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自慰
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釣り場から帰ってきたあと、村瀬秀昭はほとんど無言だった。
車の中でFMラジオをつけても、何も耳に入ってこない。
海沿いの農道を走るうち、ふとハンドルを持つ手の中指に、
釣り糸の感触ではなく、“太い指の圧”が蘇ってくる。
昭吾の指――。
太くて節くれだった男の指が、自分の尻を割り、濡らし、押し込んできたあの感触。
入れられた瞬間の異物感。
けれど、あの痛みさえも“喜び”に変わってしまった自分。
(……やべぇよな、俺……)
今までの人生で、ここまで淫らに“雄”を感じたことがあっただろうか。
女と付き合ったこともあった。結婚していたこともあった。
でも――あんなふうに汗と唾液まみれで、背中を掴まれて突かれながら、精液を中に出されたことなんて、一度もなかった。
帰宅した部屋は、生活感と少しの埃の匂いが混ざった“独身の空気”に満ちていた。
古びたソファの上に荷物を置いて、靴を脱いだ瞬間。
どっと疲労が押し寄せてきた。
いや、それは肉体のものではなく、尻の奥に残る重みと、心に渦巻く熱のせいだった。
「……ちくしょう」
独り言が漏れる。
何に対してか、自分でもわからなかった。
けれど、気づけばTシャツの裾をめくりあげて、腹を触っていた。
重たい肉。
贅肉なんて、誰からも好かれないと思っていた。
けど――昭吾の手は、その腹を掴んで、揉んで、愛おしそうに撫でていた。
「やわらかくて……でけぇ尻……」
「最高だな、お前……」
あの囁きが、耳の奥でこだました。
体中がぞくぞくして、呼吸が乱れ始める。
汗ばみ始めた体の奥――チンポが、ゆっくりと、重たく勃ち上がってくるのがわかった。
ベッドに倒れ込む。
仰向けではなく、うつ伏せで。
重たい腹がシーツにのしかかり、チンポが自重で押しつぶされる。
でも、それがたまらなかった。
(思い出してるのは、昭吾の腹が俺の背中に乗ってた重さ……)
ズボンを下げ、腹を持ち上げるようにして手を伸ばす。
太ももに挟まれたチンポは、皮に包まれてむず痒く脈打っている。
握ると、汗と皮脂が混ざったような、微かな匂いが鼻に届いた。
「……はぁ、……っ……」
しごく。
ゆっくり、ゆっくりと。
昭吾の声、昭吾の汗、昭吾の腹。
あの匂い、あの体温。
指が尻に滑り込んできて、中を拡げられて――
「しょうご……、ああ……くっ……」
声が漏れる。
自分でも驚くほど甘い声だった。
誰にも聞かれたくない。
でも、誰かに聞いてほしい。
そんな矛盾を孕んだ喘ぎが、部屋の空気に滲んでいく。
乳首に触れる。
硬くなっていた。
無意識に、喘ぎながら撫でていた。
片手はチンポをしごき、もう片方は自分の体をまさぐる。
太っていて、たるんでいて、汗臭くて……
でも、“抱かれた”この身体が、いま最高に欲情していた。
グチュ、グチュ、と濡れた音が響く。
昭吾の肉が腹にぶつかっていた音と重なる。
腰を持ち上げられ、突き上げられ、背中に汗が落ちた――そんな情景が何度も頭に蘇る。
「う、くっ、あ……っ、……くる、くる、あ……あぁっ!!」
ビュルルッ、と勢いよく精が飛んだ。
腹に、胸に、重力に引かれて流れる白濁。
その感触に、自分が“抱かれた雄”であることを改めて思い知る。
息が荒い。
体が重い。
尻の奥が、まだ疼いている。
けれど、昭吾はいない。
今この部屋には、自分の汗と、精と、匂いと、沈黙だけがある。
――名前。
帰り際、聞いた。
「藤代昭吾」
そう名乗ったとき、男は少し目を伏せていた。
名前を教えたことで、なにかを与えたような顔をしていた。
けどそれ以上のことは、何も言ってこなかった。
連絡先も、次に会う約束も――何も。
次の週。港に行った。
昭吾は来なかった。
その次の週も。そのまた次の週も。
「……用事でもあったんだろう……」
そう自分に言い聞かせる。
(俺だけ、勝手に燃えてたのか?)
(あれは、ただの一発の関係だったのか?)
胸がざわつく。尻の奥が、逆に冷えるような感覚。
あんなにも濃密に抱かれたのに、
それだけで、終わるのか?
