オタクの俺が彗星の如く現れた美少女に以下略

Asuka

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転校生登場編

キャンプは加減が肝要である 前編

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「うおっしゃー!着いたぜーー!風が気持ちいいなぁ!ここ!」
俺の隣でシンジが、今日はいつも以上のハイテンションで叫んでいる。うわっ、やまびこし始めたし…五月蝿えなぁ…
「近くに川もあるぜ!アスレチックもあるし、筋トレできっかな?」
周りの遊具や地形に目を輝かせてるのは、球技大会以来仲良くなった、中田悠介。今ではシンジについで2番目に俺が下の名前の呼び捨てで呼べる人間だ。最近シンジとキャラ被りが疑われ、さらにこいつは筋金入りの筋トレバカだと判明した。まあ、こいつとてやるときはやるソフトボール部の主将なのだが。
そして、このむさ苦しい男どもに快くついてきたのが…
「んんーっ!風、気持ちいいね!やっぱきてよかったなぁ~。」
「そうだね。キャンプなんて普段なかなかしないし…シンジくんの提案、乗ってよかったかも。」
俺のクラスが誇る絶対的美少女の二人組、1人は最近転校してきて、俺の日常ブレイカーとなった、藤村飛鳥。こいつは、何かと俺に絡んでくる。まあ、悪い気はしないし、正直嬉しいのだが…
そして絶対的双璧をなす、もう1人の片翼は入学時から藤村転校までの間、美少女出して君臨していた(本人にその気などなかった。きっと、多分。)生駒日菜。転校生藤村派と古参勢生駒派とで一時期戦争になりかけたが、なんとこの2人、ピアノという共通の趣味から仲良くなり、戦争を終結させたのだ。もはや二年生の平和と均衡を保っていると言って過言ではない。そんな2人がなぜ、いやそもそもこの状況がなぜ繰り広げられているのか、そろそろ説明しなくてはならないだろう。

それは、先週のことであった。休日ともあって、俺はいつも通りオタ活をしていた。部屋という名の神域で、いつも通りまいまいを拝んでいたところ突然電話がかかってきた。シンジからだった。無視してやろうかなと意地悪な思考が働いたことは別として、電話に出るといつものハイテンションで奴は言った。
「悪いないきなり電話して。ただ、ちょっとお前に提案があってな?まあ聞いてくれや。今度の週末は三連休だろ?だからその休みでキャンプに行こうって思ったんだ。親にはすでに了解当てて、メンツとしては今、悠介が来てくれる。あとは、お前も誘おうと思って今電話してんだわ。そうだな…とりあえず明後日、返事くれ。じゃ、そういうことでな!あと、お前休みだからってオター」
面倒な説教食らいそうだったのでこの辺で切った。だが提案自体は悪くない。なるほど、キャンプか…それなりに楽しそうなことだった…何より、三連休に無情にも親が仕事、弟たちが親戚一家に遊びに行くとこともあり、俺はぼっちだったため、ちょうどよかった。一応親に確認したところ、快く受け入れてくれた。久々に楽しみができたものだった。
シンジに返事をして、キャンプのメンバーが確定した日のこと、俺はいつも通り学校の屋上にいた。キャンプとあってなんとなくそわそわしていた。小学校以来だな…確か飯盒炊爨で一番うまくできたのが俺のいた班だったっけな…そんな思い出に浸りながら、ワクワクしていると、
「衛藤くん?何してるの?」
おきまりの藤村がやってきた。もう驚きはしないぞ。お前も屋上好きであることは、重々承知だからな。
「ああ、なんとなく来てみたんだ。」
「その割には、なんかそわそわしてるね。何かあるの?」
彼女が聞いてくる。どうやら俺がそわそわしてるのは側から見てわかるらしい。
「実は、今度の週末、シンジたちとキャンプ行くんだよな。だから少しそわそわしてよ。楽しみでさ。」
「そうなんだ!すごいじゃん!いいなぁ…」
彼女は羨ましそうに俺を見る。
「そりゃ、そわそわしちゃうのもわかるよ。でも、衛藤くんにもこういうことあるのって意外だなぁ…」
俺とて人間だぜ?現に推しの何かがあるたびにそわそわする俺だからな。意外と俺は子供なんだぞ。そんなことを思っていると、
「ねぇ、私も連れてってよ?キャンプ。」
彼女が、ありえないことを口にした。
「えっ!行きたいの!?」
あまりにありえない事態に、俺は久々に動揺する。男ばっかのむさ苦しいキャンプだぞ?何考えてるんだ、と、こいつの感性を疑ったが人がこんなにそわそわと楽しみにしながらキャンプの話をするのを聞けば、行きたいと思うのも無理はないか。それに、男ばっかのところに華があるのもいいしな。
「俺は別にいいけど、一応シンジにも確認とろう。あと、男ばかりだよ?いいの?」
「それなら大丈夫!きっと、誰か誘えるから!キャンプって聞いたらきっと来てくれるよ!」
妙な自信だなあ…一瞬不安にもなったが、こいつの恐ろしい、クラスの戦争すら止めてみせたほどのカリスマ性なら人を誘うなんて余裕だろうと、すぐその心配は消えた。
シンジにこのことを話すと、彼は快く了解した。むしろ華があっていいと、歓迎気味だ。
ただ藤村が誰を誘うのか、それだけは分からなかった。
それがわかったのは次の日だった。隣に座っていた彼女が俺に声をかける。
「キャンプは生駒ちゃんと行く。」
スポーツドリンクを飲みながら聞いていた俺は、それの半分近くをぶちまけた。あの生駒と、藤村と、泊まりのキャンプである。それを堂々クラスの前で公表とは、こいつの度胸のなんたるかを思い知らされる。幸い俺には何の宣戦布告も襲撃も暗殺計画もなかったようだが、体温がその時は2度下がった。
生駒と言ったら藤村が来る前のうちのクラスのマドンナで、美貌と優しさを持ち合わせた天使とも言われていた。藤村転校後もその人気は健在で、先の通り、クラスにて戦争が起こりかけたほどだ。生駒は性格的に受け入れてくれそうではあるが…この二大美少女を連れてキャンプに行くのに俺はいささか気が重かった。

