キラキラヒカル

羽澄

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 とりあえずアイデアを探す意味で鯖江市のカップル向けの名所に行ってみようという話になり、職場に外出直帰の申請を出して、つつじで有名な西山公園にある『結びの広場』と『結びのチャイム』を見に行く事にした。


 ヒロさんの車で公園に到着した私達は、とりあえず動物園に立ち寄ってみた。タンチョウヅル、インドクジャク。シロテナガザルにボリビアリスザル。

 そしてレッサーパンダの前に来た時、急にヒロさんが、
「ね、この子達ってサキちゃんに似てるよね。」
と言い出した。

 え?私、こんなに愛嬌がある?と、照れくさいながらも嬉しく思っていると、
「ほら、あのしぐさとかさ、サキちゃんよくするでしょ?」
って、しぐさかーい!ってか、それ、しぐさって言うよりダラダラしてるトコですよね⁉︎って心の中で突っ込んだつもりが声に出していたらしい。
 ヒロさんがゲラゲラ笑い出した。

「ちょっ、ヒロさん。それひどくないですか?私、そんないつもダラダラしてますか?」
と半泣きに近い状態で訴えると、
「ゴメンゴメン。そうじゃなくて、ほら、いるだけでみんなを幸せな気持ちにしてくれるところとか、さ。」
と、笑い過ぎて涙ぐみながら弁解するヒロさんを、私は思い切りにらみつけた。


 そんなやり取りをしていると、いつの間にか夕陽のキレイな時間になっていて、私達は慌てて結びの広場に向かった。

 結びの広場から見る鯖江市の景色は美しくて、夜になればさぞやロマンチックだろうと思われた。
 試しに結びのチャイムも鳴らしてみたけど、音は響くし目立って恥ずかしいしで、二人とも一目散に逃げ出した。ハアハアいいながら走って駐車場に着いた私達は、顔を見合わせて大笑いした。

「あれはラブラブな二人にしか無理だ!」
「ホントですよ。でも私はラブラブでも絶対無理です!」
「そう?サキちゃん、意外といけると思うけど。それよりお腹空いたね。この前のおわびにおごるよ。なんか食べに行こう。」
「あ、いいですね。でも支払いは割り勘で。そうじゃないと、好きなだけ食べられないんで。」
「アハハ、なるほど。了解。じゃあさ、身体冷えちゃったし湯豆腐とかどう?ちょっと遠いけど出汁のおいしいお店知ってるんだ。」
「湯豆腐って!ヒロさん、チョイスが個性的過ぎです。でもいいですね、湯豆腐。行きましょう。」


 連れて行ってもらったお店は、人の少ない民家の中にひっそりと建っていて、湯豆腐はとても優しい味で本当においしかった。

 ヒロさんは私とは違う価値観を持っていて、意見が合わない事ばかりだったけどそれは嫌ではなくて、そういう考え方もあるんだ、と素直に思えて、話していてとても楽しかった。


 ついさっきまで少しぎこちなくて居心地の悪さすら感じていたのに、今はもう、ずっと前からの知り合いのような、幼い頃から知っている近所のお兄ちゃんのような親しみに変わっていた。


 それはヒロさんも同じだったみたいで、その日からヒロさんの私に対する態度は、まるで幼馴染の年下の女の子に対するもののようになっていった。
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