「……やっぱり……男に……期待しすぎたんだな……」
ぽつりと、誰にも聞かれない声が、
海の風に吸われていった。
けれど、本当は分かっている。
“期待することが怖くて”、自分を誤魔化してるだけなんだ。
釣り竿を垂らしながら、海を見つめる。
けれど心は、水面を漂うウキではなく、
“あの背中”の不在を追い続けていた。
車の中でFMラジオをつけても、何も耳に入ってこない。
海沿いの農道を走るうち、ふとハンドルを持つ手の中指に、
釣り糸の感触ではなく、“太い指の圧”が蘇ってくる。
昭吾の指――。
太くて節くれだった男の指が、自分の尻を割り、濡らし、押し込んできたあの感触。
入れられた瞬間の異物感。
けれど、あの痛みさえも“喜び”に変わってしまった自分。
(……やべぇよな、俺……)
今までの人生で、ここまで淫らに“雄”を感じたことがあっただろうか。
女と付き合ったこともあった。結婚していたこともあった。
でも――あんなふうに汗と唾液まみれで、背中を掴まれて突かれながら、精液を中に出されたことなんて、一度もなかった。
帰宅した部屋は、生活感と少しの埃の匂いが混ざった“独身の空気”に満ちていた。
古びたソファの上に荷物を置いて、靴を脱いだ瞬間。
どっと疲労が押し寄せてきた。
いや、それは肉体のものではなく、尻の奥に残る重みと、心に渦巻く熱のせいだった。
「……ちくしょう」
独り言が漏れる。
何に対してか、自分でもわからなかった。
けれど、気づけばTシャツの裾をめくりあげて、腹を触っていた。
重たい肉。
贅肉なんて、誰からも好かれないと思っていた。
けど――昭吾の手は、その腹を掴んで、揉んで、愛おしそうに撫でていた。
「やわらかくて……でけぇ尻……」
「最高だな、お前……」
あの囁きが、耳の奥でこだました。
体中がぞくぞくして、呼吸が乱れ始める。
汗ばみ始めた体の奥――チンポが、ゆっくりと、重たく勃ち上がってくるのがわかった。
ベッドに倒れ込む。
仰向けではなく、うつ伏せで。
重たい腹がシーツにのしかかり、チンポが自重で押しつぶされる。
でも、それがたまらなかった。
(思い出してるのは、昭吾の腹が俺の背中に乗ってた重さ……)
ズボンを下げ、腹を持ち上げるようにして手を伸ばす。
太ももに挟まれたチンポは、皮に包まれてむず痒く脈打っている。
握ると、汗と皮脂が混ざったような、微かな匂いが鼻に届いた。
「……はぁ、……っ……」
しごく。
ゆっくり、ゆっくりと。
昭吾の声、昭吾の汗、昭吾の腹。
あの匂い、あの体温。
指が尻に滑り込んできて、中を拡げられて――
「しょうご……、ああ……くっ……」
声が漏れる。
自分でも驚くほど甘い声だった。
誰にも聞かれたくない。
でも、誰かに聞いてほしい。
そんな矛盾を孕んだ喘ぎが、部屋の空気に滲んでいく。
乳首に触れる。
硬くなっていた。
無意識に、喘ぎながら撫でていた。
片手はチンポをしごき、もう片方は自分の体をまさぐる。
太っていて、たるんでいて、汗臭くて……
でも、“抱かれた”この身体が、いま最高に欲情していた。
グチュ、グチュ、と濡れた音が響く。
昭吾の肉が腹にぶつかっていた音と重なる。
腰を持ち上げられ、突き上げられ、背中に汗が落ちた――そんな情景が何度も頭に蘇る。
「う、くっ、あ……っ、……くる、くる、あ……あぁっ!!」
ビュルルッ、と勢いよく精が飛んだ。
腹に、胸に、重力に引かれて流れる白濁。
その感触に、自分が“抱かれた雄”であることを改めて思い知る。
息が荒い。
体が重い。
尻の奥が、まだ疼いている。
けれど、昭吾はいない。
今この部屋には、自分の汗と、精と、匂いと、沈黙だけがある。
――名前。
帰り際、聞いた。
「藤代昭吾」
そう名乗ったとき、男は少し目を伏せていた。
名前を教えたことで、なにかを与えたような顔をしていた。
けどそれ以上のことは、何も言ってこなかった。
連絡先も、次に会う約束も――何も。
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そう自分に言い聞かせる。
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胸がざわつく。尻の奥が、逆に冷えるような感覚。
あんなにも濃密に抱かれたのに、
それだけで、終わるのか?
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ぽつりと、誰にも聞かれない声が、
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けれど、本当は分かっている。
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