さて、こういうわけで今の状況が繰り広げられているわけだが。キャンプをするにあたって最も大切なことを話そう。そう!役割分担だ。それは早急に決めなくてはならないことであり、効率の良さを左右することでもある。これがうまく行くかいかないかで、キャンプの生死にすら関わるかもしれない重大なことなのだ!以上自論参照!
「よし、まずは場所の確保と、昼飯だな。バーベキューするんだろ?シンジ?」
悠介がシンジに聞く。
「おう!まずはそうするつもりだぜ。」
「そうと決まれば、まずは役割を決めるか。」
悠介!お前も俺と同じ意見を持っていたのか!俺は誇らしいぞ!
「まず、俺とシンジは火起こしだな。そんで残りで飯の下ごしらえ。蒼馬、お前確から料理が得意だったよな。女子たちのサポートをしてやってくれ。そして、火加減や焼きの作業は全てお前に任すからな。頼むぜ!」
そう言って悠介が、グータッチをしてきた。恐ろしいほど適材適所だ。さすがうちのクラスの最大の派閥を規律よくまとめてるだけある。これが本物の器というやつか。彼の新たな一面に、俺は感心した。
「じゃあ各自持ち場でやることやっちまおう。早く飯にして、午後からは遊ぶぜ!」
「おー!」
こうして、俺たちのキャンプは最高の形でスタートを切った。

