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私の気持ちは置き去りに、いつもと変わらない毎日が続いた。
時々三人で飲みに行って、ヒロさんと二人で駅に向かい電車に乗って家に帰る。会話も今まで通り。
ヒロさんに私の気持ちがバレないように、必死だった。
でも、少しずつ、私達の関係は変化し始めていた。
いつもの飲み会の帰り道、不意にヒロさんの手が私の手に触れた。とっさに引こうとした手を、ヒロさんはそのまま優しく握ってきた。私が少しでも力を入れれば簡単にほどけてしまうような、そんな握り方だった。
ヒロさんは、前を向いたままこちらをほんの少しも見ようともせず、ただ黙って歩き続けた。
駅に着くと、
「ごめん。」
とつぶやいて、一人電車に乗って帰って行った。
その日以降、私達は飲み会の帰りは駅まで手をつないで帰るようになった。ヒロさんは私の方を一切見ずに、私もただ前だけを見て駅まで黙って歩いた。
私は嬉しいのに哀しくて、家に帰ると、いつも涙が止まらなかった。
そんな日々を過ごしていたある日、ヒロさんと私に一泊二日の出張命令が出た。以前提出したプロジェクトのプレゼンだった。
当日、鯖江駅で待ち合わせて目的地まで行き、ホテルで一緒に夕食をとった後ヒロさんの部屋で翌日の打ち合わせをした。
「じゃあ、明日はこの予定で。お疲れ様でした。おやすみなさい。」
そう言って私が部屋から出ようとした時、後ろからヒロさんに抱きしめられた。
一分、二分…。
突然ヒロさんのスマホが鳴り、私は黙って部屋を後にした。
彼女と話す、ヒロさんの声を聞きながら…。
翌朝、私達は何もなかったかのように一緒に朝食をとり、プレゼンをこなし、帰りの電車に乗車した。
無事に仕事を終え、ホッとして油断しているヒロさんに、私は
「生まれてくる子と一緒に、私と生きて下さい。」
と告げた。
ヒロさんはじっと私を見つめた後、小さく首を横にふった。
結婚式、一ヶ月前の事だった。
時々三人で飲みに行って、ヒロさんと二人で駅に向かい電車に乗って家に帰る。会話も今まで通り。
ヒロさんに私の気持ちがバレないように、必死だった。
でも、少しずつ、私達の関係は変化し始めていた。
いつもの飲み会の帰り道、不意にヒロさんの手が私の手に触れた。とっさに引こうとした手を、ヒロさんはそのまま優しく握ってきた。私が少しでも力を入れれば簡単にほどけてしまうような、そんな握り方だった。
ヒロさんは、前を向いたままこちらをほんの少しも見ようともせず、ただ黙って歩き続けた。
駅に着くと、
「ごめん。」
とつぶやいて、一人電車に乗って帰って行った。
その日以降、私達は飲み会の帰りは駅まで手をつないで帰るようになった。ヒロさんは私の方を一切見ずに、私もただ前だけを見て駅まで黙って歩いた。
私は嬉しいのに哀しくて、家に帰ると、いつも涙が止まらなかった。
そんな日々を過ごしていたある日、ヒロさんと私に一泊二日の出張命令が出た。以前提出したプロジェクトのプレゼンだった。
当日、鯖江駅で待ち合わせて目的地まで行き、ホテルで一緒に夕食をとった後ヒロさんの部屋で翌日の打ち合わせをした。
「じゃあ、明日はこの予定で。お疲れ様でした。おやすみなさい。」
そう言って私が部屋から出ようとした時、後ろからヒロさんに抱きしめられた。
一分、二分…。
突然ヒロさんのスマホが鳴り、私は黙って部屋を後にした。
彼女と話す、ヒロさんの声を聞きながら…。
翌朝、私達は何もなかったかのように一緒に朝食をとり、プレゼンをこなし、帰りの電車に乗車した。
無事に仕事を終え、ホッとして油断しているヒロさんに、私は
「生まれてくる子と一緒に、私と生きて下さい。」
と告げた。
ヒロさんはじっと私を見つめた後、小さく首を横にふった。
結婚式、一ヶ月前の事だった。
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