焼き鳥屋。

俺は酒に詳しくなかったから、ずっとチューハイを飲んでいた。

君は日本酒を飲み始めた。

俺は日本酒を飲んだことがない。

「うまいの?」

「なんか、アルコールって感じ。」

「まずそう笑」

「飲んでみる?」

なんと間接キスのお許しをもらえた。

俺はここまで、ずっと君にリードしてもらってばかりで不甲斐ない気持ちだったが、もはやどうでもいい。

俺はありがたく頂戴した。

「エタノールそのまま飲んでるみたい」

「でしょ笑」

「これが好きなん?笑」

「いいやんか!笑」

なんてないフリをしていたが、俺は舞い上がっていた。

たかが間接キスだが、これまでしてきたどんなセックスよりも幸せだった。

俺はずっと君の話を聞いていた。

君の前で酔いつぶれまいと飲むペースはかなり抑え、意識としてはほぼシラフだった。

君はかなり酔っていて、日頃の愚痴を俺にぶちまけてきた。

あんなに怒っている君を、後にも先にも見た事がない。

だが怒っている君もそれはそれでかわいい。

しばらくすると、隣で飲んでいた大学生ぽいグループが大声で激寒な会話をし始めた。

君の怒りの矛先がそちらへ行きそうだったから、俺は店を出ようと言った。

店を出るやいなや、君は満面の笑みで俺に絡みついてきた。

と思ったら急に走り出す。

酔いすぎやろ。

5歳も年上の君が、まるで子供みたいだ。

まじかわいい。

君はそのまま、俺の腕を引っ張り寮に向かって走っていく。


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