悠介の指示の元、各自で作業を進める。俺は料理担当で、女子チームに指示をしながら、食材の下ごしらえをしている。2人とも要領と覚えがよく、すぐに料理に慣れていった。
「衛藤くん、玉ねぎはこんな感じかな?あと牛肉はあれでいい?」
藤村が俺に聞いてくる。指示通りの完璧な下ごしらえだ。文句をつける余地も非の打ち所もない。
「完璧、あの調子でどんどん進めてくれ。」
「ありがとう!」
藤村が笑顔で答える。料理までこなすとは、マジで欠点無しだな…改めた彼女のすごさを見せつけられた…
「あの、衛藤くん…」
次は生駒からだ。どした、と俺が聞くと彼女はどうやらカレーのルーの作り方に少々手こずっているらしい。最近は固形のやつがあるからこうして作ることもないため、分からなくもない。ただ要領を抑えてばできることだ。
「えーと、もう少しターメリックを加えて。それだと薄くなるから。あと、混ぜる時はゆっくりね。焦らなくて大丈夫👌」
「ありがとう、衛藤くん。」生駒も微笑んでくれた。おお…なんか俺も青春してる?
クラスの二大美少女に料理を指南して、感謝されるという 何とも感慨深い体験をしながら、俺は料理を進めていった。
悠介たちの火起こしができたようだ。よし、飯盒炊爨だ。米も自分たちでやると決めた以上、失敗したくはない。
「悪いな、あとの火の番や料理はお前に任せるぜ…蒼馬…」
汗だくになりながら悠介とシンジが俺に託した。2人の努力にも報いるつもりで俺はかまどの前に立った。
片方で米を!もう片方で肉と野菜に注意しながら、俺は料理を進める。そこへ、藤村がやってきた。
「衛藤くん…忙しいところ悪いんだけど、これも作ってくれないかな?」
そういった彼女が差し出してきたのは、アルミホイルに包まれた、じゃがバターだった。これ、焼いたらめちゃくちゃうまいやつだ。
「好きなの?じゃがバター。」
「うん、キャンプのたびにやるんだよ。衛藤くんなら、うまくやってくれるって思って。ごめんね、任せる感じで。」
よしややろう。そんな気分になった。めちゃくちゃうまいやつ、作ってやるよ。気合を胸に、藤村からじゃがバターを、受け取った。
注文を受け付け、しばらくしてから、ご飯が炊けた。肉の上のものも美味しそうに焼け上がっている。
「みんなー!できたぞ!」
向こうで、テーブルとテントを準備していた一向に声をかける。
「おおっ!とうとう食えるな!」
シンジが真っ先に駆け寄る。
「うおー!うまそうじゃねえか!」
「こりゃすげえ!お前、ここまで料理上手だったとはな…」
悠介とシンジは眼前の光景に目を輝かせている。
「すごいよ!衛藤くん!美味しそう!」
「衛藤くんって、本当に料理上手なんだ。イメージと違うけど、いいなぁ。」
生駒と藤村の女子コンビも感嘆の声を上げる。
「さて!召し上がれ!」
「「「「いただきまーす!」」」」
バーベキューの始まりだ!
みんなで取りたいものを取り、食べていく。
あれもそろそろ出来上がりか。
「藤村、じゃがバターできたぞ。」
「あっ、本当に!?」
俺は少し熱いそれを藤村に渡す。アルミホイルを開けると、香ばしい匂いがした。それもつかの間、彼女が頬張る。
「美味しい!やっぱり衛藤くんに任せて正解だったよ!」
「それなら良かった!まだあるから、みんなで食べよう。」
幸せそうに食べる彼女に、俺もやりがいを感じていた。

さて、バーベキューも佳境。シンジと悠介は大食い対決を始め、互いに譲らぬ熱戦を繰り広げている。吐くなよ…そう願っておいた。
生駒と藤村はデザートのアイスを食べている。さっき作ったらしく、俺も食べたが、市販のものよりずっと美味しかった。
「なかなか食うじゃねえか!負けてられんな!」
「お前もすげえな!もう肉がなくなりそうだ!」
奴らはまだやっている。って!肉がなくなるだと!?このあとの飯はどうするんだ!?
「おいおい!このあとの飯はどうなる!?今こんなに食べて、もうすでに一食分あるかどうかだぞ!?」
今更ながら気づいたことに俺は驚きそしてみんなにいう。
「あっ!そういえば!」
生駒も気づいた。
「どうしよう…お菓子とかならあるけど、それで凌げるかな…」
藤村も、不安な表情を浮かべた。
「それについては、俺は考えがあるんだよな。さっき川を見てきたんだが…ここには魚がたくさんいる。つまり、これからは釣りをして獲った魚を買うってわけだ!」
ことの張本人である悠介が声を大にして言った。釣れなかったらどうすんだよ…不安が残るが、魚がいるならまあいい。新しく料理のレパートリーが増える。
「というわけで、これから釣り兼川遊び!みんな、川へレッツゴー!だぜ!」
シンジが言って、そのまま川へと向かった。
「あっ、ちょっとまって!私日菜とちょっと行ってくる。」
藤村が突然言った。横で生駒も、何かわかったようにうなづく。
「どこに?」
俺は聞いた。すると彼女は不敵に微笑んで、
「ひ・み・つ!」
と答えた。何をするつもりなんだろうか…不安と一抹の期待が俺の胸の中に残った。
俺は俺を胸に川へと向かった。
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